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建造環境と心血管疾患の関係性

近隣の建造環境が心血管疾患に及ぼす影響を検討する際に有用な枠組みを提示
科学的根拠に基づいた解決策ならびに将来の研究の方向性を提案

発表のポイント

  • 学際的アプローチで、近隣の建造環境と心血管疾患に関する研究を行う際の枠組みを提示
  • 先行研究の課題を、概念、方法論、政策関連の3つの観点から整理
  • 将来的には心血管疾患予防に寄与する建造環境を意図的に設計できる仕組みづくりを目指す

本発表は、『Nature Reviews Cardiology』に2020年2月12日(現地時間)に「COMMENT」としてオンライン掲載されました。

早稲田大学スポーツ科学学術院のMohammad Javad Koohsari次席研究員および岡浩一朗教授、University of CalgaryのGavin R. McCormack准教授、東北大学の中谷友樹教授の研究グループは、建造環境と心血管疾患の関連を理解する枠組みを示し、この分野の科学的厳密性を高めていくために重要な概念的、方法論的、政策的課題の整理とともに、将来、研究が進むべき方向性を提案しました。
心血管疾患は、世界中の国々、とりわけ日本のような高齢化する人口集団において主要な死因となっています。最新の「世界の疾病負荷研究(The Global Burden of Disease Study)」によれば、心血管疾患により毎年約1,780万人が亡くなっていると推定されています。この心血管疾患の予防を考えるにあたって、近年では近隣の建造環境や都市デザインが果たしている役割を理解することに、科学的・政策的な関心が高まっています。
本研究では、近隣の建造環境が心血管疾患に及ぼす影響を検討する際に有用な枠組みを提示するとともに、その枠組みに基づく先行研究の問題点を、概念、方法論、政策関連の3つの観点から整理することを目指しました。さらに、本分野に関する研究トピックについて、科学的根拠に基づいた解決策ならびに将来の研究の方向性を提案することを試みました。
【論文情報】
論文名:Neighbourhood built environment and cardiovascular disease: knowledge and future directions
DOI:10.1038/s41569-020-0343-6

(1)これまでの研究でわかっていたこと

心血管疾患は、世界中の国々、とりわけ日本のような高齢化する人口集団において主要な死因となっています。最新の「世界の疾病負荷研究(The Global Burden of Disease Study)」によれば、心血管疾患により毎年約1,780万人が亡くなっていると推定されています。この心血管疾患の予防を考えるにあたって、近年では近隣の建造環境や都市デザインが果たしている役割を理解することに、科学的・政策的な関心が高まっています。というのも、歩行者にやさしく、よく連結した道路ネットワークや、多様な土地利用・活動場所、高い人口・世帯密度、緑地といった近隣の建造環境が、身体活動や座位行動、食習慣、睡眠といった日常生活活動に影響を及ぼし、それらを通じて心血管疾患の予防に重要であるらしいとの知見が認められるようになってきたためです。このような学際的研究は比較的新しい分野であり、今後更なる発展が期待されていますが、近隣の建造環境と心血管疾患にまつわる研究はさらに改善するべき点が多いと考えられます。

(2)今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと

本研究では、近隣の建造環境が心血管疾患に及ぼす影響を検討する際に有用な枠組みを提示するとともに、その枠組みに基づく先行研究の問題点を、概念、方法論、政策関連の3つの観点から整理することを目指しました。さらに、本分野に関する研究トピックについて、科学的根拠に基づいた解決策ならびに将来の研究の方向性を提案することを試みました。

(3)そのために新しく開発した手法

本研究において、まず近隣の建造環境と心血管疾患に関する研究を行う際の枠組みを提示しました(下図)。次に、この分野の先行研究における課題を、概念(時間と場所の関連、メカニズム、異なる効果)、方法論(建造環境の多様性、異なる建造環境特性の共存、因果の推論)、政策関連(建造環境の基準値設定、建造環境総合指標の分解)の3つの観点から整理しました。

また、これらの課題を解決すべく、今後の研究の方向性として、以下の8つを提案しました。

・人々が影響を受ける近隣の建造環境を概念化する際に、時間と場所の関連(誰がいつどこで)を考慮する

・近隣の建造環境が心血管疾患に及ぼすメカニズムを探求する

・同じ建造環境特性が心血管疾患に異なる効果を及ぼしうることを理解する

・量反応関係の同定を可能にするために、多様な建造環境を対象とした研究を行う

・心血管疾患に関連する異なる建造環境特性が同時に存在したり、互いに関連しあって影響を及ぼしたりすることを理解する

・建造環境が心血管疾患に及ぼす影響を検討するために追跡を伴う研究(前向き研究)を採用する

・心血管疾患(の予防)に影響を及ぼすのに十分な建造環境特性の基準値を見極める

・心血管疾患に関わる個別の建造環境特性ならびに総合指標の影響をそれぞれ検討する


(4)研究の波及効果や社会的影響

この分野の学際的研究は未だ発展途上の段階にあり、この種の研究トピックに関する科学的厳密性に関しては今後も更に改善していく必要があります。我々は「都市デザインと公衆衛生施策を考えるにあたって科学を置き去りにするべきではない(We must not let urban design and public health policy get ahead of ‘science’)」ということを常に念頭に置いておくべきです。我々のアドバイスがもし頑健な科学的根拠に基づかないものであるなら、心血管にまつわる健康を改善するために近隣環境の(再)設計をうながす都市デザインや公衆衛生の政策を提案したところで、何かの役に立つとは思えません。近隣の建造環境と心血管疾患に関する複雑な関係性を解明するためには、心臓病学や都市デザインの研究者を含めた更なる学際的な研究が必要であると考えています。

(5)今後の課題

現在、早稲田大学卒業生を対象にした「WASEDA’S Health study」や、Dr. McCormackらとの共同研究プロジェクト「EcoEUFORIA studyおよびActive Calgary study」などの大規模コホート研究のデータを活用し、本研究によって示した課題を解決するための研究をすでに開始しています。いかにして心血管にまつわる健康を高めるように建造環境を(再)設計できるのかをめぐって、鍵となる問に将来の研究が答えてくれることを期待しています。そのような研究の知見こそが、心血管の健康を促進し、心血管疾患を予防するための特定人口集団や地域への介入に興味を持つ研究者、臨床家、実務家の役に立つと考えています。

(6)論文情報

雑誌名:Nature Reviews Cardiology

論文名:Neighbourhood built environment and cardiovascular disease: knowledge and future directions

執筆者名(所属機関名):Mohammad Javad Koohsari (Waseda University), Gavin R. McCormack (University of Calgary), Tomoki Nakaya (Tohoku University), Koichiro Oka (Waseda University)

掲載日時(現地時間):2020年2月12日10:00am (London Time)

掲載日時(日本時間):2020年2月12日5:00pm (US Eastern Time)

掲載URL:https://www.nature.com/articles/s41569-020-0343-6

DOI:10.1038/s41569-020-0343-6 掲載予定日(現地時間):2020年1月23日

(7)研究助成

研究費名:文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業

研究課題名:国民の身体活動不足解消を具現化するための健康スポーツ科学研究の基盤形成

研究代表者名(所属機関名):岡浩一朗(早稲田大学)

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WASEDA University

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