School of Political Science and Economics早稲田大学 政治経済学部

News

ニュース

メディアの情報だけに頼らず現地に赴き、自らの眼で見て地元のみなさんと語る 政治経済学部・高橋恭子ゼミ

メディア・ジャーナリズムを専門とする高橋恭子ゼミは、東日本大震災直後の2011年度から、被災地で取材活動をしています。高橋ゼミでは、現地に足を運び、自らの眼で見て、現地の人と語る現場主義を重視しています。

太田小の児童と早稲田の学生が、一緒に映像を作る

2014年、「被災地の子どもたちの声を聞きたい」というゼミ生の希望から、夏季合宿の一環として南相馬市立太田小学校の5・6年生とともにメディア・リテラシープロジェクト「子どもが発信する南相馬のメッセージ」を実施しています。太田小は相馬野馬追で知られる太田神社の南に位置し、140年以上の歴史を有しますが、福島第一原発からわずか21kmの地点にあることから、震災後多くの子どもが県外に避難しました。震災前に150名いた児童は、現在43名です。

このプロジェクトの目的は、子どもたちが地域の出来事・文化・人物を主体的に再発見し、メディアには取り上げられないポジティブな側面を、映像の力を通じて発信することです。小学生は企画者となり、ゆっくりであっても確実に復興に向かう街の様子を、作品のテーマに選びます。常磐線の運転再開、避難指示が解除された小高区、小高の活性化のために営業を再開したラーメン店など、企画を一緒に進めるゼミ生は地域の人々と触れ合うことで、リアルな福島の状況を理解していきます。

このプロジェクトは昨年、南相馬市の地域課題解決調査研究事業に採用されました。

復興ディスカッションに参加

さらに今年度は、桜井勝延・南相馬市長および小高産業技術高校のみなさんと懇談を行いました。合宿最終日の9月22日、南相馬市とみなみそうま復興大学が主催した「復興ディスカッション」(小高区・浮舟会館)にゼミ生14人が参加。4月に開校したばかりの小高産業技術高校は、浜通り地域に創設される予定の先端産業拠点で活躍する人材の育成を目指しています。そのために、同高校にはロボット工学や土壌検査など地域の発展に不可欠な分野が学べる「産業革新科」が設置されました。

ディスカッションでは、13人の高校生が体育館や仮設住宅で不便な生活を送ったこと、避難先で周囲に気を使いながら生活したことやいじめに遭ったことなどそれぞれの被災体験を語りました。心のよりどころは、故郷でともに過ごした仲間の存在だったそうです。「被災地を訪れる前に感じていたステレオタイプの南相馬市と、実際の南相馬市は全く異なっていた」とゼミ生の池田優さんが話すように、早大生にとって「復興ディスカッション」は、これまで抱いていたイメージと現実とのギャップを埋める場にもなりました。

桜井市長は次のように語りました。「南相馬市の人口は震災後6年半を経て、ようやく76%まで回復しました。しかし、生産年齢人口は震災前に比べ、30%以上減少し、慢性的な人材不足に悩まされています。戻るか戻らないかを判断するのは個人の問題です。戻りたいと思っている人や、新たに移りたいと思っている人のために、環境を整備する方が大事です」。2020年には、市内に国内最大規模のロボット実験場「福島ロボットテストフィールド」が誕生します。「世界でもこれだけの状況に追い込まれた市はありません。逆に、このフィールドでないとできない、前例のない産業を作り、震災を乗り越えた市としてアピールしていきたいです」。

福島第一原発の事故発生後、桜井市長は、南相馬市の窮状を YouTube で発信しました。その後、海外の記者が続々と取材に訪れ、市長はタイム誌の2011年「世界で最も影響力ある100人」にも選ばれました。市長はこれまでも多くのメディアの取材を受けていますが、取材に応じても、取材者があらかじめ思い描いているストーリーラインに合う言葉だけが選択されることが多いとメディアに対しては厳しい眼を持っています。

メディアで発信されるものは、ありのままではなく、発信者の意図が多かれ少なかれ反映されています。参加者はディスカッションを通じて、メディアの特性に対する理解も深められたのではないのでしょうか。

映像制作プロジェクトや復興ディスカッションを通じて、メディアリテラシーに対するゼミ生の理解も深まっています。今後も高橋ゼミは、現実に起きていることを多角的に検証できる目を養うこと、を大事にしていきます。

メディアを介して見た現実は、現実のほんの一部 政治経済学部3年・大串夕葵奈さん

これまで私は、テレビや新聞などメディアを介して南相馬を知り、南相馬は震災で惨憺たる街並みに変わり果て、復興は依然として進んでいないというイメージを持っていました。

今回、実際にその地に足を運んで話を聞き、私の中での南相馬のイメージは大きく変わりました。南相馬は人情味にあふれたふるさとであり、地域が一丸となって未来へ向かい、前へと進んでいます。震災の被害は悲惨なものでしたが、その出来事が南相馬の人々を逞しく、そして愛情深くさせたと思いました。

メディアを介して見た現実は、現実のほんの一部であることを忘れてはならないと改めて感じました。

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/fpse/pse/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる