School of Humanities and Social Sciences早稲田大学 文学部

News

ニュース

「『模倣』(コピー)から社会を考える」 文学部 池田祥英准教授(新任教員紹介)

自己紹介

高校時代から群集や催眠暗示のような「自分で行動しているつもりがそうではない」状況に関心を持ち、「群集心理学」の本を読んだり、全校集会の途中で突然拍手をして釣られる人がいないかを観察するといった「実験」(?)をしたりしていました。大学ではほとんどサークル活動(ヴァイオリン)に明け暮れていましたが、高校時代の関心を深めるべく大学院に進学して、高校時代に読んだ「群集心理学」の本に出てきたタルドという社会学者の理論を研究しました。タルドは、当時はどちらかというと忘れ去られた存在でしたが、実は社会学を確立したデュルケームという有名な学者と張り合うくらいの重要な社会学者だということで、博士課程でもタルドの学説を中心に研究し、さらにフランスのボルドーに留学もしました。留学生活は言葉も通じず、迷惑な隣人と戦ったり、ネズミと戦ったりと散々な目にあい、今では考えられないくらいやせ細ってしまいましたが、それに打ち勝ち、多国籍の友人ができるなどとても充実した経験になりました。帰国後は10年以上にわたる長い就職活動の末に、まず函館、次いで岐阜の国立大学に勤務しました。ボルドーを除けば首都圏でしか暮らしたことがなかったので、地方生活は非常に有意義でした。

写真1:留学していたボルドー第2大学(現ボルドー大学)

私の専門分野、ここが面白い!

今も基本的にはタルドという学者が主張した学説について研究しています。タルドは100年以上前の人で、私が研究をはじめたころは本がなかなか手に入らず苦労しましたが、今ではインターネットのおかげで、海外の古書店を検索したり、海外の図書館のデータを閲覧したりできるようになりました(個人的には古い本に直接触れるほうが好きですが)。タルドの中心思想は、人が別の人のまねをすること(模倣)が社会の基礎であるというものです。タルドはこの考え方をもとにして社会全体を説明する理論を築き上げるとともに、それを犯罪の広がりや、マス・メディア(タルドの時代は新聞しかありませんでした)の働きなどを説明するのに応用します。タルドの議論は確かに古いものであり、粗削りなところもありますが、社会学が学問として独立したばかりの時期の議論であることから、哲学や心理学、経済学など他の学問分野と接続できる可能性を秘めています。また、ネット上で多くの情報が日々コピペされ拡散されていることからもわかるように、「模倣」はデジタル化した現代においてこそ様々な形で進化しています。古典を古典として勉強すると同時に、こうした現代社会の問題を考えるヒントとしても活用していきたいと考えています。

写真2:タルドの彫像(サルラ裁判所)

 

写真3:タルドの著書『模倣の法則』とデュルケームの著書『社会学的方法の規準』

プロフィール

1973年埼玉県越谷市出身。早稲田大学第一文学部卒業(社会学専修)。修士(文学)早稲田大学、DEA(社会問題及び教育)ボルドー第2大学、博士(文学)早稲田大学。北海道教育大学教育学部函館校特任准教授、岐阜大学教育推進・学生支援機構准教授を経て2019年4月より文学学術院准教授。専攻は社会学史、社会学理論。著書に『タルド社会学への招待』(学文社,2009年)、訳書に、タルド『模倣の法則』(共訳,河出書房新社,2007年)などがある。

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/flas/hss/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる