新しい放射能汚染土減容化技術

高圧洗浄技術を応用した新しい放射能汚染土減容化技術の開発に成功

先行技術の3分の1以下のコストで処理可能に

発表のポイント

  • 従来の放射能汚染土処理方法は、経済性が低く、大量の汚染土壌の処理に適用することは難しかった。
  • 本研究グループは高圧洗浄技術を応用し、先行技術の3分の1以下のコストで放射能汚染土減容化に成功。
  • 放射能汚染地域の除染作業で出た除染土の中間貯蔵推進への貢献が期待される。

早稲田大学理工学術院の松方正彦(まつかたまさひこ)教授らの研究グループは、高圧洗浄技術を応用した新しい放射能汚染土減容化技術の開発に成功しました。本研究は、中間貯蔵・環境安全事業株式会社「平成30年度除去土壌等の減容等技術実証事業」の一環で実施されました。

福島第一原子力発電所事故後、放射能汚染土の除染作業から発生する除染土は現在2,000万m以上と推計されています。しかし、従来の放射能汚染土処理方法は大きな熱エネルギーや大量の化学薬品を消費したりするなど経済性が低く、大量の汚染土壌の処理が可能な技術開発が待たれていました。

本研究グループは、2018年7月〜12月に神奈川県、福島県内でベンチスケール試験、実汚染土を用いた現地試験を実施し、新規に開発した高圧洗浄システムによって、放射性物質濃度を元土壌の平均24%に低下させることに成功しました。さらに、処理コストは先行技術の15〜35%と試算されます。

1.はじめに

東京電力福島第一原子力発電所事故により放出された放射性物質は、福島県内の広い地域に拡散し深刻な環境汚染を引き起こした。放射性物質汚染による環境被害を修復するために、これまで福島県内の各地の自治体で除染作業が行われてきた。現在、汚染地域の除染作業から発生する除染土の量は2,000万m以上となると推計されており、粘性土が除染土の過半を占めている。

近年の研究から、放射性セシウムは主に土に含まれる雲母などの粘土鉱物の層間に固定され、容易に溶出しないことが明らかとなっている。このため、放射性セシウムを汚染土壌から除去するためには、熱処理、化学的処理等により放射性セシウムを粘土鉱物から分離するか、放射性セシウムを固定している粘土鉱物そのものを分離する処理が必要となる。これまで開発された放射性物質により汚染された粘性土の代表的な処理方法としては、汚染土を高温加熱し放射性セシウムを昇華させる処理方法や、酸・アルカリ、化学薬品を加えた抽出等による処理方法が挙げられる。これらの処理方法は、大きな熱エネルギーを必要としたり、大量の化学薬品を消費したりするなど、経済性が低く、大量の汚染土壌の処理に適用することは難しいと思われる。

本研究グループは、放射性セシウムにより汚染された粘性土の処理を目的として、高圧洗浄技術を応用した新しい汚染土減容化技術の開発を行なっている。この減容化処理コストは、前記の加熱昇華法や薬品を用いた抽出技術等の先行技術の15〜35%となると試算している。

2.減容化システムの概要

開発した高圧洗浄システムの概要図を図1に、処理原理イメージを図2に示す。この技術では、汚染土に分散剤を加えて、供給圧力4MPa以上の高圧噴流により連続的に解砕し、団粒化した粘性土から放射性セシウムを吸着している粘土鉱物等を分離して回収し、汚染土壌の除染と減容化を行う。分散剤は、団粒化した粘性土のゼータ電位を低下させることで、解砕された微細な土粒子を安定して分散させることによって、分離処理を可能にする機能をもつ。

土壌洗浄装置であるエジェクターの構造を図3に、写真を図4に示した。この装置では、φ50mm程度のパイプ内部に土壌を吸引し、高圧噴流により発生する乱流により土壌洗浄を行う。強い乱流の中で分散剤を加えて土壌を処理することにより、優れた解砕効果が生まれる。開発システムでは、高圧洗浄により解砕された汚染土は、後段に設けた分級・分離処理を経て、放射性セシウムを吸着している粘土鉱物を選択的に回収し、洗浄土と濃縮土に分けた後に脱水処理する。図1に示したシステムでは、分級装置として振動ふるい、スクリューコンベア、湿式サイクロンを用いている。実用化に際してはこれらに限定せず、沈降分離、浮遊選鉱技術など種々の技術を組みわせて使用することを想定している。

図1 高圧洗浄システムの概要

図2  減容化処理原理イメージ

図3 高圧洗浄エジェクターの構造

図4 高圧洗浄エジェクターの写真

3.開発システムを用いた放射能汚染土の減容化処理例

本技術は、中間貯蔵・安全事業株式会社、「平成30年度 除去土壌等の減容等技術実証事業」に採択され、2018年7月〜12月に神奈川県、福島県内でベンチスケール試験、実汚染土を用いた現地試験を実施した。以下に、放射性物質により汚染された粘性土汚染土の、開発システムによる代表的な処理結果について述べる。

現地試験では放射性物質濃度7,500〜41,700 Bq/kgの森林由来粘性土を主体とする汚染土壌を試験の対象として選定した。表1に、高圧洗浄処理したふるい回収土(振動ふるいとスクリュー回収土の混合物)の放射性物質濃度低減効果について示した。洗浄処理後のふるい回収土の放射性物質濃度は2,200 〜 5,200 Bq/kg(平均値 3,800Bq/kg)、元土壌の18〜29 % (平均24%)に低下し、土壌回収率は46〜74 重量%(平均63重量%)となった。また、回収土の放射性物質濃度は概ね5,000 Bq/kg以下となり、十分な地盤強度を有するため、建設盛土材等に再利用可能である結果を得た。このように、現地試験では良好な効果が得られて、開発技術の有効性を確認することができた。

図5に高圧洗浄を行った土壌のSEM画像を示す。洗浄前の大きい粒径の団粒粘性土が、高圧洗浄処理により解砕・粉砕され、分離した濃縮土は粒径5μm未満の粘土鉱物により構成されている。図6に土粒子の回収率を示したが、開発システムより、粒径20μm未満の土粒子の回収率は47~75 %、粒径20 μm以上の土粒子の回収率は74−91%を示した。これにより、開発システムの土壌の解砕効果、土粒子の分級回収効果の有効性が示されている。

表-1  ふるい回収土(ふるい、スクリュー回収土の混合物)の放射性物質低減効果

図5 高圧洗浄処理土壌のSEM画像

図6 土粒子の回収率

 福島県の浜通り地域には、現在も黒いフレコンに充填された除染土壌が各地に山積みされている。福島の復興のために、除染土の中間貯蔵を進めていくためには、さらに低いレベルまで放射性物質を除去することができる経済的技術の確立が急務となっている。

本技術については、粘性土の解砕効果の向上による放射性物質濃度のさらなる低減、分級・分離技術の最適化による減容化率の向上が今後の課題である。また、昨年の現地試験では、土壌有機物の無視できない影響が認められた。今後、土壌有機物のキャラタリゼーションと、その効率的な分離処理法の開発についても今後の課題として挙げられる。

5.研究助成

中間貯蔵・環境安全事業株式会社「平成30年度除去土壌等の減容等技術実証事業」

「粘土質を多量に含んだ汚染土壌の減容化技術の実証」(実施代表者:早稲田大学)
実証事業の実施内容、結果報告書 概要 本文

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WASEDA University

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