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Vol.4「JAZZ NUTTY」
ー全集中!ジャズの呼吸!ー

「JAZZ NUTTY」

都電荒川線早稲田駅から、早稲田キャンパスに向かうと、大隈通りが見えてくる。左手に気になるレコードの看板と言葉が視界に入る。「ミュージシャンの魂を聴きとれ!」

店先には、店のコンセプトがストレートに書かれている

レンガ調の壁に近づくと、わずかに音がこぼれている。勇気を出してアッシュグリーンの扉を開けると、サックスが鳴いている。店内をまっすぐ進むと、音のシャワーに包まれた。席まで、大きなスピーカーの間を歩いていく仕組みだ。早稲田キャンパス北門から徒歩3分。大学に一番近いジャズ喫茶「JAZZ NUTTY」の店長、青木一郎さんにお話を伺った。

ジャズを静かに聴ける、学生街のジャズ喫茶

JAZZ NUTTY(ジャズナッティ)という店名は?

「学生時代、他大ですがジャズ研究会に入っていました。若い頃からたくさんのジャズを聴いてきました。一貫して聴いてきたミュージシャンがセロニアス・モンクです。大好きなモンクの曲名から『Nutty』をいただいて、『JAZZ NUTTY』という店名にしました。Nuttyには馬鹿げたとかイカれたみたいな意味もあって、面白いかなと。」
*セロニアス・モンクは、ジャズピアニストの巨人。代表曲「Round Midnight」ほか。

トランペット、サックスのプレイ経験のある店主、青木さん

早稲田大学の近くで、ジャズ喫茶を開店されたきっかけはー

「やっぱりご縁ですかね。以前、大田区で花屋を開業していたのですが、都市開発のために立ち退きせざるを得なくなって・・・。2008年、ちょうど私が50歳のときに、第2の人生として、夢だったジャズ喫茶の経営にチャレンジすることにしました。妻も同じ大学のジャズ研究会だったので、理解を得られました(笑)。若いときに自分が通ったような、じっくり聴けるジャズ喫茶を作りたい。それがコンセプトです。早稲田には名門ジャズサークルもあったり、伝説の店もあったり文化的な雰囲気もありますし、ちょうど土地の縁もありまして。ジャズをあまり知らない世代にも、ジャズを伝えていきたくて。」

かつて、学生街には、ジャズ喫茶が当たり前のようにあった。西早稲田の交差点近くには、伝説のジャズ喫茶「MOZZ」があり、タモリさんや風間杜夫さんらが通っていた。その他にも、早稲田大学の周りには、複数のジャズ喫茶があったという。残念なことに、高田馬場にあった名店「MILESTONE(マイルストーン)」は、惜しまれながら2019年7月に43年間という長い歴史の幕を下ろした。

かつて開業していた花屋の店名は、「サッチモ・フラワー」。サッチモはルイ・アームストロングのニックネーム。「What a Wonderful World」が聴こえてきそう。

全集中!ジャズの呼吸!

目を閉じて、心で聴いてほしい

『JAZZ NUTTY』は、静かにじっくり聴ける本格的なジャズ喫茶だ。ライブ演奏を聴かせるような派手な店ではない。オーディオや空間にこだわり、静かに聴いて楽しむ店。このタイプは、いまや都内では貴重になり、数えるほどだ。原則、会話は遠慮いただいている。いつでも、じっくり集中して聴ける環境を保つ。それが基本ルールだ。土日は、遠方からジャズファンがわざわざやってくる。ジャズサークルの学生も、好きな曲がかかると興奮したりするけれども、静かに聴いてくれるという。

「ジャズをこれから聴く人にお勧めしたいのは、まず全身で音を浴びて、心で聴くこと。自分の感性を信じて、楽しむほうがいい。すぐに解説書に目を通す人がいますが、専門家の批評は読まないほうがよい。他人の余計な先入観・イメージは、マイナスになることもありますので・・・。もちろん、ある程度自分の聴き方ができあがってからは、批評を読んで良いと思います。あと今は、みなさん、席に座ったとたんにスマホを見る方もいますが、まずは目を閉じて聴いてもらいたいですね~。」

気軽に通えるワンコイン2時間制

昔ながらのジャズ喫茶に、食事のメニューはない。飲み物だけだ。オリジナルブレンドコーヒー。コーラ、ジン、ラム、スコッチ、ウイスキーもワンコインの税込み500円、ビールは700円。学生が通いやすいようにするため、値上げは当面しないという。どこかで食事をした後に、NUTTYに寄るのがちょうどよいだろう。

「うちを気に入ってくれた学生さんは、毎日のように通い詰めてくれる学生さんもいます。嬉しいです。自分も学生時代に、青春の悩みみたいなものがありましたが、ジャズ喫茶に行って救われたことがある。そういう場を作りたい。学生さんに気軽に通ってもらって、ジャズを聴いてもらいたいですね。」

