世界のハブとなる教育・研究拠点を目指して 研究推進担当理事インタビュー

Special Report

ワールドクラスの教育・研究大学へ。
世界とつながる早稲田の研究

国際的な教育・研究のハブを目指して教育・研究力の強化に取り組む早稲田大学。

2012年に策定した中長期計画“Waseda Vision 150”の中でも「国際教育・研究大学への躍進」を掲げ、大学をあげて教育・研究力の向上に取り組んでいます。

また、文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援」に採択された“Waseda Ocean 構想”では、国際的に競争力のある6研究分野に先行投資することで教育・研究力の底上げを図ると明示しました。

いま早稲田で最もアツい「研究」について、改めて取り上げます。

Interview

世界のハブとなる教育・研究拠点を目指して

早稲田大学が行ってきた研究戦略やこれまでの成果、今後の展開について、研究推進担当理事の石山敦士理工学術院教授に伺いました。

教育・研究力の強化を図り社会課題の解決に寄与する大学の使命を果たす

―― 研究力の強化に向けた早稲田大学のこれまでの動きを教えてください。

2004年の国立大学の独立行政法人化を契機として、国から大型の助成金が多数提示され、国公私立大学が同じ土俵でしのぎを削る競争の時代へ突入しました。同時に、産業・経済のグローバル化や環境問題の深刻化といった地球規模での社会課題の解決に貢献するグローバルリーダーの育成や高度な研究活動など、大学に対する社会の期待が一層高まり、大学として組織的に研究力の向上を図る必要が出てきました。

早稲田大学は、2008年に策定した“Waseda Next 125”の柱の一つに「研究の早稲田の飛躍」を打ち出し、組織的に研究戦略を進めることで大学全体の研究レベルを引き上げる全学的な取り組みを始めました。具体的には、2009年4月に組織的な研究活動を推進する「研究院」と、研究戦略の企画立案と研究マネジメントを任とする「研究戦略センター」を設置しました。研究戦略センターにはURA(リサーチ・アドミニストレーター)を配し、科学技術政策動向や研究動向の調査・分析、大型の外部資金獲得支援、研究成果のアウトリーチなどの活動を行っています。2012年には“Waseda Vision 150”を策定、創立150周年を迎える2032年に向けた中長期計画を社会に提示し、世界の平和と人類の幸福の実現に向けた研究力の向上に取り組んでいます。こうした全学的な動きが進んだことで、それまで研究者個々、チーム、学部・研究科など、さまざまな単位で行っていた共同研究や産学連携に拍車がかかり、早稲田大学の研究力は飛躍的に向上しています。

※ URA(University Research Administrator):研究者の研究活動活性化のための環境整備および大学などの研究開発マネジメント強化などに向けた研究マネジメント人材。

―― 具体的な成果はいかがですか。

このたび文部科学省が過去5年間の科学研究費助成事業(以下、科研費)の採択実績を調査したデータが公表されました。本学は「政治学」「民事法学」などの10研究分野が採択件数1位となり、私立大学の中ではトップの実績です。科研費は大学に所属する研究者の実績を最も公平に評価する指標とも言えますので、採択件数が多いことは、優れた研究者・チームによって質の高い研究が行われている証あかしの一つと言うことができます。過去5年間では、本学が最も科研費の採択件数が伸びています。さらに、科学技術・学術政策研究所が1997 〜2001年と2007年〜2011年の論文数の伸び率を算出した2012年のレポートが発表されました。そこでも、本学は論文数で70%増、被引用数では119%増と、量・質ともに一番の伸び率を見せており、研究成果という点でも本学の研究力が世界的に評価されていることがわかります。

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国からの大型助成金事業では、国際的に卓越した教育研究拠点を形成する「グローバルCOEプログラム」(2007 〜2009年)で8件、大学院教育の抜本的改革に向けて新しい学位プログラムを構築する「博士課程教育リーディングプログラム」(2011 〜2013年)で2件が採択されました。グローバルCOEプログラムなどの事後評価・実績が非常に良い大学を選抜する「卓越した大学院拠点形成支援補助金」(2012 〜2013年)でも全国公私立大学の中で6番目という非常に高い評価を得ています。

※ 科学研究費助成事業(科研費):人文・社会科学から自然科学まですべての分野で募集。研究者の自由な発想に基づいて提案して良く、大学に所属する研究者はすべて対象となる。公平かつ平等に研究力を評価する指標として、研究助成金の選別基準の一つに用いられることが増えてきている。

