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ERATO採択 物質空間テクトニクス

令和2年度 戦略的創造研究推進事業ERATO採択

物質中のナノ空間を開拓し、高度集積化する新概念「物質空間テクトニクス」を提案

発表のポイント

結晶中に「ナノ空間」を作り出し、それらを高度に集積化された「ハイブリッド空間」の完全制御に向けた新概念「物質空間テクトニクス」を提案、合成プラットフォームの確立を目指す。

ナノ空間とそれらのハイブリッドから誘起される機能創発より、再生可能エネルギー技術の向上と環境改善に資する材料科学分野の発展に大きな貢献をもたらすと期待される。

図:本ERATOプロジェクトで推し進める物質空間テクトニクスの概念図

2020年10月1日、クイーンズランド大学・生物工学ナノテクノロジー研究所の山内悠輔(やまうちゆうすけ)教授(兼 早稲田大学各務記念材料技術研究所 招聘研究員、兼 物質・材料研究機構 グループリーダー)を研究総括とし、早稲田大学理工学術院の菅原義之(すがはらよしゆき)教授ならびに朝日透(あさひとおる)教授をプロジェクトマネージャーとする、早稲田大学、物質・材料研究機構(NIMS)、クイーンズランド大学からが、科学技術振興機構による令和2年度戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(Exploratory Research for Advanced Technology、以下ERATO)(*1)研究領域「物質空間テクトニクス」として採択されました。

研究総括が世界に先駆けて独自の合成法を提案して実現した導電性ナノ多孔体(*2)は、「第二世代無機多孔体」として、今、世界の材料化学の分野で特別な注目を集めています。本研究領域が目指す「第二世代無機多孔体」の合成プラットフォームの確立により、現在の社会的要請として望まれている持続可能なエネルギーと環境改善への貢献が期待されています。特に、エネルギーの貯蔵と変換(燃料電池、水分解、二次電池)の革新的材料をはじめ、有機合成用の不均一触媒、光学または電子センサーなど、多くの材料化学分野に広く展開されることが想定されています。

なお、本プロジェクトは、早稲田大学を主な研究拠点として展開します。

(1)社会的背景、これまでの経緯(科学史的・歴史的背景)

これまで、様々な化学的・物理的方法により、無機ナノ物質の設計および調製がなされてきました。これらのナノ物質は、それらの形態の特徴から0次元(0D)、1次元(1D)、2次元(2D)、または3次元(3D)として分類することができます。0Dナノ物質の場合には、特に特殊な合成条件を適用しない場合は、熱力学的に安定な低指数面(多くの反応系において、活性が低い)がナノ粒子の表面に露出します。ナノチューブ、ナノロッド、およびナノワイヤなどの特定の一方向で結晶が成長した1Dナノ物質の場合にも同様のことが起こります。更に、これらのナノ物質は自身で自立して高次構造化することができず、凝集してしまうため、表面の多くの活性な面積を失ってしまいます。

上記の0D、1D物質とは対照的に、2Dナノ物質は様々な応用展開が期待されており、グラフェンのノーベル物理学賞(2010年)を皮切りに、ナノ物質の研究分野では大きな関心が寄せられています。しかしながら、これらの2Dナノ物質(層)は、通常互いに積層してしまい、最終的に比表面積を大幅に失ってしまうことが要因となり、多くの重要な用途への展開の可能性を低くしています。

そのため、これまでの多くの次元の異なる無機物質が合成され、著しい進歩が見られるにもにもかかわらず、今なお、我々は新しいナノ材料を開発研究し続けています。従って、従来の延長線上の古典的な0D、1D、2Dに基づく無機物質の考え方では、頭打ちになっている現在の状況を変えて、次世代の物質科学を切り拓く新しいサイエンスの流れが期待されています。

(2)今回のプロジェクトで新たに実現しようとすること

本ERATOでは、

無機固体物質にターゲットを絞り、それらの物質中のナノ空間(多数の細孔)を開拓する新しい概念、およびそれらを高度集積化する概念として「物質空間テクトニクス(Materials Space-tectonics)」を提案します。
次元や組成の異なるナノ物質同士をナノ〜メソサイズの幅で高度に集積化する方法論を展開することで、空間内で生起する様々な分子/光電磁気的な特異挙動の相乗的融合に基づいた機能創発を実現します。
目的物質の合成ルートや各無機ブロックの組み合わせパターンによる集積化など、マテリアル・インフォマティクス(MI)を用いることで、目的にあった新規物質を最短経路で合成し、最先端の無機合成化学を展開することが可能となります。

