School of Humanities and Social Sciences早稲田大学 文学部

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「中世ロシア民衆文化研究 - 道なき道を歩く楽しみ」文学部 三浦清美教授(新任教員紹介)

自己紹介

大学時代は山登りに夢中になって日本アルプス、上越国境、東北の山々に通いました。道のない山を地図とコンパスだけで登る藪こぎもさかんに行いました。たまたまトップが取れて藪をこぎながらピークに一番乗りしたときの爽快な気分をいまだに忘れることができません。私にとって、研究というのは、道なき道を歩く藪こぎと同じで、その意味では、いまも学生時代もやっていることが同じだと、昔の山登り仲間には冗談を言います。

写真1:スーズダリ

私の専門分野、ここが面白い!

私の研究分野は、中世ロシアの文化史です。高校までで習うロシアの歴史と言えば、ほぼ18世紀初頭のピョートル大帝による西欧化改革以降のことだけですから、ロシア中世と言っても多くの人にはピンと来ないでしょう。私も他のロシア文化研究者と同様に、19世紀ロシア文学黄金時代の作家、ドストエフスキー、トルストイ、チェーホフらの作品群に魅了されてロシア研究の世界に入ったたわけですが、19世紀におけるロシア文学の爆発的開花の背景には、必ずやロシア民衆文化の伝統があると確信していたこと、また、中学生くらいから、日本であれ西欧であれ、中世という陰影のある言葉に夢を抱きつづけていたこと、この二つの動機が絡み合って、大学院に入学するときにわりと迷うことなく研究対象をロシア中世にしました。以来、「いにしへのてぶりこととひききみるごとし」という本居宣長の歌に誘われつつ、中世ロシア人たちの感受性、物の見方を自分の身体を通して理解しようと研究を続けています。中世研究をつづけるうちに、ロシア中世を理解することは、現代ロシア社会を根底で動かしている力にじかに触れることだと確信するようになりました。現在と過去が交わす対話に耳を傾けることが、自分の研究と言えるかもしれません。

写真2:ロシア国民図書館蔵ソフィア集成1462番97об.-98。向かって左側のページが16世紀はじめの文筆家ヴァッシアン・パトリケーエフ、右側のページがその師であるキリル・ベロゼルスキイ修道院のエフロシンの自筆稿。

988年にビザンツ帝国からキリスト教を受容することでロシアに書き言葉の文化が生まれましたが、それから、ピョートル大帝の西欧化改革にいたるまでが、ロシアの「中世」です。ビザンツ帝国からキリスト教を受け入れたことが重要で、天上の全能の神(パントクラトール)の代理人として地上の支配者(アウトクラトール/サモジェルジェツ)が君臨するという考え方がロシアにも流入し、その後の歴史の流れを決定づけました。キリスト教受容の当初から、ヘブライ語、ギリシア語、ラテン語といったキリスト教のメインストリームの言語ではなく、ロシア人にとっての母語である、いわば、田舎の言葉である教会スラヴ語で儀式を行ったり、お祈りを捧げることができました。このことも、ロシアのキリスト教の大きな特徴です。14世紀から15世紀にかけてのモスクワ大公国の勃興期に、ビザンツ伝来のギリシア正教は徐々にロシア正教へと変容していきますが、ロシアのさまざまな文書館に眠る写本など一次史料を含め、あらゆる史料を駆使しながら、スラヴの異教的な民衆文化の只中から、ロシア正教が立ち上がるプロセスに迫ることを目指しています。

写真3:中世ロシア建築の白鳥といわれるポクロフ・ナ・ネルリ聖堂

プロフィール

1983年早稲田高等学校卒業、1988年、東京大学文学部ロシア語ロシア文学科卒業。卒業論文は、アントン・チェーホフの『名の日の祝い』という作品の構造分析。チェーホフはいまでも好きです。1988年、同大学大学院(ロシア文学専攻)修士課程入学。このときに中世ロシア文学を研究することを決意しました。指導教官は栗原成郎氏(東京大学名誉教授)。1990年、修士論文「キエフ・ペチェルスキー僧院伝における物語の比較研究」を執筆。1992年9月から1993年12月まで、サンクト・ペテルブルグ国立大学に研究生として留学。1995年3月、博士論文「14・15世紀ノヴゴロド・プスコフ地方における異教残滓と正教会」で博士(文学)学位取得。1995年4月より2019年3月まで電気通信大学にてロシア語を教えていました。2004年、文部科学省在外研究員としてサンクト・ペテルブルグにて半年間研究に従事しました。

 

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