ゼミ(演習とプロジェクト研究論文)履修について
1.演習
第1 セメスターで必修コア科目の多くを受講した後、第2 セメスターより演習科目を履修します。第2 セメスターから第4 セメスターまでテーマの3つの異なる演習を受講しファイナンス関連領域を広く多角的に学ぶことで、その知識を総合的に深めることが可能です。また、少人数教育による演習を行う事で、討論・プレゼンテーションの能力を身につけることができます。
2.プロジェクト研究論文
2 年間の集大成として、プロジェクト研究論文の作成が求められます。2 年次(第3セメスターから第4セメスター)の1年間の研究指導および論文作成を経て、第4セメスター末の論文審査に合格することで、修了要件として必要な2 単位が授与されます。論文指導教員の決定は、第2セメスター終了後に行われます。論文指導教員は、第2 セメスターで履修した演習科目の担当教員、これから履修を予定している演習科目の教員に限定しません。
3.各ゼミ紹介
企業経済学
担当教員:准教授 蟻川 靖浩
本演習では、まず企業経済学の分野で用いられる実証分析の手法と、そうした手法を用いた分析事例を解説する。
同時に、参加者が自らデータを用いて実証的な分析を行い、それを報告する。本演習の目的はこれらの事柄を通じて、参加者が自らデータ分析を行うための能力を獲得し、さらには向上させることである。具体的な例として用いるトピックスは、M&A や多角化等企業の境界をめぐる問題、コーポレートガバナンスをめぐる問題、などを予定している。
金融経済学
担当教員:教授 池田 昌幸
本演習は、投資家の資産選択行動と、金融資産市場の価格形成および配分機能について、その主要な結果とともに、未解決の問題について、プライシング・カーネル(確率的割引ファクター)の概念を用いて明らかにすることが目的です。演習では、主に英文のテキストあるいは論文を参加者に報告してもらいますが、論点を明らかにするうえで、参加者間の討論を重視したいと思います。
将来の労働収入のように、ヘッジ不可能なリスク(バックグラウンド・リスク)が存在する状況も含め、特に、市場が完備ではない場合の資産価格形成の考え方を取り上げたいと思います。
マーケット・マイクロストラクチャー
担当教員:教授 宇野 淳
本演習では、マーケット・マイクロストラクチャーの実証研究に取り組む。マーケットの流動性の計測など基本的な事項について解説した後、各自が関心のあるテーマを選択し、先行研究のサーベイ、データの収集・分析を行い、結果の報告を講義で随時行う形で進める。最終的に結果をレポートにまとめる。
テーマとしては、株式市場の高速化、金融危機と流動性、Twin Market、国債市場の分析などが候補となるだろう。高速化の研究に取り組むものは、高度なデータ解析とプログラミング(SAS 等)の能力が前提となる。
不動産・保険・金融
担当教員:教授 川口 有一郎
本演習では、不動産・金融・保険(FIRE)産業におけるビジネス戦略の哲学、またこれを実行に移すための予測、数値分析、実証分析、およびリスク管理の手法について学ぶ。
トピックスは、世界経済の多極化とFIRE ビジネス戦略、ビッグデータ・ファイナンス、マクロ経済とバブル崩壊の予兆管理、株価、金利、および不動産の価格や賃料などの予測、および新しいデリバティブ商品をもちいたリスク管理。また、ビジネスファミリーのウェルスマネジメント等についても扱う。
金融機関マネジメント
担当教員:教授 川本 裕子
銀行・証券・保険・ノンバンクといった金融機関や証券取引所・公的金融機関の経営課題を認識し、その解決の方法を探る。具体的には、事業内容・収益基盤・組織・人事制度・オペレーション・海外展開といった課題の認識と分析、およびその解決の方向性を短期と中長期に分けて考察する。実際には、各自が、内外の金融機関グループの経営戦略や業務、市場運営、組織課題などからトピックスを選択し、それについて公表データや資料、報道、インタビューなどをもとに調査・検討する。担当者は自分の選択したテーマについて、課題を分析し、解決策を示し、授業中に参加者との議論を通じて、現実的な解へつなげていく力を培う。的確で効率的な議論をする技術を習得することも努力する。
※2017年度は学生募集いたしません。
計量経済学
担当教員:教授 斯波 恒正
本演習は、いわゆる標本理論に基づく計量経済学を授業で習ってきたものと思うが、見方を変えてベイズ統計学に基づくベイズ計量経済学を勉強し、視野を広げることをねらう。経済学、経営分野での分析例を検討することで、実践的な応用の可能性をさぐる。R を使うこととする。『ベイズ統計分析』(照井著)の章を追って進んでいく。毎回受講者による発表と討論、そしてR を使った数値例や実証例の検討を行う。プレゼンテーションに際しては、要約をpdf file などで用意して欲しい。
