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量子技術の研究開発から社会実装までを一気通貫で加速
統合報告書 -Vision Report- 2023-2024
Mon 12 May 25
統合報告書 -Vision Report- 2023-2024
Mon 12 May 25
早稲田大学の学術研究や教育は、そのどれもが人類社会に貢献するためにあります。
世の中にインパクトをもたらす先端的・独創的な研究から、全学共通の文理を超えた教育への取り組み、そして学生たちがキャンパス内外で重ねる日々の挑戦まで、早稲田大学ではさまざまな活動が展開されています。
その中でも社会的インパクトの強い活動内容とその成果を報告します。
※本記事は、「統合報告書 -Vision Report -2023-2024」からの記事です。



ハイインパクトな研究事例
量子技術の研究開発から社会実装までを一気通貫で加速
情報技術に変革をもたらすことが期待される量子技術の研究開発が世界で活発化しています。
「早稲田大学量子技術社会実装拠点(略称QuRIC キューリック)」拠点長の戸川望教授、副拠点長の青木隆朗教授に、拠点の特色や展望を聞きました。
QuRICの設立経緯を教えてください
戸川
量子技術は、複数の分野が連携しなければ進展し得ない領域といえます。ハードウェア、ソフトウェア、アプリケーション、ネットワークの各分野の融合を進め、社会実装を目指す総合型研究開発拠点として開設されました。
青木
戸川先生は量子ソフトウェア・アプリケーション研究で世界でも最先端を走っておられます。そして私は早稲田発の独自技術に基づく新方式の量子ハードウェアの研究を進めています。学内に量子ハードウェア、ソフトウェアの両方の技術シーズが揃っていて、連携しない手はありません。
戸川
量子技術に関係する学内の研究者が連携の必要性を強く認識し、自発的に立ち上げへと至ったことも、本拠点の特色です。
拠点からはスタートアップ2社が輩出されています
背景や意義とは
青木
量子コンピュータハードウェアの開発を行う株式会社 Nanofiber Quantum Technologies(NanoQT)を2022年4月に立ち上げました。欧米を中心に大学の研究者が量子技術のスタートアップを起こし、巨額の投資を集めて研究を加速させるケースが増えています。これに後れをとってはならないという使命感に加えて、日本の若手研究者に新しいキャリアの選択肢を提供したいとの思いもありました。
戸川
2022年10月に量子アルゴリズムの研究開発と実用化を手がける株式会社Quanmaticを設立しました。私はこれまで、研究成果を論文発表することを1つのゴールと捉える一方で、これでいいのかと自問もしていたんです。
社会実装の場をもった今、研究室で生み出してきた技術がプロダクトとなり、実際に企業のシステムに導入されています。非常にエキサイティングですし、自分の力だけでは実現できなかったことです。
青木
NanoQTには量子物理の分野で博士号を取得した優秀な研究者が集まり、世界トップレベルの研究チームになっています。若手研究者に魅力あるキャリアパスを示すという、設立目的の一つを果たせていると感じます。
研究の展望や量子技術の可能性を教えてください
戸川
量子技術が社会のありとあらゆるところに使われる未来が実現したとき、今と何が変わるのか。一言でいうなら「判断の圧倒的な速さ」です。
青木
物流の最適化など用途は多岐にわたりますが、共通点はそこですね。複雑な問題を従来のコンピュータより高速に解くことが可能になります。目指す新方式の量子ハードウェアの実現には息の長い研究が必要です。アカデミアと産業界との連携をさらに強め、社会実装に邁進していきます。
戸川
本拠点の取り組みは、早稲田大学が掲げる「教育」「研究」「貢献」を三位一体で進めるモデルケースになると考えます。産学官の協調のもと量子技術の社会実装を加速させ、皆さまからのご支援やご期待にお応えしてまいります。
戸川 望TOGAWA Nozomu

早稲田大学量子技術社会実装拠点 拠点長
理工学術院
基幹理工学部 教授
青木 隆朗AOKI Takao

早稲田大学量子技術社会実装拠点 副拠点長
理工学術院
先進理工学部 教授
「統合報告書 -Vision Report -2023-2024」

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