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キャンパスのイチョウを見つめて~早稲田文化芸術週間のクイズから

イチョウの葉に込められた想い

——早稲田文化芸術週間「ミュージアムワードパズル」と「ワセダベアを探せ!」から

 今年の「早稲田文化芸術週間」は、多くの方々にご参加いただき、キャンパス全体が文化と笑顔に包まれました。大隈ライブでは、多彩なパフォーマンスが繰り広げられ、外国人留学生をはじめ多くの来場者が国や言葉を超えて交流する姿が印象的でした。

重松清 特別講義「最初で最後の特別教室『それでも僕らは、ことばでつながっている』」では、今年度末をもって退任される重松清先生が登壇。満席となった大隈講堂で、小学生から社会人まで幅広い世代の読者が熱心に耳を傾けました。
早稲田大学歴史館で開催された企画展「安部磯雄と早稲田大学野球部の125年」と連動した「ART PIECE PROJECT~感じて、つながる、アートのかたち~」では、多くの方から展示や野球部へのメッセージをいただきました。
そして大学キャンパスを飛び出して開催された講演会「今井兼次とスコットホール」。会場のスコットホールは、今井兼次がウォーリズ、内藤多仲らとともに設計した建物であり、恩師ゆかりの場所で、藪野健先生が恩師・今井兼次先生への思いを語りました。
さらに、オンライン企画「WASEDA BOOKSTORES VR WORLD~早稲田古書店の風景~」では、地域の早稲田古書店街と連携協力し、仮想空間で“馬場歩き”をして古書店に入店できるようなWEBサイトを発信するなど、早稲田の多彩な文化と芸術を感じられる期間となりました。

その中で、文化推進学生アドバイザーが企画した「ミュージアムワードパズル」と「ワセダベアを探せ!」も好評を博し、それぞれ500を超える方が参加されました。今回の答えは、「ガーデンハウスとへいわきねんひ(平和記念碑)」、そして「いちょうのは(葉)」でした。一見すると身近な言葉ですが、実は深い意味を込めています。

大隈ガーデンハウスへ向かう道に、静かに立つ碑

「ミュージアムワードパズル」の答えにも登場した“平和記念碑”は、早稲田キャンパスの大隈ガーデンハウスへ向かう途中に建てられています。この碑は、戦時中に学徒として戦地へ赴いた早稲田大学の学生たちを追悼し、平和を祈念して1990年に建立されたものです。

ガーデンハウスに続く道には平和記念碑がある

1943年9月、東条英機内閣が文系学部生の徴兵を決定したことで、学びの場であった早稲田大学からも、約4500名の学生が出征の対象となりました。同年10月、キャンパスで行われた学徒出陣壮行会で、当時の田中穂積総長は学生に向けてこう訓示しています。

「今こそ諸君がペンを捨てて剣を取るべき時期が到来した」
「勇士は出陣に当って固より生還は期すべきでない」

早稲田大学百年史第三巻第七編第十二章

学徒出陣壮行会1(戸塚道場。田中穂積総長訓示)1943(昭和18)年10月15日(早稲田大学写真データベース)

翌年には戦況の悪化により徴兵年齢が引き下げられ、キャンパスから学生の姿が消えました。
静まり返った校舎を見つめた文学部の女子学生・宇都宮(堂園)満枝さんは、その光景を一首の和歌に詠みました。

「征く人のゆき果てし校庭に音絶えて 木の葉舞うなり黄にかがやきて」

早稲田大学百年史第三巻第七編第十二章

秋の風に舞う黄金のイチョウの葉と、静まり返った校庭。その情景が、去った学生たちへの鎮魂の祈りとして平和記念碑の裏面に刻まれています。終戦までの期間において、早稲田大学の学生は4736名が戦没したとされており、1990年に平和記念碑の建碑の際に、名簿が埋葬されました。

「ワセダベアを探せ!」の答えに込めた思い

もう一つのクイズ「ワセダベアを探せ!」の答え「イチョウの葉」には、この和歌への想いが込められています。
キャンパスを象徴するイチョウは、毎年秋になると鮮やかな黄金色に染まり、早稲田の四季をやさしく彩ります。早大生は、その色づきに秋の訪れを感じ、早稲田祭の時期には、黄金の並木がキャンパスをいっそう華やかに照らします。しかし同時に、この葉は、かつてここで青春を過ごした学生たちの記憶と命、そして平和への祈りを静かに語りかける存在でもあります。

平和記念碑のキャプション

足元の「記憶」とともに、未来へ

2025年。終戦から80年、そして平和記念碑の建立から35年。
時間の流れとともに、戦争の記憶は少しずつ遠のいています。
それでも、碑の前に立ち、刻まれた文字を見つめるとき、当時の学生たちが抱いた不安や誇り、そして平和への願いが確かに伝わってきます。

過去を変えることはできません。しかし、歴史を学び、過去と対話し、語り継ぐことで、私たちは未来を創り出すことができます。
キャンパスの片隅に立つこの碑は、今日も静かに語りかけています。
――「平和は、あなたの足元から始まる」と。

執筆:文化推進学生アドバイザー 鹿沼万由子・田頭和将

大隈講堂とイチョウが聳える紺碧の空(撮影:福森慎太朗)

参考文献:

 

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問い合わせ

早稲田大学文化推進部文化企画課
E-mail: [email protected]

早稲田文化芸術週間 2025 -CULTURE&ART WEEK-

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