Graduate School of Law早稲田大学 大学院法学研究科

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【社会人研究課題】楽しい租税法研究の世界にどっぷり浸る ー社会人研究課題「租税紛争と法」ー

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Thu 31 Jul 25

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Thu 31 Jul 25

現代社会で経済取引を行うには、租税負担の検討が不可欠です。また、国境を越えての人や商品・資本の移動が増大するなか、国際租税の検討を欠くことはできません。
早稲田大学法学研究科ではそのような社会情勢を背景に、社会人をターゲットとした修士課程プログラム、「社会人研究課題:租税紛争と法」を開講しています。

社会人が大学院で租税法を学ぶ意義、プログラムの内容などについて、教員と修了生にお話を伺いました。

渡辺 徹也 <写真中央><br />
早稲田大学法学学術院 教授<br />
<br />
根本 篤男 <写真左><br />
国家公務員 財務省主税局勤務<br />
2021年3月早稲田大学法学研究科修士課程「社会人研究課題:租税紛争と法」修了<br />
<br />
川野 英彦 <写真左から2番目><br />
東京国税局 職員<br />
2020年3月早稲田大学法学研究科修士課程「社会人研究課題:租税紛争と法」修了<br />
<br />
松原 大樹 <写真右><br />
税理士、公認会計士<br />
2021年3月早稲田大学法学研究科修士課程「社会人研究課題:租税紛争と法」修了<br />

渡辺 徹也 <写真中央>
早稲田大学法学学術院 教授

根本 篤男 <写真左>
国家公務員 財務省主税局勤務
2021年3月早稲田大学法学研究科修士課程「社会人研究課題:租税紛争と法」修了

川野 英彦 <写真左から2番目>
東京国税局 職員
2020年3月早稲田大学法学研究科修士課程「社会人研究課題:租税紛争と法」修了

松原 大樹 <写真右>
税理士、公認会計士
2021年3月早稲田大学法学研究科修士課程「社会人研究課題:租税紛争と法」修了

あらゆる社会領域に租税は深く関わっている
-社会人が租税法を大学院で学ぶ意義とは

渡辺教授:「租税紛争と法」は、実務家の方々が現場で培ってきた感覚や思考を踏まえた上で、税制に関する深い議論を行うコースです。研究は学ぶことへの意欲が大事なので、バックグラウンドの違いは問題になりません。

渡辺教授:「租税紛争と法」は、実務家の方々が現場で培ってきた感覚や思考を踏まえた上で、税制に関する深い議論を行うコースです。研究は学ぶことへの意欲が大事なので、バックグラウンドの違いは問題になりません。

渡辺:
「社会人研究課題:租税紛争と法」は2005年に開設され、これまで様々な立場の社会人の方(弁護士、公認会計士、税理士、公務員、企業の税務部門担当者など)が受講してくれました。本コースは、租税に関する法知識を身につけることに加え、商法や民事訴訟法、国際法などの隣接法領域の知識とも結びつけながら、法秩序全体の中で租税法の諸問題を捉え直すことを目的としています。私が社会人コースに関わるようになってから12年目になりますが、意欲の高い受講生たちの間で公平かつ真摯な議論が行われてきました。

入学は渡辺先生の書籍「スタンダード法人税法」がきっかけ
―修了生の皆さんが本プログラムに入学した理由を教えてください

松原
私は、渡辺先生の書かれた『スタンダード法人税法』(初版、2018年)に感銘を受けたことがこの社会人研究課題に入学したきっかけです。元々は公認会計士としてキャリアをスタートしたのですが、5年ほど経ったときに個人事務所の先生のもとで税理士としての修業を開始しました。法律事務所と組む仕事も多くあるのですが、税理士・公認会計士として会計と計算はできるけれども、弁護士の先生たちとの法的観点からの共通言語がなく、なかなか業務の深堀ができないという悩みがありました。そんなとき、渡辺先生の『スタンダード法人税法』の初版を拝読し、初めて税法の勉強って面白い!と思い、税理士の師匠の勧めもあって、修士課程への進学、特に渡辺先生のもとへ進学したいと考えるようになりました。

根本:
実は私も、『スタンダード法人税法』が本プログラムに入学した理由の1つです。私は元々法学部卒でもなく、公務員試験の際に初めて法律を勉強し、法律の面白さに触れました。公務員になってから財務省主税局に異動となり、税制の企画・立案に携わることになった際に、法律を基礎から学びたいと強く思い、社会人6年目のときに働きながら他大学の通信教育課程で法学部に入学しました。無事卒業した後も、もっと法律の勉強がしたいと思っていたときに渡辺先生の『スタンダード法人税法』に触れ、この先生のもとで学びたい!と強く思いました。この本は、財務省主税局でも参考書として持っている人が多いんですよ。

渡辺
自分で書いた本を評価するのは難しいのですが、法人税法の専門書で面白い本が出せたらな、と思って執筆しました。こういう形で読んでくれる人達がいて、こういうご縁があるというのは嬉しい限りです。授業でも、今は3版ですが、その本を使っています。

