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総長と早稲田の未来を語ろう
学生との対話会を開催
Tue 09 Jan 24
学生との対話会を開催
Tue 09 Jan 24
12月18日(月)、田中総長と、学部1年生から博士学生までの在学生約80名との対話の会が開催されました。学生が総長と直接対話する機会は、2018年に田中総長が就任したとき以来、約5年ぶりでした。
現在の大学4年生は特に、入学した年にコロナ・パンデミックが蔓延し始めた時期と重なり、ほぼ3年間は不自由な生活を強いられ、満足できる学生生活を送ることができなかったのではないか――そのことに関して、総長の申し訳なかったという気持ちから、少なくとも4年生の卒業前には、総長が少しでも学生との対話をして、気持ちを直接に聞いておきたいという思いで企画されたのが、今回の対話でした。

学生が輝く早稲田の未来へ
会のはじめに、田中総長は創立者大隈重信の言葉を引用し、学生へ語りかけました。
“ 一身一家、一国の為のみならず、進んで世界に貢献する抱負が無ければならぬ”
早稲田大学は、研究・教育・貢献の3つを柱に、人類社会のニーズにこたえる教育研究を目指し、真のグローバルリーダーを育成し、『世界で輝くWASEDA』を実現する
コロナへの対応として、危機管理の原則である「最大のダメージを最小にとどめるMinimizing Maximum Regret」と、国際連合が掲げるSDGsの理念の一つ「誰一人取り残さない No one will be left behind」に沿った施策を進めてきたことについても触れ、早稲田大学の未来をこれからも学生と共に考えていきたい、と話しました。

学生から総長への質問
Q: 教育学部の新たな拠点として9号館の建設計画があると聞いています。教員を目指す学生が少なくなっている現状について、「教育」および「教育学部」に対するお考えや思いを伺いたいです。
A: 教育学部は教育学科から国語国文、英語英文、社会科、地理歴史、さらには理学、生物学、数学科などまで様々な学科・専修があり、最も学際的な学部であると言えるでしょう。文理横断での学びもしやすく、ここから文系と理系の壁を越える学生が育ってほしいと考えています。新しい建物の完成や環境の変化が、「学び」のあり方を変え、本学の教育学部が大学教育のあり方を抜本的に変える一翼を担うことを期待しています。
Q: 教育研究に力を入れているという話がありましたが、学生の心身の健康があってこそ、それが前提のことであると思いますが、メンタル不調による休学をしていて、なかなかそのように取り組めていない学生も一定数いると認識しています。大学として、この“メンタルヘルス”の課題にどのように取り組まれていくか考えていますか。
A: コロナ禍においても、やはり社会的弱者ほど苦しむことが、調査結果として示されています。こうした課題への対応が後手に回っている現状を認識しており、現在も改善を試みています。本学では、アクセシビリティ支援センター(11月までは障がい学生支援室)を設置し、また保健センターの臨床心理士も増員するなど、対策を進めています。特に英語や中国語でカウンセリングができる臨床心理の専門家も必要で、そういう人は数が少ないのですが、今後もニーズに応えるよう、努力していきます。
Q: 大学に入学し、女性教員の少なさを感じました。入学式で壇上に登壇された学部長の方々は男性ばかりでした。Waseda Vision150の中でも女性教員の比率を2032年までに30%とするとされていますが、この目標は低いように感じます。
A: 学生と職員については、ある程度女性も増えてきましたが、教員についてはまだまだ少ない状況が続いております。背景には、日本社会での様々な障壁もあります。本学では、教職員や研究者が優先的に利用できる託児所の開設などをはじめとして、女性が安心して研究や教育に携われる環境の整備を進める必要があると思います。目標達成に向けて具体的な方策を引き続き検討していきたいと思います。
Q: 私たちが直面しているさまざまなグローバルな諸課題、特に温暖化などについて、本学が取り組んでいかなければならないと話されていましたが、実際に関わっている学生は少ないと感じています。持続可能な社会の実現とSDGsの達成のため、私たち学生がより深く学び、取り組んでいけるようにするため、大学で取り組もうとされている具体策は何でしょうか。
A: 世界規模の環境問題や社会課題に対処し、文理の枠を超えて早稲田大学の研究力を結集していくため、すなわちカーボンニュートラルの実現を目指し、2021年11月にカーボンニュートラル宣言(Net Zero Challenge)を発表し、2022年12月にはカーボンニュートラル社会研究教育センター(WCANS)を設立しました。カーボンニュートラルをテーマにした副専攻科目も2022年度に新設され、大学院生を対象としたプログラムの展開も予定されています。あなた自身が、この「カーボンニュートラルを実現する人材」にぜひなっていただきたいと考えています。
Q: 本学で英語学位プログラムを学ぶことの意義をどう考えればよいでしょうか。この英語学位プログラムの卒業生だからこそできるユニークな世界貢献はあるのでしょうか。
A: 日本で英語”で”学ぶことは、ご自分の専門分野での自分の考えを海外の人に伝える力を養うことができるようになります。つまり、すぐにでも、いつでも世界で活躍できる人材になり得ると考えています。これにより国際的な頭脳循環を促進できると考えています。また、将来的には、世界を広く理解し、視野を広げる機会を提供する一環として、全学部で自身の専門科目のうち数科目を英語で学ぶことが必須となるようにしたいと考えています。

Q: 入学してからずっと考えているビジネスプロジェクトがありますが、学生が何かをやりたい、実現したいと思ったときに、どうしたら実現できますか。
A: すでにスタートアップとして、本学からビジネスを始めた学生は多くいます。起業を考えている学生や教職員、校友(卒業生)の皆様に対して支援を行うために「アントレプレナーシップセンター」が設置されています。本センターでは、日々さまざまな学生同士の交流も行われているので、そのセンターを訪れて、ぜひ仲間を見つけ、活用してください。
Q: 本学の国際競争力を高めるには何が必要と考えていますか。留学を1年経験した際、出願書類のサポートがなく苦労しました。また、英語の文献へのアクセスが難しく、海外の大学と比較しても改善の余地があるのではないかと感じました。
A: 貴重なご意見ありがとうございます。国際競争力向上は重要な課題として受け止めており、利便性を高めるための改善に向けて検討していきます。
Q: スチューデントダイバーシティセンター(GSセンター)の学生スタッフとして活動しています。その中で、LGBTQやAllyという言葉は知っているが、「自分の近くにはいないだろう」という考えや雰囲気を強く感じています。それを変えていきたいと考えており、今後、学内での実態調査を予定しています。そこで、ダイバーシティやインクルージョンについてどうお考えですか。
A: 本学はダイバーシティとインクルージョンに関しては、日本の大学では最先端の大学ではあると思いますし、早稲田ではどの学生にも居場所があるという学生文化の伝統があります。ですが、国際的に見れば、現状の取り組みではまだ十分ではないと考えており、そのため、実際に出会ったことがあるにもかかわらず、「LGBTQ+の学生に会った経験が極めて少なく、どのような人たちなのか分からない」と言うような学生が一定数存在するのが実態だと思います。「誰もが対等であるべきだ」という理想を推し進めるには、大学がより主体的にダイバーシティの尊重・推進を更に努めていく必要があると考えています。

参加学生の声
― 学生の意見を温かく受け入れてくださる姿勢が、当初の「総長」「壇上にいる先生」という堅い印象から変わりました。質問に対して大学の「課題」であると認識してくださったことで、大学への期待が上がりました。
― 学生からの質問の挙手が非常に多く、残念ながら自分の質問をする機会はありませんでしたが、もっと学費のことや100分授業、最近の大学の方針の変更点などについて直接聞いてみたかったです。また機会があればぜひ参加したいと思います。
― 総長のご経験や大学のビジョンに関する話が聞けて良かったです。また、自分と同じ学生たちが様々なことを考え、実際に行動をしていることも大きな刺激になりました。自分自身も変えられることがあるのではないかと感じ、行動していきたいと思うことができました。
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