Waseda Culture早稲田文化

News

ニュース

是枝裕和氏と福嶋亮大氏が受賞挨拶(第7回早稲田大学坪内逍遙大賞授賞式・祝賀会開催)

2019年10月17日、第7回早稲田大学坪内逍遙大賞受賞者発表記者会見を行い、大賞に是枝裕和氏、奨励賞に福嶋亮大氏が決定と発表いたしました。11月7日にはリーガロイヤルホテル東京において授賞式・祝賀会を開催、両氏より受賞挨拶をいただき、田中愛治総長や選考委員からはお祝いの言葉が贈られました。

授賞式

田中愛治 早稲田大学総長挨拶「早稲田が日本の文化を作ってきたという伝統を大切にしたい」

本日はご多用のところお集まりいただき、早稲田大学を代表してお礼申し上げるとともに、受賞された是枝様、福嶋様には、心よりお祝い申し上げます。本賞は、大隈重信や小野梓と共に本学の草創期を支え、文学・演劇・翻訳など幅広い分野で近代日本の文芸・文化の礎を築いた坪内逍遙の精神を、ひろく未来の文化の新たな創出につなげたいとの願いを込め、2007年の大学創立125周年を記念して創設いたしました。今回で7回目となります。

坪内逍遙はシェークスピア研究の第一人者であり、その名を冠した演劇博物館は、世界中の演劇に関する100万点以上のアイテムを収蔵し、世界中の演劇を学ぶ博士後期の学生は必ず一度は訪れると言われる機関になっています。

本学は文化を大切にし、多彩な人材を輩出してきた伝統と歴史があります。教育・研究で「世界で輝くWASEDA」を推し進めると同時に、早稲田が日本の文化を作ってきた、支えてきた、という伝統を大切にしたい。その伝統を受け継ぐものとして、早稲田大学坪内逍遙大賞があります。

大賞の是枝裕和様は、改めて紹介するまでもなく、映画だけにとどまらない多方面での活躍や取組みをされ、まさに「国際文化交流・文化創造・伝統文化の継承など、社会と公共の利益を増進することに寄与した文化芸術活動」を顕彰する本賞にふさわしい人物と言えます。

また、奨励賞の福嶋亮大様は、「文芸批評は文明批評でなければならない」とおっしゃっていますが、その言葉通り、日本近現代の文学や思想にとどまらずサブカルチャーまでを幅広く対象とするスケールの大きな批評活動をされており、さらなる活躍を願っての顕彰となります。

最後になりますが、今後とも、早稲田大学に対しまして皆様の変わらぬご支援・ご指導を賜りたく、何卒、よろしくお願いいたします。本日は、誠におめでとうございます。

【大賞】是枝裕和氏挨拶「この居心地の悪さが私を推し進める原動力」

このような賞をいただき、居心地の悪さを感じています。
早稲田大学第一文学部の学生だった頃も居心地の悪さを感じていました。
小説家になろうと早稲田大学に入学しましたが、早稲田近辺の映画館に通っていました。
卒業後、テレビ制作をしていましたが、テレビマンユニオンにも居心地の悪さを感じて映画製作をするようになりました。
本日は私の卒論指導をしてくださった岩本憲児先生がいらっしゃり一層居心地の悪さを感じています。
この居心地の悪さが私を推し進める原動力となり、様々なことに挑戦してきたことをこのように評価してくださったのかなと思っています。

【奨励賞】福嶋亮大氏挨拶「逍遙の持っていた広い捉え方を少しでも引き継ぎたい」

大変名誉ある賞をいただき非常に光栄かつ嬉しく思っています。とはいえ、文学に関わる者として、世俗的な名声等から離れたところで普遍的な仕事をせねばならないと考えており、今回の受賞も「おごることなく一生懸命にやりなさい」という叱咤激励として受け取らせていただいています。
「文芸批評は文明批評でなければならない」という言葉を田中総長に紹介いただきましたが、マニアックになりがちな文芸の評論を風通しよく、ユニバーサルな問題につながっていくような形で考えていきたいと思っています。
坪内逍遙は、近世・近代の時代を時間的にも空間的にも広いものとして捉えようとした劇作家だと理解しており、逍遙の持っていた広い捉え方を自分なりに少しでも引き継げればと考えています。
この時代に文学の社会的な意義を位置づけていくことは難しいですが、私個人としては文学はいろんなジャンルの羅針盤のようなものであればいいのではないかと思っています。大賞の是枝監督のように、世界を舞台に優れた仕事をされている方などにとって少しでも役に立つ仕事ができればと願っています。

重松清選考委員祝辞(是枝裕和氏に向けて)「走っている是枝さんに沿道から送った精一杯のエール」

是枝さん、福嶋さん、受賞おめでとうございます。是枝さんには居心地の悪い思いをさせてしまい、すみません。
表現というものが大変な時代に、是枝さんは「表現」「公」とは何かであるかを、静かに毅然と意見表明をなさって心強く思います。
10月に開催された韓国釜山の国際映画祭で、「なぜ、映画をつくるのか」という質問に対して、是枝さんは国家や目に見える共同体ではなく、映画というもっと豊かな共同体に自身が属している幸せを感じるためであるとおっしゃっていましたが、これは文芸、演劇などの表現活動全てに共通していることであると思います。その面では、目に見える「早稲田大学」を超えた「坪内逍遙」の精神に基づく本賞を、受け取っていただけたことを、選考委員一同誇りに思います。
また同映画祭で、是枝さんは年齢的に功労賞の受賞が多くなったともおっしゃっており、今回の授賞が居心地の悪い思いをさせてしまったのではないかと思います。しかし、本賞は、マラソンや駅伝で例えると、ゴールで待ち構えて表彰するものではなく、走っている是枝さんの姿に沿道から送った精一杯のエールです。そのような趣旨で、この授賞を受け止めていただけると幸いです。

