Graduate School of Letters, Arts and Sciences早稲田大学 大学院文学研究科

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【SGU国際日本学拠点】蜷川幸雄のシェイクスピア演劇翻訳で「音を上げていく」

シェイクスピアの翻訳を考える

シェイクスピア没後400年を記念して早稲田大学では様々なイベントを開催しています。12月16日、関西学院大学教授ダニエル・ガリモア氏と翻訳家で演劇評論家の松岡和子氏を招き、戸山キャンパスでシェイクスピアの邦訳や翻訳の現在と展望について講演・対談が行われました。かの有名な演出家である蜷川幸雄氏は自身のシェイクスピア演劇に松岡氏の翻訳を使っています。

20161216_シェイクスピア講演会&対談画像 076

ガリモア氏は、本学教授でありシェイクスピア全37作品を初めて日本語に翻訳した坪内逍遥の研究における第一人者であり、松岡和子氏は1993年以来シェイクスピアの全戯曲の翻訳に取り組んでいます。今回の講演でガリモア氏は、松岡氏の翻訳の特異性と意義について解説しました。ガリモア氏いわく、松岡氏の翻訳の魅力は四字熟語や擬態語に隠されているといいます。

Portia: I prithee, boy, run to the Senate House. Stay not to answer me, but get thee gone. Why dost thou stay?
(William Shakespeare, Julius Caesar (1599). Ed. David Daniell. London: Thomson Learning, 1998.)

ポーシャ:お願い、ルーシアス、元老院まで走っていって。返事はいいから行きなさい。何をぐずぐずしているの?
(松岡和子訳『ジュリアス・シーザー』東京:筑摩書房、 2014)

「ぐずぐず」からわかるように、ガリモア氏は四字熟語や擬態語は完全な翻訳ではないが、松岡氏がそれらを使うことで「観客に届かないsubtextを伝え、文章にエネルギーを与える」ことができると説明しました。そのうえで、硬い言葉を用い、句読点を少なくすることによって蜷川幸雄の言葉でいう「(演劇の)音を上げていく」ことを可能にし、日本語翻訳であるにかかわらずシェイクスピアならではの巧みな表現に近づくことができたと称賛しました。

Shakespearean plays translated by Matsuoka

松岡氏が翻訳したシェイクスピア作品

一方、シェイクスピアの全作翻訳まで5冊を残すのみとなった松岡氏は、ガリモア氏の発表に対して、「四字熟語を意識したことはなかったが、ふさわしい表現を模索していくうちにこうなっていた」と答えました。松岡氏は、故蜷川幸雄氏が芸術監督を務めた彩の国さいたま芸術劇場の彩の国シェイクスピア・シリーズで翻訳を担当してきました。松岡氏は、蜷川幸雄演出によるシェイクスピア劇の翻訳によって、「日本語をしゃべるデンマークの王子、古代ローマ人など、文化的なハイブリッドを作り出すことの自覚」を体得したと述べました。

また、松岡氏は小説と戯曲の違いにも触れ、シェイクスピア劇であっても、「今現在生きている人が演じると今の芝居になり、今の問題や感受性が反映される」とコメントしました。最後に、松岡氏は蜷川幸雄が車いすに乗りながら晩年80歳にして手がけた『リチャード2世』の舞台裏について語り、ガリモア氏と松岡氏の対談で講演の幕を閉じました。

公演者について

Daniel Gallimore (ダニエル・ガリモア)

daniel gallimore

関西学院大学教授、シェイクスピア学者。オックスフォード大学東洋学博士課程修了、博士課程習得。坪内逍遥を中心とする日本におけるシェイクスピアの翻訳の研究を専門とする。著書に「SOUNDING LIKE SHAKESPEARE – A Study of Prosody in Four Japanese Translations of A Midsummer Night’s Dream」(関西学院大学出版会、2012年)などがある。日本シェイクスピア協会会員、International Association for Translation and Interpreting Studies (IATIS)会員。

松岡 和子 (まつおか かずこ)

松岡先生

翻訳家、演劇評論家。東京大学大学院修士課程修了。1993年以来、シェイクスピアの全戯曲の翻訳に取り組み、本年亡くなった演出家・蜷川幸雄氏が芸術監督を務める彩の国さいたま芸術劇場の彩の国シェイクスピア・シリーズで翻訳を担当し、企画委員も務める。主な著書は『すべての季節のシェイクスピア』(筑摩書房)、『快読シェイクスピア』(ちくま文庫)等。翻訳も多数。シェイクスピアの訳書は、ちくま文庫からシェイクスピア全集として次々と出版されている。日本シェイクスピア協会会員、国際演劇評論家協会会員。

イベント詳細

日時:12月16日(金) 15:30~18:00
会場:早稲田大学戸山キャンパス 36号館6階 681教室
主催:スーパーグローバル大学創成支援事業 国際日本学拠点角田柳作記念国際日本学研究所

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