理工学術院総合研究所では、若手研究者を育成・支援するための『アーリーバード』と呼ばれるプログラムを実施しています。 6年目となる今年度は多数の応募の中から、17名の若手研究者(博士課程学生~ポスドク)が選抜されました。メンバーの専門分野は、宇宙、機械、脳科学、数学など多岐にわたります。
研究室に閉じこもっているだけでは、研究に対する意欲が低下したり、視野が狭くなってしまいがちです。アーリーバードでは、あえて研究室から飛び出して、メンバー同士が分野横断的な議論することを通じて、広い視野を持つ次世代の研究者を育成することを目的としています。同時に、研究者としてのスキル やマインドを高めるための活動をメンバー自らが企画し、取り組んでいます。 活動期間は1年間。メンバーの研究活動や担当する授業に支障をきたさないよう、早朝や夜など、課外の時間を利用して活動を行っています。
10月11日早朝、この日は、科学コミュニケーターの大崎章弘先生(お茶の水女子大 特任講師)をお招きし、研究者にとって重要な『研究を伝える・説明する』ためのコミュニケーションスキルを学ぶワークショップを開催しました。この企画は、「専門外の方に対して、研究をうまく説明できなかった苦い経験がある。 あの時、もっとうまく伝えることができていたら…」というメンバーの経験から実現したものです。
「この研究はいい!」と思ってもらう
大崎先生は、本学 理工 機械工学科(現・総合機械工学科)三輪研究室でのヒューマンインタフェースの研究者を経て、現在、科学コミュニケーターとしてご活躍されています。ご自身の研究者としての経験を交えながら、『科学コミュニケーション』の必要性を、メンバーの視点にあわせて説明してくださいまし た。
短い時間で、科学の本質までを伝えることは難しくとも、相手の方に「面白い研究だな」、「もっと知りたい」と興味をもってもらうことができたら、大成功。企業との共同研究、研究費の獲得などにつなげられるかもしれないのです。
1分の感覚は人それぞれ
科学コミュニケーションの大切さが理解できたところで、『1分間』の感覚を知るワークに取組みました。時計を見ずに、自分の感覚で『1分』と思ったところで、手をあげるというシンプルなもの。結果、早い人は36秒から、遅い人は1分半まで。短いようで長いようで…な1分。時間の感覚をつかむことが、意外と難しいことを体感しました。
2分で専門用語を説明する
つづいて話し手、聞き手の2手にわかれ、2分間で研究に関する専門用語を説明する、というワークに取組みました。話し手は企業の方など『特定の相手』を設定して説明し、聞き手 は話し手の良かったところを付箋にメモし手渡す、というものです。
事前に準備してきた人でも、限られた時間で簡潔に説明することに苦戦している様子があちらこちらで見受けられましたが、聞き手役からのコメント、そして 『話の導入に“フック”を作る』等の大崎先生からの的確そして具体的なアドバイスをいただき、1回目の実践を見直します。そして、今度は聞き手として先生が指定した『小学4年生』を想定し、再び同じワークに取組みました。すると、話の冒頭から聞き手の関心を引き付け、1回目とは見違えるほどうまく説明できるようになっていました。
メンバー全員が、ワークのBeforeとAfterで、自分そしてメンバーのスキルアップを実感でき、充実感いっぱいのままこの日の活動を終えました。
「コツをつかむことが出来たので、早速実践してみたい!」「研究発表や研究費の獲得ですぐに生かせそうだ」と、研究活動に対する新たなモチベーションを得た朝となりました。そして、先輩・大崎先生の熱心な姿勢に、多くの刺激もいただきました。大崎先生、どうもありがとうございました!
次回のアーリーバードでは、新たな研究費として注目されている『クラウドファンディング』に関する勉強会を予定しています。
理工の研究者たち、意欲的に頑張っています。
アーリーバードの活動はFacebookで随時お知らせしています。