演劇人が語る 早稲田と演劇
まさに今、舞台で活躍する演劇人に、早稲田演劇の魅力や、演劇への思いをお聞きしました。
演劇は世の中を見る手段だが、世界は演劇だけではない
神里雄大
私は、早稲田に入ったことによって演劇と関わるようになったので、もしも早稲田にいなかったら今この仕事をしているかわからない。大学時代は主にサークルの人たちと、稽古をして公演をして、飲んで演劇の話をして、融通のきくバイトの情報を交換して……というように、生活の中心に演劇があった。それは有意義だったし、今の自分の原点とも呼べる日々だった。けれども同時に、(今となっては)もっと広い世界を見ておけばよかったと思う。演劇は世の中を見る手段として有効かもしれないが、いっぽうで世界は演劇だけではない、という至極あたりまえのことを、濃密な早稲田演劇の世界にいた自分は知らなかった。数多くの劇団、伝統ある歴史と環境は、その中だけで完結できてしまうという深さと危うさを持つようにも感じる。用意された環境を飛び越えて、学割をうまく使って、さまざまな土地や文化、言語に触れて自分の世界観を広げてもらえるといいんじゃないかと思います。
Profile
かみさと・ゆうだい
作家・演出家。「岡崎藝術座」主宰。1982年生まれ。2005年第一文学部卒。在学時に、岡崎藝術座を結成。今年12月に複数都市にて新作ツアーを予定。