世界デジタル政府ランキング2021年度版公開
発表のポイント
デンマークが1位奪還、COVID-19で主要国のデジタル化が急進
日本は国民視点の利便性のデジタル化欠如で9位に下降、今後のデジタル庁に期待
早稲田大学電子政府・自治体研究所(東京都新宿区、所長:加藤篤史)はこのたび、「第16回早稲田大学世界デジタル政府ランキング2021」を発表いたしました。ICT先進国64か国・地域の国民生活に不可欠なデジタル政府の進捗度を主要10指標で多角的に評価する本調査分析は、デジタル社会への貢献が期待されており、アジア太平洋経済協力(APEC)をはじめ世界の関係機関からも注目されています。
2021年度:調査結果
16回目を迎えた今回の調査結果は、上位から1位:デンマーク、2位:シンガポール、3位:英国、4位:米国、5位:カナダです。日本は前回の7位から2つランクを落とし9位となりました。

表 1 第16回早稲田大学世界デジタル政府総合ランキング2021
今回の報告書ならびに、過去の発表分は以下の研究所HPに掲載しています。64の国と地域別レポート付きの英語版報告書は近日中にウェブサイトに公開する予定です。
早稲田大学電子政府・自治体研究所 https://idg-waseda.jp/ranking_jp.htm
報告書には、以下の内容がまとめられています。
●ICT先進国64か国・地域のスコア並びにトップ25位までの各国の特徴
●後述の10指標別ランキング
●欧州、アジアなど地域別、OECDなど国際機関別のランキング
●1位に返り咲いたデンマークをはじめ英国、シンガポール、韓国など主要15カ国のデジタル庁の特徴
●「コロナ」「DX」「個人情報保護」「スマートシティ」「SDGs」など世界10大新潮流のハイライト
●「第5世代デジタル政府構想」「コロナ教訓」「ICT人材育成策」等、日本への20項目の提言
日本の課題
日本の課題と構造的弱点は、次のように総括できます。
- コロナ対応で露呈した官庁の縦割り行政、DX(デジタル変革)やスピード感の欠如
- 電子政府(中央)と電子自治体(地方)の法的分離
- 地方公共団体の財政・デジタル格差
- デジタル政府・自治体の推進役となるICT人材不足
日本への提言
コロナ時代のデジタル政府の最優先事項として次の5項目などが提言として挙げられます。
- 将来の少子・超高齢・人口減少社会を見据え、デジタル活用による官民連携やデジタル・イノベーションの推進で行政のコスト削減や効率化により、国民生活の利便性向上に寄与
- コロナ時代のデジタル政府の最優先事項である、強力かつ迅速なデジタル化による新生活様式へのシフトと行政DXを推進
- 経済再生・成長戦略、及び質の高い行政サービスを提供することにより国民生活の安定、安心・安全を守る
- 2021年9月に発足したデジタル庁は、個別最適ではなく、中央と地方の全体最適を目指すべき。
- 3大先端技術「5G、AI、8K」の統合力が我が国のポスト・コロナのデジタル・イノベーション成長戦略の基軸となり、その点、デジタル庁は司令塔として期待されます。
本調査は日本のデジタル化について、遅れた原因、長短所を詳細に述べています。さらに、デジタル政府の意義と未来像を国際比較で論じ、独立性、中立性に徹し、課題・提言としてまとめています。
「早稲田大学世界デジタル政府ランキング」とは
ICT先進国64か国・地域のデジタル政府の進捗度を主要10指標で多角的に評価する本調査分析は、2005年に始まり、デジタル政府の進展が国民の利便性及び行財政改革に貢献するものとして、APECをはじめ世界の関係機関からも注目されています。
各10指標「デジタル・インフラ整備」「行財政最適化」「アプリケーション」「ポータルサイト」「CIO(最高情報責任者)」「戦略・振興」「市民参加」「オープン政府]「セキュリティ」「先端技術」のベンチマークでランキング内容を解説するだけでなく、過去16年にみる世界のデジタル政府の進展、総合ランキングの推移、主要国のデジタル庁などによるデジタル政策、注目の新潮流、提言などのテーマをまとめています。
本評価モデルは2005年に研究所初代所長の小尾敏夫現名誉教授によって開発され、ランキング手法が確立されました。当研究所は国際機関APECのデジタル政府研究センターも兼務しています。今年で16回目を迎える世界デジタル政府ランキング評価は、各国の産官学リーダーなどへの政策支援材料の提供をはじめ、この分野の国際連携の中核の一つをなしています。
本調査では最新で、かつ最も正確な情報を得てデータ分析及び評価するために、NPO法人国際CIO学会(理事長:岩﨑尚子)の世界組織であるIAC(International Academy of CIO)傘下の提携大学を代表する専門家による合同調査チームを編成しています。連携大学は、シンガポール国立大学(シンガポール)、北京大学(中国)、ジョージ・メースン大学(米国)、ボッコーニ大学(伊)、トルク大学(フィンランド)、タマサート大学(タイ)、連邦大統領政経大学(露)、ラサール大学(フィリピン)、バンドン工科大学(インドネシア)、それに統括拠点の早稲田大学です。研究調査プロセスでは専門家チームが意見交換し、さらに各国政府デジタル部門、国連、OECD、世界銀行、APEC等国際機関との意見交換を重視しています。
早稲田大学電子政府・自治体研究所は岩﨑尚子(いわさきなおこ)研究院教授をリーダーにデジタル社会の世界的連携と発展に向けてデジタル政府活動を具体的に分析し、かつ研究所は国連SDGsなどへの課題解決提案を行っています。