政治経済学術院では、 “Philosophy, Politics and Economics” (PPE)の理念を掲げ、政治学と経済学を融合させた実証的な分析と規範的な理解から得られる知見をもとに、現実の制度や政策の評価と将来に向けてのビジョンを探究することを目指しています。そのため、これまでの実績を基礎として、多様性と包摂を重視し、今後も不断の改革を実施していきます。
現在の世界は、歴史的な転換点に差し掛かっています。ここ数十年を振り返ると、地球環境問題が新たに世界的な論点として浮上しています。地球的な規模で地政学上の変化が進行しています。社会的・経済的格差の拡大は、世界各地でポピュリズムの台頭やリベラル・デモクラシーの後退を招いています。長寿社会という長年の目標を達成した日本では、少子化による人口減少傾向が明らかになるにつれ、社会のあり方が改めて問われています。ここ数年でも、新型コロナ感染症の世界的な拡大、ロシアによるウクライナ侵攻や中東における政治的緊張と人道的危機など、歴史の転換点となり得る出来事が起きています。
転換点に立つわれわれはどうすべきでしょうか。過去と現在における人間の営みを見つめ直し、将来に向かってどのように現状を変えていくべきかをPPEの視点から議論すべきと思います。「考え、決定し、行動する」という日々の営みが、人類の歴史をつくってきたのです。
政治経済学部の教育の主な特徴についてご説明します。第1に、日本語学位プログラムと英語学位プログラムを併設し、日本語と英語の両言語で授業を提供しています。また、世界のさまざまな地域から多様な背景を持つ学生が集まっています。学生のみなさんには、多様性を維持しながら発展してきたアジア・太平洋地域の中核に位置する恵まれた環境で、大いに交流し、学び、視野を広げてほしいと考えています。本学術院の教員は、それぞれの分野で国際的に活動しており、学生は、自らの語学能力等に応じて、日本語と英語の授業を自由に履修することができます。日本語と英語以外の言語を含め、「言語を学ぶ」のではなく「その言語で学ぶ」ことができます。第2に、アクティブ・ラーニングを実践し、少人数のゼミでの発表や討論、論文の執筆など、学生が受け身ではなく自身の学びを積極的に作り上げていく環境を整えています。インターネットを利用すれば手軽に大量の情報を集め、豊富な知識を吸収できる時代ですが、それらをもとに論理を組み立て、自らの組み立てた論理を他者に説明して理解を得たうえで、建設的な対話を通じて説得することが一段と重要になっています。こうした能力の涵養がこれからの大学教育に求められていると思います。第3に、政治経済に関するさまざまな問題の解決に活用することができる、データ分析に力を入れています。近年、官民を問わず、エビデンスにもとづく議論が一層重視されるようになりました。基礎的な知識から高度な専門的手法まで、ここで培ったスキルは、学生が社会に出てから大いに役に立つことと確信しています。
学部の課程を修了した後、学部で得た知識をさらに深め、研究を続けたい場合には、大学院の政治学研究科、経済学研究科への進学の道も開かれています。
歴史の転換点にあって、本学術院は、研究・教育活動を通じて、さまざまな分野でグローバル・リーダーとして活躍する人材を育成し、社会に送り出していきたいと考えています。引き続き、ご理解とご支援をたまわりますようお願い申し上げます。