School of Political Science and Economics早稲田大学 政治経済学部

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卒業生のみなさんへ(学部長祝辞)

卒業生のみなさんへ

 

ご卒業、真におめでとうございます。

新型コロナウイルスの感染症の影響が収まっていないなか、秋学期の教育に万全を期すため、早稲田大学は今年度9月卒業式をライブ配信での実施に変更しました。そしてそれに伴い、政治経済学術院主催の卒業・修了を祝う会も中止することになりました。大学生活の最後を飾る式典は、人生の重要な節目を共に祝う貴重な機会であり、その場を直に共有できないことは残念至極であります。みなさん自身やこの機会を楽しみにしておられたご家族・ご関係者の心情をお察しするに余りあります。

しかしながら、みなさんが政治経済学部の学生として成し遂げたことが色褪せることは決してありません。みなさんが手にする学位記は、これまでの4年間――中には、政経が大好きでもう少し長い期間の方もいらっしゃるかもしれませんが――にわたるみなさんの様々な努力の賜であり、みなさんの人生における特筆すべき成果です。みなさん1人ひとりの努力と成果に敬意を表したいと思います。

 

さて、みなさんは、政治経済学部で学問を修め、人生の次の段階へと歩み出そうとしています。この節目に少し立ち止まって、大学生活を振り返ってみるのも悪くはないでしょう。

政治経済学部は、よくご存じのように、グローバル化のなかで多様性を互いに尊重できる共生の次世代を創造するために、グローバル・パースペクティブをもつリーダーの養成を教育目標にかかげています。この目標は、早稲田大学の設立の当初の志を引き継いでいます。大隈重信が、早稲田大学教旨――学問の独立、学問の活用、そして模範国民の造就――を説明する際に、次のように語っています。大学教育を施そうとすれば、その根本として雄大な理想がなくてはならない、といいます。ここからは大隈の言葉の引用です。「今日本はまさに東西文明の接触点に立っている。吾人の大なる理想は文明の調和者として東洋の文明と西洋高度の文明を並行せしめ、調和せしむるにある……この理想を実現するには何としても、学問の独立、学問の活用を主とし、独創の研鑽に力め、その結果を実際に応用するにある。而してこれに任ずべきものは個性を尊重し、身家を発達し、国家社会を利済し、広く世界に活動することを以て自ら任じ、またその任に堪ゆるところの人格にある。これ即ち模範国民である。……而して模範的国民とならんとすれば知識のみではいかぬ。道徳的人格を備えなければならぬ。而して一身一家一国のためのみならず、進んで世界に貢献する抱負がなければならぬ。」

このように大隈は、学問を修め、それを活用して、地球市民として率先して活躍する人物を育てたいと考え、東京専門学校、早稲田大学を創設したのでした。その志は、135年を超える伝統となって、今、ここにいるわれわれを包んでいます。みなさんはそのように教育を受けたのです。われわれはみなこの夢を実現すべく、ここ早稲田の杜に集まり、散じるのです。

みなさんが今日から踏み出す人生航路は、順風満帆ばかりとは限らないでしょう。挫折も経験するでしょうし、ひょっとしたら思わぬ障害にぶつかるかも知れません。そんなときには政治経済学部での学びを思い出してください。ものの見方、考え方の基礎はすでに習得しているはずです。時の経過により陳腐化する知識だけではなく知恵を身につけたはずです。さらに必要なものは何か。ここでも大隈の言葉が導きの糸となるでしょう。「人生は七転び八起きという。七たび転んでもなお起き返ろうとするほどの勇気のあるものでなければ大事を為すに足らない。」「七たび転んでも八たび目に起きればよい。鍛錬は成功の母である。従って成功せんとすれば自ら進んで苦労の中へ突き進んでゆく勇気がなければならない。」そうです。勇気をもって挑戦してください。意志あるところ、路は必ず通ずると信じます。

日本も世界もますます混迷を深めているように見えます。現在社会が直面する諸問題は容易な解決を拒んでいるかのようです。特に新型コロナウイルス感染症の拡大が突きつけている諸課題は、われわれの英知を試しています。しかしながら、昔から、困難なときほど早稲田の出番、といいます。みなさん自身のその手で、今や必然となっているグローバル社会の新しい未来を切り拓いていって欲しいと思います。

 

みなさんの行く手が極まることなく、また幸多きことを、そして、今後の大いなるご活躍を心より祈念して、新しい門出へのお祝いの言葉をしめくくりたいと思います。改めて、ご卒業おめでとうございます。

 

 

2020年9月15日

早稲田大学 政治経済学部長

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