School of Political Science and Economics早稲田大学 政治経済学部

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新入生のみなさんへ(学部長祝辞)

新入生のみなさん、早稲田大学政治経済学部英語学位プログラムへのご入学おめでとうございます。

9月21日付けで、晴れて政治経済学部生となられたのは、21の国および地域を代表する126名のみなさんです。英語学位プログラムの開始後10年間で、クラスの規模もその多様性も大きく拡大し、この傾向は今後も続くものと期待しています。本年4月に日本語学位プログラムへの入学者が738名でしたので、1年生は総計864名となります。

 

みなさんの大学生活の起点となる人生の重要な節目をともに祝う入学式が今年度はオンラインによる配信となり、直接集会することができず、教職員一同、本当に残念でなりません。みなさん自身やこの機会を楽しみにしておられたご家族・ご関係者の心情をお察しするに余りあります。しかし、みなさんが早稲田大学政治経済学部に入学されたという事実は、変わることなく、輝いています。

 

みなさんこれまで日々さまざまな形で努力され、政治経済学部で勉学の機会を得られましたことに、敬意を表するとともに心よりお祝いを申し上げます。努力はみなさん自身がされたことですが、その背後には、ご家族・ご友人・高校あるいは予備校の先生方など多くの方々の有形無形のご支援があったことを忘れないでください。人は人生のいつの段階であっても必ず誰かに支えられて生きています。

ご家族・ご親族・ご友人・ご関係の皆様にも、この場を借りまして、心からお慶び申し上げます。これまで物心に亘って無定量の愛で新入生を支えてこられました。その甲斐あってこの日を迎えることができましたこと、重ねてお祝いを申し上げます。ただ入学は自主的に学ぶ高等教育の出発点であります。大学時代は、卒業後に控える社会生活へのつながりの時期にもあたり、人生の大きな転換期となることが多いと思います。引き続き、真に独立し自律した人格の陶冶のため、暖かく、時には厳しく、お心を配っていただけると幸いに存じます。

 

さて、みなさんよくご存じのように、早稲田大学の前身である東京専門学校は、1882年(明治15年)に開設されました。前年の政変により野に下った大隈重信は、高等教育こそ真の近代国家の形成に不可欠であると考え、リーダー養成の夢を東京専門学校に託しました。政治経済学部の前身である政治経済学科はそのとき設置され、大学と歴史をともにしています。

大隈重信の理想は、早稲田大学教旨――学問の独立、学問の活用、そして模範国民の造就――にまとめられています。大隈は言います、大学教育を施そうとすれば、その根本として雄大な理想がなくてはならない。「今日本はまさに東西文明の接触点に立っている。吾人の大なる理想は文明の調和者として東洋の文明と西洋高度の文明を並行せしめ、調和せしむるにある……この理想を実現するには何としても、学問の独立、学問の活用を主とし、独創の研鑽に力め、その結果を実際に応用するにある。而してこれに任ずべきものは個性を尊重し、身家を発達し、国家社会を利済し、広く世界に活動することを以て自ら任じ、またその任に堪ゆるところの人格にある。これ即ち模範国民である。」…「而して模範的国民とならんとすれば知識のみではいかぬ。道徳的人格を備えなければならぬ。而して一身一家一国のためのみならず、進んで世界に貢献する抱負が無ければならぬ。」と。

大隈は、学問を大切にする政治家でした。それは早稲田大学そして日本にとって真に幸いなことでした。大隈は、学問を修め、それを活用して、地球市民として率先して活躍する人物を育てたいと考え、この早稲田大学を創設したのでした。その志は、138年に亘る伝統となって、今、ここにいるわれわれを包んでいます。大隈の見果てぬ夢を実現すべく早稲田の杜に集まり、散じる、みなさんはそのように教育を受けることになります。すなわち、政治経済学部で学ぶ者はオールタナティヴな構想を示すことが期待されています。それはいわば必然であり、政治経済学部の卒業生は、社会のどの分野にあっても代替案を示しうるリーダーであることが求められています。今日のリーダーは伝統的なリーダー像だけではなく、異なる価値観の共生を実現する役割も含まれています。人の話をよく聞くことや、困った人が周りにいればそっと手助けすることも、今日的なリーダーシップのあり方です。