松原
研究書でありながら、実務的な本で結構実務家もみんな買っていましたね。

川野:
私も先生の書籍を読ませていただきましたが、先生の著書が入学の直接的なきっかけというわけではありません(笑)。私は法学部を卒業した後、税の実務に携わってきました。職務の立場上は、法律で定められたことに従うことしかできないのですが、この法律はなぜこうなったのか、その制度の趣旨や意図を詳しく知りたい、研究してみたいと思うことが多々ありました。ちょうど職場で大学院に通うための制度があり、社会人向けに租税法の研究コースを開設しているこちらのコースを受験し入学しました。

議論を中心として知識を深め合う授業
―実際に入学して、いかがでしたか

渡辺:
私の授業の1つでは毎回事前に2問のお題を出しており、資料はすべて読んだうえで各自調べてきている前提でいきなり議論を始めます。事前に配られていた報告者のレジュメについて全員で指摘し合うんです。

松原:
私は初回の授業でレベルの高さに危機感を覚えました(笑)。最初のうちは何を準備したらよいか分からなくて、法学部出身の川野さんに研究方法や文献検索方法、法律用語などを教わりました。

根本:
授業前にどんなに調べても準備不足かもしれないという不安もあり、これを聞かれるんじゃないか、とか、ここは突っ込まれたら答えられないな、とか準備しながら考えて、どんどん掘り下げて調べていました。実際の発表の際に、他の修士や博士の院生から「この判例を見た方がいい」、「こういう文献もある」といった指摘は自身の修士論文の執筆にはとても大きな助けになりました。

川野さん:実務ではなかなか得られない寄り道の楽しさもありました。

川野さん:実務ではなかなか得られない寄り道の楽しさもありました。

川野:
議論では、参加者全員が「一つの答えでは結論が出ない」という認識を共有しています。時にはあえて新しい観点に踏み込んでみるという、実務ではなかなか得られない寄り道の楽しさもありましたね。やはり租税法研究は面白いな、と思いました。

渡辺:
社会人学生はお互いに良い関係を築いていますよね。法学部出身ではない方の場合、教員に対して法学の初歩的なことは聞きづらいと思うんです。かといって独学するのも手がかりがない。そういった時に受講生同士でカバーし合えると、どんどん上達していきます。そのコミュニケーション能力も、社会人学生の良いところですね。
私の授業には、学部から修士課程に進学してきた修士や博士の院生もいれば、留学生、他研究科の院生も参加しています。

松原
学部から進学した若い皆さんも法学の基礎知識があり共通言語が法律でしたので、入学時は圧倒されました。これはやばいな、と(笑)。ただ、少しずつ分かってくると面白くなってきて、ちゃんと準備して授業に臨むと、税法研究を楽しい!と思えるようになりました。

根本
渡辺先生は気を遣って社会人学生各自の専門性が高い話題を振ってくれることが多かったので、必ず自分の強みを授業の中で発揮できる場面がありましたね。税制改正のプロセスや立法手続、制度創設の趣旨や背景、法律の読み方などは自分の強みでもあったので、授業を通じて貢献できたと思います。そういったこともあり、準備は大変でしたが、毎回の授業はとても楽しみでした。

川野:
楽しみな反面、渡辺先生から振られるプレッシャーも結構ありましたけど(笑)。

渡辺
社会人学生の皆さんは本当に僕が聞きたいことを知っているから振っていたんだけどね(笑)。私も学べることがたくさんありました。皆さんはやはり実務のプロなので、私にとっても、他の修士や博士の院生にとっても貴重な存在です。授業を通じて単に私から教わるだけではなくて、プロの皆さんと一緒に議論することによって、更に研究を深めることができているんです。

―社会人修士学生、辛くはなかったですか?

根本さん:本当に周りの方々に支えてもらっていたんだなと感じました。

根本さん:本当に周りの方々に支えてもらっていたんだなと感じました。

松原
渡辺先生が楽しそうに研究をされるので、その熱に感化されて私達学生も租税研究が楽しくなっていく感じでした。特にここが辛かった、といった波はなかったように思います。私が苦労したのはやはり最初の慣れるまででしたね。法律文献を読む作業に慣れるまでが1番キツかったです。

根本
思い返せば、授業の準備は大変でしたけど、私も楽しかったですね。むしろ修士論文を執筆しているときは辛かったですね。論点が広がっていってしまったり、途中から何が言いたいのか分からなくなってしまったり・・・。悩んだときは、渡辺先生をはじめ、他の修士や博士の院生から的確なアドバイスをもらえて、本当に周りの方々に支えてもらっていたんだなと感じました。

川野
私も授業の準備が大変は大変でした。並行して修士論文も書いて、厳しい時期もありました。ただ、渡辺先生の知識量、思考力、視点の鋭さから、授業を通じて毎回新たな疑問や気づきを得ることができ、大変でしたけど楽しいから仕方がないと思っていました。

多様なバックグラウンドを持つ学生と熱く議論する
―キツかったけれども楽しかった、本当ですか?

