- 研究番号:24C08
- 研究分野:science
- 研究種別:奨励研究
- 研究期間:2024年04月〜2025年03月
代表研究者

関 貴洋 理工総研が募集する次席研究員
SEKI Takahiro Junior Researcher
理工学術院総合研究所 梅野 太輔 研究室
Research Institute for Science and Engineering
URL:https://w-rdb.waseda.jp/html/100003377_ja.html
研究概要
申請者が開発したペリプラズムDisplay技術は,膜タンパク質を介して任意のタンパク質を大腸菌ペリプラズム空間に提示する技術である.これまでに,この技術が,細胞外情報を細胞内へと伝達するバイオセンサーの設計や,ペリプラズムに提示した酵素の機能改良プラットフォームへ発展する可能性を持つことを確認した.今年度はさらに細胞膜環境,細胞質内環境をセンシングし,その情報を細胞内や細胞外へと伝達するようなシグナル伝達方向の自在化を指向したバイオセンサー設計技術の開発を目指す.さらには,膜タンパク質の配向性をスクリーニングする技術へと発展させ,膜タンパク質の機能発現を自在に制御する技術開発にも挑戦する.
1.人工シグナル伝達タンパク質のシグナル伝達方向の自在化
酵素および金属結合タンパク質を膜タンパク質を介してペリプラズム空間へ提示させ,ペリプラズム空間で起こるセンサ素子と標的分子の結合イベントを細胞内出力素子へ伝達させる人工的なシグナル伝達タンパク質の開発に成功した.本研究では,このセンサ素子,土台,出力素子の主従を入れ替え,細胞膜環境や細胞内環境をセンシングし,細胞内・細胞外・細胞膜上の蛋白質機能として出力できるバイオセンサー設計技術へと発展させる.
具体的には,特定の膜脂質と相互作用する膜タンパク質の細胞外側および細胞内側に出力素子となるタンパク質を融合する.膜タンパク質の脂質分子との相互作用イベントが,融合した細胞内外のタンパク質の出力を変化させる関係を進化デザインし,細胞膜環境のバイオセンサーを創出する.さらに,膜タンパク質を土台に,出力素子となるタンパク質をペリプラズムへと提示し,細胞内側に融合した酵素などの基質・リガンド結合イベントによって細胞外のタンパク質機能の出力変化を引き起こす仕組みをつくる.こうして,細胞内情報を細胞外に伝達する分子技術の完成が見込まれる.
2.ペリプラズムDisplay技術を応用した膜タンパク質配向ルールの解明
膜タンパク質の膜挿入後の配向性は厳密に制御されているものの,その配向ルールに関して不明な点が今なお残されている.そこで,ペリプラズムDisplay技術を応用し,膜タンパク質の配向性スクリーニング技術を構築する.変異ライブラリの中から,配向性の逆転した膜タンパク質を選抜する.具体的には,ペリプラズムでのみ機能する細胞外レポータータンパク質を膜タンパク質の細胞内側に,細胞内でのみ機能する細胞内レポータータンパク質を標的膜タンパク質の細胞外側に融合しものを作成し,膜タンパク質に組織的な変異導入を行い,膜タンパク質の両レポーターが機能する変異体の取得を試みる.得られた反転配向型の変異体の遺伝型解析から,膜タンパク質の配向ルールの抽出に挑戦する.