早稲田大学文学学術院の前身・東京専門学校文学科の創設者で、近代日本文芸の父といえる坪内逍遙博士の業績をたたえ、文芸・芸術などの幅広い分野で貢献した人物・団体を顕彰する「早稲田大学坪内逍遙大賞」の受賞者が決まり、大賞には野田秀樹氏が、奨励賞には円城塔氏が選ばれましたので、お知らせいたします。受賞者には正賞として表彰状、副賞として記念メダルおよび大賞受賞者には100万円、奨励賞受賞者には50万円を贈呈いたします。授賞式は11月16日(水)午後6時からリーガロイヤルホテル東京において行います。
野田秀樹(のだ・ひでき)氏授賞理由
野田秀樹氏は、現代社会を舞台上に劇化するにあたり、単に社会に内在する問題を提起するに留まらず、日本の古典文学やギリシャ神話など多様な世界観を織り込み、知的にもヴィジュアル的にも豊かな、また、独特の言葉遊びやスピーディな動きを特徴とするエンターテインメント性にも富んだ作品を次々に発表し、常に高い評価を得てきた。さらに、1987年に『野獣降臨』がエジンバラ国際芸術祭で高評価を得て以来、英国演劇界とのコラボレーションにおいても高い成果を上げ続けるなど、国際的にも活躍しており、坪内逍遙大賞に相応しいと判断し、大賞と決定した。
野田秀樹氏プロフィール
1955年、長崎県生まれ。劇作家・演出家・役者。東京芸術劇場芸術監督、多摩美術大学教授。東京大学在学中に劇団夢の遊眠社を結成し、数々の名作を生み出す。92年、夢の遊眠社解散後、ロンドンに留学。帰国後の93年に企画製作会社NODA・MAPを設立。以後も『キル』『パンドラの鐘』『オイル』『赤鬼』『THE BEE』『THE DIVER』『パイパー』『ザ・キャラクター』『南へ』など次々と話題作を発表。中村勘二郎丈と組んで歌舞伎『野田版 研辰の討たれ』『野田版 鼠小僧』『野田版 愛陀姫』の脚本・演出も手掛ける。演劇界の旗手として国内外を問わず、精力的な活動を展開。2009年10月、名誉大英勲章OBE受勲。2009年度朝日賞受賞。2011年6月、紫綬褒章受章。2012年1月~6月、『THE BEE』WORLD & JAPAN TOUR公演予定。
円城塔(えんじょう・とう)氏授賞理由
円城塔氏は、該博な自然科学の専門的知識と、幅広い文学的素養に支えられた独創的な小説の世界を創り出しつつある。その作風はしばしば極めて難解と評されるが、SF、ファンタジー、メタフィクション、哲学的思考実験などの様々な領域を自由に探索しながら、この数年の間に思弁(スぺキュラティヴ)小説(・フィクション)の未踏の分野を切り拓いてきた筆力には目覚ましいものがある。『鳥有此譚』『道化師の蝶』『これはペンです』などの作品は、小説の新たな可能性を示すものとして読者を十分に驚かせたが、この才能はこれからどこに突き進んでいくのだろうか。今後のさらなる展開に大いに期待したい。
円城塔氏プロフィール
1972年北海道札幌市生まれ。東北大学理学部物理学科卒業。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。各種研究員を経て、2007年よりウェブ・エンジニア、2008年退職。「オブ・ザ・ベースボール」で2007年第104回文學界新人賞、『烏有此譚』で2010年野間文芸新人賞。