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低温でCO₂を資源化する新材料発見

低温で二酸化炭素を一酸化炭素へ資源化する新しい材料を発見

発表のポイント

  • 従来より低い500度以下の温度で、二酸化炭素を還元し一酸化炭素へ資源化する新しい材料(銅とインジウムの構造化された複合酸化物Cu-In2O3)を発見した。
  • Cu-In2O3は低温でも酸化物イオンの移動が速く、酸化と還元を組み合わせることで二酸化炭素を効率的に資源化できる。
  • 社会実装が進めば、二酸化炭素削減に大きく貢献する技術となることが期待される。

早稲田大学先進理工学研究科修士1年の牧浦 淳一郎(まきうら じゅんいちろう)氏、早稲田大学理工学術院の比護 拓馬(ひご たくま)講師および関根 泰(せきね やすし)教授らの研究グループは、従来より低い500度以下の温度で、二酸化炭素を一酸化炭素へ資源化する新しい材料を発見しました。

今回、研究グループが新たに発見したCu-In2O3は、低温でも酸化物イオンの移動が速く、酸化と還元を組み合わせることで二酸化炭素を効率的に資源化することができました。今後社会実装が進めば、二酸化炭素削減に大きく貢献する技術となることが期待されます。

本研究成果は、2020年12月23日(水)正午(英国時間)に英国王立化学会誌『Chemical Science』のオンライン版で公開されました。

論文名:Fast oxygen ion migration in Cu–In–oxide bulk and its utilization for effective CO2 conversion at lower temperature

(1)これまでの研究で分かっていたこと

これまで人類は資源を地殻から掘り出して消費し、二酸化炭素を多く排出してきました。二酸化炭素は温暖化要因物質の一つと言われ、これまでに排出された二酸化炭素については、再生可能エネルギーを用いた資源化などが今後期待されています。二酸化炭素を資源化するための手法は数多く検討されてきましたが、本研究グループは固体酸化物の酸化と還元を組み合わせることで、二酸化炭素を従来より低い温度で効率よく一酸化炭素へ資源化することを検討し、今回の発見に至りました。

(2)今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと

今回、本研究グループは新たに発見したCu-In2O3を用いてケミカルルーピング※1を利用した逆水性ガスシフト※2を行った結果、従来より低い500度(図2参照)において、10 mmol/g/hという大きな速度で二酸化炭素を効率的に資源化することができました。様々な解析により、Cu-In2O3上での反応は、Cu-In2O3とCu-In合金との間の酸化還元に由来することが明らかになりました。そして、高い二酸化炭素反応率の鍵となる要因は、合金中の酸化物イオンの高速移動によるものであることがわかりました。ここで発見した知見は、より低温で効果的な二酸化炭素資源化を達成するための新たな道を拓くと考えます。

図1:今回の材料とプロセスが実現させうる再生可能エネルギーを用いた二酸化炭素の資源化

図2:今回発見した材料(左の青い部分)は、従来の既知の材料(右の赤枠)を大幅に凌駕する。

図3:真ん中中央の状態と真ん中上の状態を行ったり来たりしながら二酸化炭素が資源化される。

(3)そのために新しく開発した手法

数百にもわたる候補材料の中から、Cu-In2O3という材料が比較的低温で効率よく二酸化炭素を資源化できることを見出しました。本材料の評価は、大型放射光施設※3で解析を行い、電子顕微鏡による構造の解析や、Python(パイソン)※4を用いた材料解析などを組み合わせて行いました。

(4)研究の波及効果や社会的影響

現在、2050年に向けて二酸化炭素排出抑制技術の実証・実用化が強く期待されています。今回本研究グループが発見した材料は、低い温度域で再生可能エネルギーを用いて二酸化炭素の資源化を可能にする新しい技術であり、社会実装が進めば、二酸化炭素削減に大きく貢献する技術となることが期待されます。

(5)今後の課題

サイクルを数多く重ねた際の特性などを、共同研究企業であるENEOS社とともに検討し、より高い性能をより長く発揮しうるものに仕上げていきたいと考えています。

(6)研究者のコメント

従来あまり考えられたことのない、銅とインジウムという組み合わせの酸化物が、酸化還元によって二酸化炭素を資源化する高い性能を示すことがわかりました。今後、太陽熱と電解水素などを組み合わせることで、二酸化炭素の選択的・効率的な資源化が可能になります。

(7)用語解説

※1 ケミカルルーピング
ある酸化物などの表面で酸化反応と還元反応を繰り返すことにより、化学反応がそれぞれ独立して進むこと。生成物を分離しやすく、混合して原料を流した場合に比べ効率よく反応できることが多い。

※2 逆水性ガスシフト
二酸化炭素の資源化の方法の一つ。次に示す化学反応式によって、二酸化炭素と水素から、化学品合成に有用な一酸化炭素を作ることができる。
CO2 + H2 → CO + H2O

※3 大型放射光施設
酸化物サンプルを持参して放射光を当てることにより、元素の状態を精密に知ることができる。

※4 Python(パイソン)
コンピュータプログラム言語の一つ。多くのライブラリが公開されており、ビッグデータ解析や機械学習、画像処理に強みを発揮する。

(8)論文情報

雑誌名:Chemical Science
論文名:Fast oxygen ion migration in Cu–In–oxide bulk and its utilization for effective CO2 conversion at lower temperature
執筆者名(所属機関名):Jun-Ichiro Makiura(早稲田大学先進理工学研究科修士1年), Takuma Higo*1, Yutaro Kurosawa*2 ,Kota Murakami*1, Shuhei Ogo*2, Hideaki Tsuneki*1, Yasushi Hashimoto*2,Yasushi Sato(ENEOS先進技術研究所所長), Yasushi Sekine*1
*1 早稲田大学理工学術院 *2 早稲田大学理工学術院関根泰研究室OB
掲載日時(英国時間):2020年12月23日(水)正午
掲載日時(日本時間):2020年12月23日(水)21時
DOI:10.1039/D0SC05340F

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