小野正嗣選考委員祝辞(福嶋亮大氏に向けて)「福嶋さんが人々に光を注ぎ、喜びをもたらすことを期待している」

是枝さん、福嶋さん、この度は受賞おめでとうございます。
福嶋さんの批評は、大きな視野と該博な知識、しかもあらゆる文芸・文化の領域を差別することなく等価に論じていらっしゃる。昭和の時代は文学が文化領域の高位にありましたが、今はサブカルチャーを含む様々なジャンルの文化が息づいている時代になって、それら様々な領域にあるものを軽視することなく、同時代の作品として捉え、それらを理解するために、中国や近世日本の文化・歴史という長く遠いところまで遡る試みをされています。なおかつ、賛否両論問わず多様な意見を受け入れる風通しのよい文章の構えを持った仕事をされ、自身の仮説を臆することなく大胆に提示していることが、大変素晴らしいと思います。
福嶋さんは、受賞会見や本日の挨拶でも、文学者は晴れがましい場所に出るのではなく、むしろ光が当たらない人たちに光に与え、生きる力を与えるような仕事をしたいと仰っていました。奇しくも、是枝さんの映画作品は、僕たちの生きている社会で目を伏せてしまう人々や問題に光をずっと当ててきました。このような仕事をされてきた是枝さんと福嶋さんが、ともに受賞されたことは本当に素晴らしいことであります。
福嶋さんが、文化的な様々なことを享受できないでいる人々に光を注ぎ、喜びをもたらす仕事を今後もされていくことを期待しています。

祝賀会

授賞式に引き続き行われた祝賀会では、渡邉義浩理事の挨拶後、和やかな雰囲気で歓談をお楽しみいただきました。

渡邉義浩 早稲田大学文化推進担当理事挨拶 「受賞を契機に早稲田文化の推進にご協力いただきたい」

本学では、創立150周年を迎える2032年を目標に、世界に輝くWASEDAを目指した中長期計画“Waseda Vision 150”を策定し、さまざまな事業に取り組んでおります。「早稲田文化」の推進も早稲田大学の飛躍のための大きなテーマとして位置付けていますが、この坪内逍遙大賞・奨励賞の歴代の受賞者の皆さまからも積極的にご支援・ご協力をいただいております。
例えば、第1回大賞受賞の村上春樹様とは、国際文学館、通称・村上春樹ライブラリーを2021年4月に早稲田に開館することを発表し、グローバルに文学を研究・発信し、国際交流を図る場を生成すべく、共に取り組んでいます。11月28日に予定している国際文学館イベント「村上春樹と国際文学」には、第6回大賞受賞の柴田元幸様と、第1回奨励賞受賞の川上未映子様にご出演いただきます。
第2回大賞受賞の多和田葉子様には、受賞を契機に、毎年11月にベルリンから来日いただいています。言葉と音楽のコラボレーションの可能性を探る企画「多和田葉子・高瀬アキ パフォーマンス&ワークショップ」を2日間にわたって実施いただいており、今年も11月14日・15日に開催いたします。
第4回奨励賞受賞の小野正嗣様には、立教大学時代より本賞の選考委員をお願いしていますが、この4月からは早稲田大学文学学術院の教員として次世代の教育に尽力していただいています。
第5回大賞受賞の伊藤比呂美様も本学教員に就任いただき、飾らない発言や詩や小説に懸ける想いで学生を大いに盛り上げていただいております。
この他にも各受賞者には、多大なるご協力をいただいております。是枝様と福嶋様におかれましては、この受賞を契機に、今後「早稲田文化」の推進に是非、ご支援・ご協力いただければ幸いです。今日は、本当におめでとうございます。そして、ありがとうございました。

早稲田大学坪内逍遙大賞受賞者

第1回(2007年)大賞:村上春樹氏/奨励賞:川上未映子氏
第2回(2009年)大賞:多和田葉子氏/奨励賞:木内昇氏
第3回(2011年)大賞:野田秀樹氏/奨励賞:円城塔氏
第4回(2013年)大賞:小川洋子氏/ 奨励賞:小野正嗣氏・山田航氏
第5回(2015年)大賞:伊藤比呂美氏/奨励賞:福永信氏
第6回(2017年)大賞:柴田元幸氏/奨励賞:アーサー・ビナード氏
第7回(2019年)大賞:是枝裕和氏/奨励賞:福嶋亮大氏

第7回早稲田大学坪内逍遙大賞選考委員

鵜飼哲夫委員長(読売新聞編集委員)
奥泉光副委員長(小説家、近畿大学教授)
松永美穂副委員長(翻訳家、早稲田大学教授)
小野正嗣委員(小説家、早稲田大学教授)
ロバートキャンベル委員(日本文学研究者、国文学研究資料館長)
重松清委員(小説家、早稲田大学教授)
田中光子委員(株式会社文藝春秋文藝出版局第一文藝部部長)

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/culture/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる