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早稲田大学出身のバンド「空間現代」 野口順哉さんスペシャルインタビュー

1月20日(金)21日(土)の2日間、国際的にも評価の高い劇団、地点による『ロミオとジュリエット』が早稲田大学大隈記念講堂で上演されます

音楽を担当するのは早稲田大学出身のバンド「空間現代」。地点とはこれまで『ファッツァー』(2013年)、『ミステリヤ・ブッフ』(2015年)で共同作業を行い、今回の『ロミオとジュリエット』は3作目の共同作業となります。2016年には拠点となるスタジオ/ライブハウス「外」を京都の左京区・錦林車庫前にオープン、イタリア・ドイツで初の単独海外公演も成功させました。『ロミオとジュリエット』公演に先がけて、空間現代でギターボーカルを担当する野口順哉さんのインタビューをお送りします。

野口順哉さんインタビュー

バラバラになったり欠けたり分離していったり

—— まずは空間現代というバンドの紹介をお願いします。

野口 どういう音楽ですかと聞かれたときにどう返すかはいつも悩みます。一時期はプロフィールにオルタナティブロックバンドって書いてたんですけど、ほぼ何も言っていないに等しい(笑)。 オーソドックスな形態でオルタナティブな方向性を見せるみたいな感じは言い得ていると思うのですが、とにかく聴いた方はいわゆるロックバンドとは異なる印象を持たれると思います。それでも使用する楽器はエレキギターとエレキベースとドラム、あと、たまに歌が入ってくるという形態です。歌といっても叫んでるだけなんで歌と呼べるものかわからないですけど。はじめた頃からオーソドックスな編成で変わったことができないかと実験していました。たとえばドラムはこういうリズムを叩いてるけどギターとベースはそれを完全に無視して違うリズムを弾き続けてみたり、テクノとかヒップホップとか、機械を使った音楽でフレーズを切り貼りするのを真似してみたり、音をマイナスしていったり。そうやってオーディエンスに「おや?」と思わせる工夫を学生時代からいろいろと考えていました。

 

—— 空間現代の音楽を聴いていて思い浮かべるイメージとしては、見えない大きな絵みたいなものがあって、音の一撃が加えられることによってその一部分だけがチラッと見える。全体像はわからないし一撃一撃で見えるものは違うんだけど、なんとなく大きな絵みたいなものがあるんだなという印象です。

野口 作るときもそういう発想はしているかもしれない。視覚的に作ってますね。反復するとどんなに複雑でもここからここまでが一つのフレーズなんだなというのが聴いていてわかってくるじゃないですか。それを一つの形として捉えて、どう変化していくかということをやってみる。もちろん、モチーフとなるメインテーマをどう変奏させていくかということはもう何百年も前からやられている話ではあると思うんですけど、僕らは旋律の変化というよりはリズムの形。それをどう解体していくか、変形の瞬間やその過程についていろいろ考えている節がある。バラバラになったり欠けたり分離していったりというのがどうやったら聴覚的あるいは視覚的に面白くなるのかということをずっとやっています。

 つまらなくなるのは嫌だから

—— 空間現代は大学3年のときに活動を開始したと伺いました。

野口 もともと高校生のときもコピーバンドはやってました。でも大学に入ったときは便利舎というイベントを企画するサークルに入ったんですよ。毎日呑んだくれてただけという説もあるんですけど(笑)。まぁそんな風にして気づいたら単位を落としてしまい、恥ずかしながら留年がきまってしまいまして。サークルは引退するし同期の友達は来年卒業するしでつまらなくなるのは嫌だからなんか新しいことやりたいと思って、それでバンドやってみるかと。

そのときはあまり変な音楽は、というのもなんですけど、聞いてなかったんですよ。ちゃんとボーカルがいてメロディアス、エレキのギターとベースとドラムが入っているバンドものを聞いてました。でもほぼ同時期に、批評家の佐々木敦さんのJ-POPを考えるみたいな授業を受けたんです。そのときは佐々木さんが変な音楽というかマニアックな音楽を紹介している人だというのは全然知らなくて。J-POP論とか面白そうだと思って授業受けてみたら自分のレーベル(HEADZ)から出した新譜とかをかけまくってて、なんじゃこりゃみたいな。そこでいろいろな音楽を聴けたことで自分の音楽の裾野が広がっていった。それでデモテープを「これ聴いてください」って渡したら「出そうよ!」「マジすか、出してください!」って(笑) あ、でも3個目くらいのデモテープでようやく出そうよって言ってくれた気がするな。

 

音楽と芝居が並走している感じ

—— 地点とのコラボレーションのきっかけは?