秘密のノート

店内には数多のLPやCDが並ぶ。青木さんは、毎月テーマを設けて特集したり、新譜もかけるDJだ。

「お客さんが独りだけの貸し切り状態の時で、しかもジャズに集中して聴いていただいているお客様には、何かリクエストありませんかとお声かけしています。」

ノートに、客の趣向や、来店時に聴いたレコードを全て記録している。青木さんは、実は客の様子や反応を観察したり、分析する研究者である。その客の次の来店時の参考にするためだという。ある意味、毎日、客を楽しませる選曲の戦いでもある。

「一応、CDやレコードの持ち込みも可能なので、大きな音で聴いてみたいという方はご相談ください。マイルス・デイビスを聴きたいとか、サックスでおすすめのお願いしますのように、気軽にリクエストしてほしいですね。」

音響システム

プレーヤーは、Technics SL-1200MK3D。アンプは、McIntoshのC34VとMC2205だ。存在感のあるスピーカーは、JBL Professional Series 4331B。約60kgの安定感。38cmコーン型ウーファーからはパワフルな低域と心地良い中高域。広すぎない店内では、スピーカーと客席との距離もちょうど良く臨場感に包まれる。微かな響きやミュージシャンのつぶやきや息遣いが聞こえる。自分のレコードやCDを持参して、このシステムで聴いてみると違いがわかるという。

ジャズと人生相談

「学生さんに、『青木さん。僕、ここに来たのが今日で100回目です。』と言われたときは嬉しかったですね。結局、その学生さんは、卒業までに300回ぐらい来てくれました。ほかにも、卒業してからもずっと顔を出してくれる卒業生もいます。就職、結婚、出産、離婚など、いろいろ報告してくれます。赤ちゃんを連れてきて、顔を見せてくれた卒業生もいました。みんな自分の子供みたいに可愛くてしょうがないね。それこそ、1対1の時には何でも聞いてあげちゃう。人生相談をしている感じですね(笑)。」

早大生をどう思いますか?
「早稲田の学生さんは、みんなちゃんとしている。本当に素晴らしい。流石だなと思います。ジャズは、最初少し敷居が高いというか、背伸びして聴いてみないと良さがわからないのですが、ジャズ初心者の早大生には、わかるまで聴いてやるぞという向上心を感じますね。自分の好きなミュージシャンを見つけて、立派なジャズファンになっていきます。それと、早稲田のジャズサークルはレベル高いですね。上手です。ダンモ、ハイソ、Swing&JAZZもニューオリも。練習が忙しいみたいですが、顔を見せてくれると嬉しいです。彼らに何を聴かせるかが勝負ですね(笑)。教授の方々も、授業や研究の合間にお越しいただいて、珈琲を飲んで気分転換していただいています。」
*以下の画像は店内を360度見ることができます。店主の青木さんを探してみてください。[BY THETA 360.biz]

早大生へのメッセージ

最後に、早大生へのメッセージをお願いします。

「大学生活とは、人生の宝の4年間ですよね。新型コロナで大変な毎日を送っていると思いますが、ぜひ隙間のお時間にNUTTYに来て、何枚かレコードを集中して聴いてほしいです。ストレスとか不安もあるかもしれませんが、思い切りジャズを聴いて音のシャワーを浴びてもらって、自分の気持ちを洗い流して、元気になってもらいたいですね。
ジャズは、ミュージシャンたちの対話です。譜面通りでない音。その瞬間に生まれる即興演奏。ミュージシャンが人生をかけて取り組む表現の研究。演奏の発明であり、冒険です。それを実現できるような精神と技術。そのようなミュージシャンの物語を聴けるようになってほしい。わかればわかるほど面白いというのが、ジャズの醍醐味です。ミュージシャンの魂を聴いてください。心に深い傷を負った聞き手こそ、無条件で心に沁み込んでくるものです。自然と癒されていくはずです。」

青木さんは、今日もターンテーブルの前で、早大生を待っている。

【店名】JAZZ NUTTY
【住所】新宿区西早稲田1-17-4
【TEL】03-3200-3730
【営業時間】月・水・木・金曜日11:00〜21:00 土・日曜日11:00〜18:00
【定休日】火曜

宣言「ワセメシ、ワセマチは、早稲田文化である」

早稲田大学のキャンパス周辺は、早大生や教職員、校友、街の方々が交流する交差点であり、たくさんの出会いがあります。みなさんには、馴染みの食堂やお気に入りのカフェがあることでしょう。早稲田文化ラボ編集部は、早大生の青春の舞台である早稲田大学の町(ワセマチ)も、飲食店(ワセメシ)も大切な「早稲田文化」のひとつだと考えています。

新型コロナウイルス禍で、早大生がいないワセマチ。多くの飲食店が大きなダメージを受けています。早稲田文化であるワセメシ、ワセマチを応援したい。このコーナーでは、キャンパス周辺地域の飲食店を中心に紹介していきます。まだ通学できていない1年生に参考にしてもらえたら…。上級生が来校時になじみの店に立ち寄ってくれたら…。校友のみなさんもきっとワセメシ、ワセマチを応援してくれる…。そのような願いを込めて、ワセメシ、ワセマチ情報をお届けします。

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