キーワード『正門の面影残す門柱』と『無門の門』について迫る
「Museum Week」は楽しんでいただけましたでしょうか。今回の「ミュージアムワードパズル」「ワセダベアをさがせ!inミュージアム」のキーワードは、『正門の面影残す門柱』、『無門の門』。これらを選んだ理由をご紹介します。2つのキーワードは、一見対照的ですが、どちらも早稲田大学の“門”をめぐる歴史と理念を象徴しています。
- 画面をクリック!
- 画面をクリック!
『正門の面影残す門柱』
「正門」「面影」「門柱」――並んだ言葉に惹かれた方も多いのではないでしょうか。
今回のキーワード「正門の面影残す門柱」は、早稲田大学1号館に設置された“旧正門の門柱”に由来しています。
早稲田大学歴史館がある1号館は、法学部の校舎として1935(昭和10)年に建設されました。歴史館入口には、明治期に正門となっていた門柱を加工した一対の御影石円柱があり、本学の歴史を伝えています。早稲田大学草創期の息吹を今日に伝えるこの円柱は、歴史を明日に伝える早稲田大学歴史館の象徴と言えます。今なお早稲田大学の学生や地域を静かに見守り続けているのです。
1号館が東京都選定歴史的建造物に選定
2024(令和6)年12月25日、早稲田大学1号館は東京都選定歴史的建造物に選定されました。これは、東京都が良好な景観と歴史を未来に残すために進めている取り組みで、早稲田大学では會津八一記念博物館(2号館・旧図書館)に続いて2例目となります。この嬉しいニュースを広く知っていただくとともに、1号館と深い関わりのある「旧正門の門柱」に注目していただきたく、今回のキーワードを設定しました。
『無門の門』
「無門の門」、あるいは「門のない大学」という言葉をご存じでしょうか。これは、早稲田大学が掲げる“開かれた学問”の理念を象徴する表現です。
早稲田キャンパスは、学生・教職員・校友だけでなく、地域の方々も自由に行き交い、にぎやかで開放的な雰囲気に包まれています。「門のない大学」という姿は、早稲田の街に溶け込み、地域とともに歩む大学としての早稲田大学の在り方を体現しているのです。
早稲田大学の正門の歴史
ここで、早稲田大学正門の変遷を振り返ります。
早稲田大学草創期の正門は、現在の「南門」のあたりにあったようです。現在、たくさんの早大生が行き交う南門の位置に当時の正門があったことを想像してみると、草創期の早大生と同じ道を歩んでいるように感じられます。
1925(大正14)年に、正門は、現在の「通用門」の位置に少し移動して、4本の柱と鉄柵状の扉によって構成されるようになりました。神楽坂方面とつながっていたようです。当時の早大生は”馬場歩き”ならぬ、”神楽坂歩き”していたのでしょうか。
1935(昭和10)年、正門は私たちの知る現在の位置に移されました。このように早稲田大学の正門は少しずつ動いてきたようなのです。現在の正門は、大隈記念講堂と大隈銅像を結ぶ早稲田大学を象徴するようなエリアとなっています。
また、「早稲田大学百年史」に正門について、次のような記述があります。
「大学の正面入口から門柱や門扉が追放され、門のない自由な学苑の象徴として誇られるようになった」、「今日の正門が完成した昭和十年に門柱と扉を取り払い、爾来、学苑は門によって町場と区切るという形をとらなかったので、きわめてオープンなキャンパスのあり方のうちに早稲田大学=自由な大学とする見方が芽生えてきた。」
このように、「無門の門」という言葉は、単なる比喩ではなく、実際の正門の姿から生まれた早稲田の理念を表すものといえます。このような背景から、今回のキーワードに選びました。
早稲田大学正門の現在

現在の正門。夜間早朝は引き戸式アコーディオン型ドアで閉まっている。
現在の早稲田大学正門には、引き戸式でアコーディオン型の開閉ドアが設置されています。階段は無くなりバリアフリー化され、門柱がないことで、開放的な印象を受けます。普段、正門付近は待ち合わせ場所として使われたり、キャンパスツアーで訪れた人々が写真撮影したりと、賑やかな様子です。また、キャンパス内では、近隣にお住まいの方々や幼稚園児がお散歩している様子も見かけます。まさに自由な大学を体現した姿が拡がっています。
早稲田大学歴史館を訪ねてみませんか!
早稲田大学歴史館の入口を入ると、「ワセダベア」が来館者を出迎えてくれます。日付入りのプレートもあり、来館の記念撮影にぴったりです。左手には「カフェ・クリオ」があります。コーヒーや紅茶、レモネードなどドリンクメニューが豊富で、早稲田大学珈琲研究会が考案したブレンドコーヒーも味わえます。右手には、ミュージアムショップがあり、人気の早稲田グッズも購入できます。廊下を進み、右に曲がるといよいよ展示エリアへ。3エリアに分かれた常設展示と企画展示がありますが、私たちのお気に入りは、「久遠の理想」エリアにある大隈重信の肉声が聞けるコーナーです。体験型の展示もあり、楽しみながら早稲田大学の歴史や現在に触れることができます。ぜひ早稲田大学歴史館をお楽しみください。
早稲田大学文化推進学生アドバイザー(石井智貴、鹿沼万由子、坂口祐彩菜、福森慎太朗)
参考リンク
早稲田大学歴史館
今はなきあの風景―キャンパスの変貌① 大学正門の変遷(早稲田ウィークリー 2012年10月)
早稲田の象徴「無門の門」の開閉時間(早稲田大学 2016年5月)