野口 もともとうちのベース(古谷野慶輔:本学社会科学部卒)を筆頭に地点の芝居を見るのが好きだったんです。それで自分たちのイベントで地点に短い作品をやってもらえないかなと思ってダメ元でメールを送った。その日は本番があってダメだったんですけど、丁寧に対応してくれて。それで京都でライブをやる機会があったんで招待を出したらほぼ全員が来てくれて気に入ってくださって、「今度一緒にやろうよ」と。

最初に『ファッツァー』という作品を作ったときは、まず音楽を作ってくれと言われて1曲作りました。でもそれを芝居に使うというのはやっぱり無理だということになって。作った曲をさらに解体していろいろ削ぎ落として、音と音の間の空白にセリフが入るみたいなやり方で『ファッツァー』は作りました。かなりヤバい作品になってます。これは度々地点のアトリエ「アンダースロー」で上演されているので、未見の方は是非観た方がよいです。

地点とは音楽と芝居が並走している感じにできないかということに毎回トライしています。音楽は音楽で自分のリズムを取るけれど、芝居は芝居でやっているという関係性を基調とする。だから最初の作業としてはそれぞれバラバラに立ち上げます。地点は即興の稽古の中からシステムとかパターンとかを抽出していく感じで演出を練っていくのですが、これは空間現代の曲作りと似たところがあるな、と初めて稽古に参加したときに思いました。パターンやルールの確定にすごく時間をかけるという点で似ている。けれども、地点がやっているのはもちろん演劇だから、物語や言葉というものに真摯に向き合っていて、音楽畑の自分たちにはない発想や知恵を持っている。一緒に作品を作ることはとても刺激的だし、すごく勉強になっています。

今回の『ロミオとジュリエット』は地点との3作目の共同作業になりますが、作り始めは毎回頭を悩ませています。原作の戯曲を読む段階で何か曲を作らなければ合わせ稽古でやることがない。しかし、かといって物語に安易に寄り添う音楽を作ることはできないし、やってはならない。『ファッツァー』は未完の戯曲ということもあって、もともと物語が解体されているから言葉を詩として捉えられるので、入りやすかったというのはありますが『ミステリヤ・ブッフ』『ロミオとジュリエット』ともなると筋がある言葉で、物語。そうすると空間現代としては何を考えたらいいかよくわからなくなってくる。物語に向き合って音楽を作るなんてことはこれまでなかった訳で。けれども地点の芝居ができてくると、それらの言葉は解体・再構成されたものになってくる。そうなってからは曲を作るのも早い。というか、いつもギリギリだから早く作らなければならないという事情もあるんですが(笑)。しかしこれは地点の凄さだと思います。解体・再構成された後の方が、その物語のもつ核心や本質が現在性を伴って伝わってくる。だから曲を書きやすくなる。きっと地点とでなければ、『ロミオとジュリエット』はやらなかっただろうと思います。

空間現代の場合もまた、解体と再構成を念頭にこれまでやってきました。もちろんこの場合は物語ではなく、リズムの解体・再構成という意味ですが。だからメロディや旋律に関しては時としてないがしろになってしまいがちなのですが、地点とやる時はそのことを考える必要が頻繁に出てきます。『ミステリヤ・ブッフ』もそうだったのですが『ロミオとジュリエット』もまた、メロディのことは考えなければならない気がしています。演出の三浦さんからも、「政治的なラブソングを書け」とか「井上陽水みたいなの書け」とか「やっぱ山下達郎だろ」とか無茶ぶりが来ていて(笑)。でもそんなこと言いながら、リズム一辺倒になる可能性も大いにあるのですが…とにかく今回もギリギリまで作り続けるだろうから、まだ何とも言えません。

 

 知らなかったけど面白い音楽に会える

—— 今後の活動について教えてください。

野口 2016年に京都に引っ越して「外」というスペースを作りました。空間現代のスタジオでもあって、そういう意味では地点のアトリエ「アンダースロー」のパクリ(笑)。でも「アンダースロー」は基本的には地点の専用の劇場だけど、「外」は当初からライブハウスとして立ち上げたい、自分たちが出ない面白い音楽イベントを自分たちで企画したいと思ってました。「外」は空間現代というバンドのための場所でもあるけど、空間現代から独立したものでもある。

自分の好きなアーティストが出演するからそこのライブハウスに行くというより、そこのライブハウスに行けば知らなかったけど面白い音楽に会えるという方が、きれいごとかもしれないけど理想です。J-POPしか聞いてない人がいきなり空間現代を聞いても全然共感できないし、リズムにはノれないし、わからないことだらけだと思うんですよ。それは当然のことで、というのも、私たちは自分たちにとってもわからないものを作ってきたんです。それが面白いと思って今までやってきてるから、いろいろな人に届くはずだと思ってる。わからないものをわかろうとするのではなくて、わけわからないままにしてそれを迎え入れる愉しみ。それは誰もが感じられる経験だと思うんです。詩を読んで感動する、風景をみて感動するみたいなことは誰にでもあるはずなんで。

音楽の魅力というものは多層的で、様々な要素が複雑に絡み合っている。演奏者と聴衆と場所、それらの相互作用が音楽を支えている。だから私たちは作曲も演奏もするけれど、ライブハウスの運営もするし、いちオーディエンスとして誰かの音楽を聴くこともする。私たちにとって「外」は音楽を取り巻く様々な事柄を包括的に体験できる場だと思っています。それを糧に今後は今までやってみようとも思わなかったことに取り組んでいこうと企んでいます。たとえば最近、「外」で行うレパートリー作品として作った『擦過』という作品は1時間の長編楽曲なのですが、これもそうした試みの一つです。短い曲を複数演奏する普段のライブとは全然違ったものになっていて、使う頭も体も全然別物、今までにない感覚でした。作品によって体が形成される感じというか。まぁともあれ、このような感覚の刷新がバンドの成長を促すものと信じて、今後も新作をどんどん作っていく予定です。あと、「外」のイベントは空間現代以外の日もおすすめばかりですので、京都にお越しの際は是非チェックしてみて下さい。

(12月、早稲田大学6号館演劇博物館洋書閲覧室にて)

(聞き手・構成 : 演劇博物館 山﨑健太助手)

地点との2DAYSの翌日、1月22日(日)には六本木SuperDeluxeでミニマルミュージック楽団「東京塩麹」との2マンライブも控える空間現代。まずは大隈講堂にどんな音を鳴らすのか。必見&必聴!

 

空間現代

野口 順哉  Junya Noguchi(guitar / vocal)

古谷野 慶輔 Keisuke Koyano(bass)

山田 英晶  Hideaki Yamada(drums)

2006年、現行メンバー3人によって結成。編集・複製・反復・エラー的な発想で制作された楽曲を、スリーピースバンドの形態で演奏。これによるねじれ、 負荷が齎すユーモラスかつストイックなライブパフォーマンスを特徴とする。近年では演奏における一つの試みとして、並走する複数のグルーヴ/曲を行き来しながらも、ライブに流れる時間全体が一つのリズムとして立ち現れてくる様なライブ形態の構築と実践に取り組んでいる。先鋭的な他ジャンルのアーティストとのコラボレーションも活発に行っており、その集大成として2015年に連続公演『空間現代 collaborations』を主催。言葉/音/テクノロジーそれぞれの方面から演奏の再構築を行う。2016年9月、活動の拠点を東京から京都へ移し、自らの運営するスタジオ/ライブハウス「外」を左京区・錦林車庫前で開始する。

 

野口順哉

1985年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒。2006年、在学中にバンド「空間現代」を結成。ギターボーカルとして作曲に携わる他、作詞も行う。2009年にレーベルHEADZより1stアルバムをリリースして以降、精力的なライブ活動を続ける。2016年からは活動拠点を京都に移し、空間現代のスタジオ兼ライブハウス「外」をオープン。

 

地点『ロミオとジュリエット』

日時

2017年1月20日(金)19:00/21日(土)19:00 ※開場は開演30分前

会場

早稲田大学 大隈記念講堂
東京メトロ東西線「早稲田駅」3a出口徒歩5分
都営バス(学02:高田馬場~早大正門間) 早大正門停留所からすぐ

料金

一般 3500円

学生 2500円

早稲田大学 教職員割引 2500円 ※早稲田大学生協のみ取扱

早稲田大学 学生割引 1500円  ※早稲田大学生協のみ取扱

※全席自由席・整理番号付

申込方法

地点 TEL. 075-888-5343 http://chiten.org/reservation/

早稲田大学生協 TEL. 03-3202-4019

ローソンチケット TEL. 0570-000-407 http://l-tike.com/chiten_rj/ [Lコード:32601]

チケットぴあ TEL. 0570-02-9999 http://t.pia/jp/ [Pコード:455-662]

 作

ウィリアム・シェイクスピア

翻訳

中野好夫

演出

三浦基

音楽

空間現代

出演

安部聡子、石田大、小河原康二、窪田史恵、河野早紀、小林洋平、田中祐気

主催

合同会社地点

共催

早稲田大学

助成

芸術文化振興基金

お問い合わせ

合同会社地点 京都市左京区北白川久保田町64-22

TEL 075-888-5343 MAIL info@chiten.org

Dates
  • 0120

    FRI
    2017

    0121

    SAT
    2017

Place

早稲田大学 大隈記念講堂

Tags
Posted

Thu, 19 Jan 2017

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