アジアを代表する国際教育・研究大学へ

―― 早稲田の教育・研究力の強み、および優れている点は何でしょうか。

総合大学である早稲田大学は多くの強い研究分野を有しています。「QS WorldUniversity Rankings by Subject 2014」では、36位の「Modern Languages」を筆頭に、人文社会科学系と理工系の5つの研究分野が100位以内にランクされています。これほど世界から研究力を高く評価されている日本の私立大学は早稲田大学がトップと言っても過言ではありません。さらにこのような専門性の高い研究分野を基軸に学際的な研究を進めていることが、早稲田大学の最大の強みと言っても良いでしょう。

この強みを生かし、教育・研究の国際化をさらに進めるため、「スーパーグローバル大学創成支援」(2014 〜2023年)において、これまでの研究実績を踏まえ先行6モデル拠点(実証政治経済学、健康スポーツ科学、ICT・ロボット工学、日本文化学、数物系科学、ナノ・エネルギー材料)を選定しました。このモデル拠点にまず集中投資を行い、国際評価をさらに高めることで他分野の教育・研究力を底上げし、10年以内に18研究分野で世界100位以内を目指します。6モデル拠点においてはすでに世界トップクラスの大学と密接に連携していますが、海外の教員・研究者を受け入れるためのジョイント・アポイントメント制度などを整えることで人材の流動性を促進し、早稲田大学を世界の中の教育・研究のハブにしようとしています。これにより“WasedaVision 150”をさらに加速させることができると期待しています。

※ ジョイント・アポイントメント制度:複数の機関に所属し、双方から報酬を得ることを可能にする制度。

cn215p7b―― 国際教育・研究大学に向けた特徴的な取り組みは何ですか。

私たちは、世界においてアジアを代表する国際教育・研究大学としての地位を確立し、「早稲田で学びたい」「早稲田と共に研究したい」と国際社会から求められるような存在を目指しています。世界トップクラスの研究には資金が必要ですし、それを担う若手研究者を育成しなければなりません。文部科学省「研究大学強化促進事業」(2013 〜2022年)の採択を機に、研究力強化に向けた次の3つの基本方針を定め、研究力強化実現構想を策定し、進めています。

―― 次代を担う若手研究者の育成についてはどのようにお考えですか。

国際教育・研究大学としての地位を確立するためには、将来の研究の核となる若手研究者の育成が重要です。例えばロボット工学分野では、世界初の二足歩行ロボットやつくば万博の音楽演奏ロボットで著名な加藤一郎先生が核となり、その流れを受け継いだ先生方が現在の核となって「早稲田の中にロボット研究あり」と言われるチームを構成しています。そういう次の早稲田の高い研究力を支える担い手となる研究者を増やしたいですし、大学として育成しなければなりません。しかし本学の研究者の年齢分布を見ると、最も研究者として脂がのってくる35 〜45歳くらいの年齢層が薄いのが現状です。強力な研究チーム・拠点の創設、外部資金獲得の促進、研究に専念できる環境の整備により、若手研究者を育成し世界と伍する人材を輩出する「研究成長スパイラル」をいろいろな分野で形成しようとしています。

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2015年度より、「次代の中核研究者育成プログラム」をスタートします。これは次代のスタープレーヤーである若手研究者の研究を推進すると同時に、チームで研究を進めるスキルや研究環境などのマネジメント力の涵養、あるいは国際共同研究を進めるためにURAを配置するなど、大学をあげて支援するプログラムです。初年度は理工系、人文科学系、社会科学系、学際系から4名の研究者を選出しました。これは長期的に継続していくもので、今後も年間10名程度を支援する予定です。

どんなに国際化が進んでも、社会のために汗を流す“早稲田らしさ”は不変

―― 最後に、読者へのメッセージをお願いします。

私たちが目指しているのは、アジアを代表する国際的な教育・研究大学として認知され、世界中の学生・研究者が早稲田大学を目指してやってくる国際的な教育・研究のハブとなる大学です。しかしどれだけ国際化が進んでも、社会のために汗を流すことのできる早稲田らしい人材を育成するという根本は、変わらずに受け継いでいく覚悟です。

早稲田大学 理事(研究推進担当) 石山敦士 理工学術院教授

1977年早稲田大学理工学部電気工学科卒業、1983年同大学院博士後期課程修了。工学博士。1983年早稲田大学理工学部専任講師、1985年同助教授を経て1991年同教授。研究推進部長、先進理工学部長、先進理工学研究科長、研究戦略センター所長、重点領域研究機構長などを歴任。2014年11月より現職。

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