School of Humanities and Social Sciences早稲田大学 文学部

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「歴史を考える、歴史から考える」 文学部 小原淳准教授 (新任教員紹介)

自己紹介

私は19~20世紀のドイツの歴史を研究しています。とくに1848/49年革命から第一次世界大戦までの時期が専門ですが、授業では、フランス革命とナポレオンから、ビスマルクのドイツ帝国創設や二度の世界大戦を経て、こんにちに至るまでのドイツの歴史を取り上げています。

私がドイツ史に関心をもったのは、中学生、高校生の時期にヒトラーに関する本を何冊か読んだり、ナチスの時代を扱ったドキュメンタリー・フィルムを観たことがきっかけです。戦争や差別、そしてアウシュヴィッツ強制収容所のことを知り、怒りや恐怖、やりきれなさを感じた一方で、聴衆に激しく訴えかけるヒトラーと彼に熱狂する大衆の姿に目を奪われ、強烈な印象を受けました。大学に入学してドイツ語の授業を受講し、さらに本を読むようになると、ただヒトラーを嫌悪し断罪するだけで済ますのではなく、あるいはナチズムを遠い時代の遠い国での出来事として片づけてしまうのではなく、なぜあのような社会が実現したのか、あの社会は私たちの生きる現代社会といかなる関係にあるのかを真剣に考えてみたいという思いがますます強まりました。その後、勉強を続けるなかで、ナチズムが登場した原因をより長期的な時間枠のなかで検討しようと考え、研究の対象はもっと前の時代に移りました。

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ドイツ近現代史研究のための史料。1880年10月1日付の『ドイツ・トゥルネン新聞』

 私の専門分野、ここが面白い!

歴史学の醍醐味は、100年前、1000年前に書かれた史料と向き合って、ああでもないこうでもないと悩みながら、そこに記された情報を読み解くところにあります。「中学生や高校生の時、歴史の授業で人名や年号を覚えるがとてもしんどかった。大学に入ってまで歴史を勉強するなんて、大変じゃないですか」と聞かれることがあります。しかし、大学や大学院で歴史を専攻した場合、年号などをひたすらに暗記することを要求されるわけではありません。そうではなく、昔の人々が書き残した史料を見つけ出し、読み解き、史料のなかに描かれた時代をより深く理解し、さらには自分の生きる時代と社会を見つめ直すことが、歴史の研究です。史料を読む際には、高校時代に友達と競い合いながら覚えた世界史の知識が大いに役立ちますし、日常生活のなかで誰かと話したり本を読んで知ったこと、あるいは一人の時に空想したことが思いもよらぬかたちで生きてきます。歴史の探究は、これまでに学んできたことや日々の体験と深く結びついていますし、また反対に、自分を取り巻く現代の世界について深く考えるためのヒントを得る機会にもなります。

歴史学は、一人きりで史料の山や難解な研究書と格闘するだけで完結するものではありません。研究に必要な史料を集め、最新の研究動向を確認するために、海外に調査に行くことも必要です。「史料収集」、「調査」というとずいぶん堅苦しいですが、歴史の本に登場する教会や城を周ったり、美術館で名画を鑑賞したり、ただ当てもなく古い町並みを歩いたり、スタジアムでサッカーの試合に興奮したり、美味しそうなレストランをのぞいてみたりすることも、異文化を知るよい機会です。地続きのヨーロッパでは、一枚の鉄道切符で国境を越えて幾つもの国を巡ることができます。

歴史を勉強するうえでは、専門分野の違う人たちと意見を交換し合って、刺激を得ることも大切です。早稲田大学文学部そして文化構想学部には、西洋史の様々な時代、様々な地域を研究する教員が所属しており、スタッフの多さやカバーしている領域の広さという点で、西洋史を勉強するには日本国内でも有数の恵まれた環境にあります。また、西洋史を専攻する学生の数も多く、勉学だけでなく学生生活の全般にわたって、和気あいあいと互いを高め合っていますし、大学で学んだ外国史の知識を武器に、在学中に旅行や留学で国外を訪ね、その経験を就職や進路選択に生かす人も少なくありません。早稲田で西洋史を学ぶことに興味のある方は、ぜひ西洋史コースのホームページをのぞいてみてください。

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世界遺産都市レーゲンスブルクの町並みとドナウ川(筆者撮影)

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ベルリン・オリンピア・シュタディオン。ヘルタ・ベルリン対ハンブルガーSV(筆者撮影)

プロフィール

1975年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。

専攻はドイツ近現代史。

著書に『フォルクと帝国創設』(彩流社、2011)。

訳書にJ・スタインバーグ『ビスマルク』(白水社、2013)、J・スパーパー『マルクス』(白水社、

2015)、C・クラーク『夢遊病者たち』(全2巻、みすず書房、2017)。

 

 

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