実際、政治経済学部はそのように挑戦する学部として138年の歴史を刻んでいます。ここでは一つの例をお話したいと思います。みなさんは、家永豊吉という人物をご存じでしょうか。朝河貫一のように、日米の知的交流に力を注ぎました。家永は、おそらく日本人で初めてアメリカ合衆国の大学で政治学の博士号を取得した人物です。いまでこそアメリカの高等教育は世界をリードし、世界中から多くの人々が結集しています。しかし、19世紀にあっては、アメリカの若者はヨーロッパの諸大学に留学するのが普通でした。高等教育がそれほど充実していなかったからです。それでも南北戦争が終結し産業革命が進展した1870年代頃から、高等教育の再編が行われました。大学院の組織化が行われ、博士課程Ph.D.コースやロースクールの実体化が始まります。家永は、同志社で学んだ後、内村鑑三と同じ船で渡米し、オハイオ州にあるオバーリン大学(Oberlin College)で学びます。1887年学士号を取得しています。さらに勉学を続けるべく、メリーランド州ボルティモア市にあるジョンズ・ホプキンズ大学(Johns Hopkins University)の大学院に進みます。ジョンズ・ホプキンズ大学はアメリカでも最も早くに大学院を整備した大学で、教授陣が極めて充実していたといわれています。また政治学の博士課程を初めて設置した大学としても知られています。家永はそこで政治学歴史学の分野で研鑽を重ね、1890年6月に博士論文“Constitutional Development of Japan 1853-1881”により、政治学の博士号を取得しています。また、大日本帝国憲法の公布に当たって、その意義をジョンズ・ホプキンズ大学の教員や学生に対して論じた講演が残っています。

その家永は、博士号取得後、6年にわたる合衆国滞在を終え帰国し、1890年10月に東京専門学校の政治学の講師に就任しています。当時学問として再編成されつつあった政治学を身につけた家永が早稲田の杜で次世代を担う若者に、まさに最先端の政治学を教授したのです。政治経済学部が挑戦する学部であることをよく伝えるエピソードの一つです。その伝統は現在にも引き継がれ、約120名の専任教員のうち約45%の教員が海外の大学で博士号を取得しています。

 

われわれの生活が政治経済の動向に大きく左右されるというだけなく、学問的にも政治学と経済学との密接な結びつきにより、社会現象をよりよく分析することができるはずであるとの認識のもとに、わが政治経済学部のカリキュラムは構成されています。そして昨年度からこれまでの経験を活かした斬新なカリキュラムを実施しています。それは学部の基本理念である、Philosophy, Politics, and Economics(PPE)をよりよく体現したカリキュラムです。政治学および経済学そしてそれらを橋渡しする公共哲学の基礎を学科に関係なく修めることになります。その上で、それぞれの学科の特徴に沿って、経済学および政治学の知見を深めていくことになります。統計学やゲーム理論など方法論科目、隣接する諸学問や外国語も視野の広いリーダーを養成するために必須のものです。基礎から応用まで、段階的に学ぶことができるように工夫されていますので、それぞれの能力そして関心に応じて、深く学んでください。また、日英ハイブリッド教育も一層進展させています。原則的に同じ科目が英語および日本語で開講されますので、日本語で実施される科目に挑戦すれば、日本語学位プログラムの学生諸君との交流も進むでしょう。その結果、視野が広がり、将来のキャリアの選択もより豊かになるでしょう。

そのなかで、特にゼミの活用を薦めます。ゼミは、もともとはドイツ語のゼミナールに由来しているのでしょうが、これは日本の大学に独特の教育方法となっています。ゼミでは、通常1名の教員と少人数の学生――政治経済学部では最大15名です――とが、一つのユニットとなり、共通のテクストを輪読したり、ディスカッションしたり、研究調査を実施したり、プレゼンテーションをしたりと、互いに刺激し合いながら、総合的な能力を高めていくものです。政治経済学部はゼミを特に重視してきました。現在では、1年次秋学期のBasic Seminarにはじまり、各種のIntermediate Seminar、3年・4年次のAdvanced Seminar、4年次春学期のAdvanced Seminar Thesisに至るまで、4年間ゼミにおいてみなさんの能力を伸ばす場が準備されています。このように少人数で切磋琢磨しますので、ゼミでの友人は一生の友人となることも多いです。一部は必修化されていますが、それを超えて、是非ゼミに入り、自分とは異なる考え方の存在を知り、そうした違った考え方をもつ人とどのように議論し、調和点を見いだしていくのかを実体験してください。卒業時には、大学生活の集大成となる優れたAdvanced Seminar Thesisが仕上がることを大いに期待しています。

 

日本はいま、政治経済社会などあらゆる局面で未曾有の危機の時代にあります。また、AIの進展に伴って、現在の仕事の多くが機械にとって代わられると言われています。また新型コロナウィルス感染症の拡大はわれわれのこれまでの生活様式に再検討を迫っています。本当に難問が山積しています。しかし、昔から、困難なときこそ早稲田の出番と、言われています。4年間を通じて、学力そして人間力を大いに磨き、ものの見方・考え方を身につけてください。知識はすぐに陳腐化しますが、大学教育で身につけたものの見方や考え方、言い換えれば、知恵や洞察力は一生ものです。それぞれの分野でオールタナティヴを示すことのできる人物に成長していってほしいと願っています。われわれ教職員一同は、そのためのお手伝いを全力で果たしたいと考えています。

4年間、大いに学んでください。ご入学、真におめでとうございます。

 

 

2020年9月21日

早稲田大学政治経済学部

学部長 川岸 令和

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