新概念「物質空間テクトニクス」とは、

ナノスケールの無機固体の物質中に新たな空間を創造し、それらをナノサイズからメソサイズの幅で高度に集積化(ハイブリッド化)させるという独自の方法論です。

(3)このプロジェクトにより期待されること

本ERATOは、第二世代無機多孔体およびその機能を高度に制御する合成プラットフォームの確立を追究する取り組みです。21世紀において、エネルギーは我が国の主要な経済的推進力であり続けますが、地球温暖化などの環境問題を緩和するために、再生可能エネルギー技術に移行する必要があります。このERATOでは、これまでにない機能を備えた革新的材料を合成し、現在のエネルギーと環境の課題に高度な技術を提供することで経済の繁栄に貢献することを目的としています。

具体的な展開例

  1. 燃料電池用非白金触媒の設計
  2. 効率的な水素を生産するための高性能電極触媒の開発、及び燃料電池を水分解と組み合わせた持続可能なエネルギーシステム「水素エコノミー」の提案
  3. 二酸化炭素などの温室効果ガスを付加価値の高い化学物質に変換可能な触媒の開発
  4. 劣化ゼロ電極素材の開発と超長寿命二次電池システムの実現

ERATO終了時には、現在予想している応用範囲を超えて、これまで考えられていなかった応用展開を強く期待しています。

(4)各機関の役割

クイーンズランド大学(UQ)

  • 研究総括直轄の研究場所であり、早稲田大学設置のナノ次元制御グループと連携して、ナノ物質の次元制御に関する研究を担当する予定です。

 早稲田大学

  • 本ERATOのヘッドクォーターを学内に設置(予定)し、研究全体を強力に推進させます。本ERATOのナノ次元制御グループとナノ物性評価グループが設置されており、特に、ERATOを通して、UQと学術交流を推し進め、世界トップレベルの研究教育拠点を作ります。

物質・材料研究機構(NIMS)

  • 本ERATOでは、ナノ構造制御グループ、ナノハイブリッドグループ、ナノマテリアル・インフォマティクスグループの3グループが設置されており、機械学習を活用し、ナノ物質の合成、及びそれらのハイブリッド化を促進させます。

(5)研究者(代表者)のコメント

本ERATOプロジェクトに参画のグループリーダー級(サブグループリーダーを含む)については、さきがけ経験者、女性研究者、他のERATO研究員で活躍した30~40代中心の研究者から選出しました。また、本プロジェクトの最大の強みは、すべての課題に対し迅速に対応できるように、無機化学のみならず超分子化学、物理化学、電気化学、計算科学、固体物理など様々な分野で活躍する専門家を集結させている点です。既存ナノ物質材料を単に改良し、それらが持つ特性や機能を掘り下げる従来型の研究課題とは異なり、導電性物質中のナノ空間やハイブリッドが誘起する物性の開拓という新しい目標を設定し、環境・エネルギー問題へ貢献する新物質の開発を狙うものです。第一世代無機多孔体では難しかった分野へ応用展開を重点的に取り組み、導電性骨格から得られる新物性という新しい科学技術のパラダイムを目に見える形で産み出していきます。

また、日豪間の人的交流を促進し、ERATOに参画しているメンバー(特に、学生)に研究交流の機会を提供するだけでなく、英語力、両国間の文化交流を向上させるプログラムも用意しています。本ERATOは、研究だけではなく、学生や若い研究者に対して、今までにない新しい「研究教育モデル」を提案していきたいと思っています。研究と教育の両面で世界トップレベルの拠点を作り、早稲田大学から世界にアピールしていきたいです。

(6)用語解説

*1 戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO: Exploratory Research for Advanced Technology)
  • 科学技術振興機構による公募プロジェクトの一つで、1981年に発足した創造科学技術推進事業を前身とするプログラムです。規模の大きな研究費をもとに既存の研究分野を超えた分野融合や新しいアプローチによって挑戦的な基礎研究を推進することで、今後の科学技術イノベーションの創出を先導する新しい科学技術の潮流の形成を促進し、戦略目標の達成に資することを目的としています。https://www.jst.go.jp/erato/about/index.html
*2導電性ナノ多孔体・第二世代無機多孔体
  • 骨格が導電性の組成(例えば、炭素、金属、硫化物など)からなる新しいナノ多孔体の総称。これまでのメソ多孔体シリカ、ゼオライト、有機-金属錯体などのナノ多孔体(第一世代無機多孔体)は、導電性が乏しく、電気・電子を取り扱う応用へは展開が困難でした。

(7)研究助成

研究費名:戦略的創造研究推進事業(ERATO: Exploratory Research for Advanced Technology)
研究課題名:物質空間テクトニクス」 (R2年度~R7年度)
研究総括名(所属機関名):山内悠輔 クイーンズランド大学 化学工学科 教授 および、同大生物工学ナノテクノロジー研究所 教授
URLhttps://www.jst.go.jp/pr/info/info1454/index.html

(8)共同研究機関

  • 早稲田大学(本部:東京都新宿区、総長:田中愛治)
  • 物質・材料研究機構(NIMS)(本部:茨城県つくば市、理事長:橋本和仁)
  • クイーンズランド大学(本部:オーストラリア・ブリスベン、学長:Deborah Terry AO)
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WASEDA University

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