松原
時間があれば、もう1回このプログラムに参加したいくらい楽しかったですね。生まれ変わっても入学したい(笑)。同期に恵まれたのもあったとは思いますが、周りの会計士や税理士の友人にも本当に勧めています。絶対行った方がいいよ、楽しいからって。

根本
私も、もう1回行きたいくらい楽しかったですね。こんなに租税法を楽しいと思って研究できる大学院は他にはないと思います。自分の子供にも行かせたいと思っています(笑)。

川野
渡辺先生の一般の修士学生も博士後期学生、学部ゼミ生も、みんな先生の研究熱やお人柄に寄せられて集まってくる、真面目で熱い素晴らしい人たちで、そういった人たちが全員事前に準備して議論するんです。こういった人たちと熱い議論をすることができる、それはやはり楽しいことですよ。

渡辺:
皆さんと接して感じるのは、租税法が実務と密接に結びついているからこそ、この法領域を学ぶことに対して熱心な方が多いということです。研究にはその意欲こそが大事なので、出身学部や年齢、職業の違いはまったく問題になりません。

松原さん:生まれ変わっても入学したい。周りの友人にも勧めています。

松原さん:生まれ変わっても入学したい。周りの友人にも勧めています。

法に対する多角的な視点が身に付く
―実際、業務には役立っていますか?

川野:
修士課程修了後、実務に戻ったとき、そういうことだったのか、と身に染みて実感する場面が多くありました。法の背景がわかるということが確実に強みになっています。また、ここで養った租税訴訟の判例を読み解く力は直接的に仕事に活きています。

根本:
私はこのプログラムを通じて物事を深く色々な角度から考える癖が身につきました。授業では判例や法律を丁寧に読み解く、法律の趣旨や背景まで掘り下げる、実務の観点から検討することを繰り返し行いましたので、自然と物事を深くいろんな角度から見られる癖というか、考えるための力がついたなと実感しています。また、受講生は年齢もバックボーンもさまざまで、松原さんのような税理士・公認会計士の意見は新鮮で、自分では絶対に思いつかない視点をお持ちで、様々な考えに触れられたことも貴重な経験でした。

松原:
私も根本さんと同じく、法律を丁寧に読み取るための法の趣旨とか背景まで見ていける力が確実に実務でも生きています。顧客に対する税務上の問題解決能力が向上したことはもちろんですが、法的な思考が求められる案件にも対応できるようになり、同業の方からも頼りにしていただける機会が増えてきました。

入学を検討している方へ

根本:
同じ租税法に興味を持つ方々と一緒に議論を深められるのは本当に楽しいですし、租税法の奥深さを改めて知ることができると思います。こんなに租税法にどっぷり浸かれる、楽しく研究できる大学院は他にはありません。社会人になってからの経験を大学院で活かすこともできますので、学生時代とはまた別の学ぶ楽しみを見つけられると思います。今、入学を迷われている方は、思い切ってチャレンジしてほしいと思います。

川野:
まず、渡辺先生のもとで学べるというのが貴重な機会です。また、この大学院の授業で行われる議論のレベルは高く、入念な予習・復習が欠かせません。そういった意味で、厳しいけれども真面目で研究熱のある魅力的な学生達が集まるこの環境で学ぶことに大きな意味があったと将来必ず思える日が来ると思います。大学院進学を今考えられている方のきっかけや動機は色々あると思いますが、この環境で学ぶことにより得られるものはとても大きいので、迷う必要は全くありません。

松原:
税理士として成長したい、と考えている方にこそ受講してほしいと思います。大学院の授業は実務とは結びつかなそうなイメージがあって、ステップアップの手段として疑問を覚える方は多いと思うんです。しかし、渡辺先生の授業で実務の観点が置き去りにされることはありません。むしろ、実務の現場で、税法を深く、精緻に議論しようとすればするほど、アカデミックの観点は不可欠であると実感させられます。先生方や同期や学部生からいただくプレッシャー環境も重要です。この圧縮釜のような濃い2年間を過ごすことで、修了後にはまったく違う自分になれると保証します。来れば分かります。実務家にこそ、お勧めしたいです。

渡辺:
皆さんの話を聞いていると、一度社会に出た経験があったからこそ、再び大学に戻ってきて獲得できた知見も多かったように感じます。「租税紛争と法」は、実務家の方々が現場で培ってきた感覚や思考を踏まえた上で、税制に関する深い議論を行うコースです。これからも租税法に関する専門的能力、さらには法的思考能力を高めたいと考えている社会人の方々にぜひ入学していただきたいと思っています。

2025年5月 法学研究科

(御礼)

渡辺先生、川野様、根本様、松原様、インタビューへのご対応、ありがとうございました!

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