コーポレート・ファイナンス実証分析
担当教員:教授 鈴木 一功
本演習では、コーポレート・ファイナンスに関連する実証研究の検討を通じて、参加者が自らデータを用いて実証研究ができる能力を身につけることを目的とする。演習の前半においては、コーポレート・ファイナンス分野の実証研究論文(例として、株主還元政策、負債政策、株主構成と企業パフォーマンス、M&A 等)を取り上げ輪読することで、実証研究のテーマとそれに用いられている計量経済学的な手法を考察する。演習の後半では、参加者が自らコーポレート・ファイナンス分野から選定したテーマについて、実際にデータ収集、分析、報告を行う。さらに、その結果をレポートにまとめて提出することを単位取得要件とする。学期初めに、参加者数や参加者の興味のある分野に応じて、全体の講義計画を設定する予定である。
金融システムとコーポレート・ガバナンス
担当教員:教授 首藤 惠
本演習では、コーポレート・ガバナンスと金融システムの機能・構造・形態との関係について学習する。理論的分析と実証研究の基本的文献をサーベイして分析ツールを身に着け、各人が関心に応じたテーマを決めて、それぞれデータや資料を用いてレポートをまとめることが最終的な目的である。演習での議論とレポート作成を通じて、現在の日本、欧米、アジア各国の金融システムの直面する問題とコーポレート・ガバナンスとの関連について理解を深める。
ポートフォリオ・マネジメント
担当教員:教授 竹原 均
本演習の前半では、アセットプライシングモデル、企業価値評価モデルなど、ポートフォリオ管理に関連する代表的な先行研究について輪読を行う。参加者は自分に割り当てられた論文についてその概要を報告する。演習後半では、実証研究の方法論、特にコンピュータ上での実装に関して解説し、その後に演習前半で取り上げた論文の内容を日本市場のデータを用いて複製することが参加者には求められる。
コンピューテーショナルファイナンス
担当教員:教授 中里 大輔
クオンツに必要なプログラミングスキルを身につける。ゼミ担当教授が同時に教えている「ディリバティブ・モデリング」「数理ファンナンス」「金融工学とリスク管理」で扱われる、金融商品やリスク管理手法などを例に実際のソフトウェア開発を行なう。 プログラミングのイロハから始めて、プロトタイプ開発してもらう。この作業を通して数値計算の問題点などを理解してもらう。
前半はエクセルベーシックでマクロの作り方を講義、中間ではマセマティカでのプログラミングを講義、後半はアドホックな開発プロジェクトをサポートする。各学生のスキルレベル・進捗に合わせ指導を行い、実際のプログラミングは宿題とする。問題点などは授業中に議論する。また、夜間主プロフェッショナル科目「ディリバティブ・モデリング」「数理ファイナンス」「金融工学とリスク管理」の補習も兼ねる。
債券投資戦略
担当教員:教授 四塚 利樹
本演習では、債券運用に関する理論と実証について最近の重要な知見を把握し、特に債券アービトラージへの応用の可能性を探る。レポ市場、債券先物、金利スワップなどの理解を深めるほか、イールドカーブの歪み、現物国債市場とレポ市場のリンク、スワップ・スプレッドの変動、物価連動国債のミスプライシングなどについて検討する。
債券アービトラージは金利モデルの世界だけで完結するものではないため、金融政策、マクロ経済や投資家行動などに関わる広範囲のファクターとの関係にも留意する。また、レバレッジを用いた運用には流動性リスクに関する理解が不可欠であるため、ヘッジファンドと流動性危機に関する論文もカバーする。本演習の目的は、これらの理論的・実証的検討を通じて、債券ポートフォリオの構築とリスク管理に役立つ分析力と視野を身に付けることである。学期末レポートの形式・内容は自由だが,データを使って数量的分析を行うことが推奨される。
マクロファイナンス実証分析
担当教員:教授 米澤 康博
本演習ではマクロ株価水準、あるいは金利、為替レートがマクロ経済体系の中でいかに決まり、それがまたほかのマクロ経済変数にいかに影響を与えるかをマクロ経済学に基づいて理解、分析、議論することを目的とする。
株価等のマクロ経済情報は金融系企業の学生にはもちろん、非金融系企業の学生においても必須である。演習では基礎理論の学習を中心にしながらも、データ採集をして、簡単な計量経済モデルでの計測等を通して「現在の経済政策は適切か」等の検証も併せて行う予定である。