岩手県久慈市で発見 ティラノサウルス類の歯化石

久慈琥珀博物館(岩手県久慈市 館長:新田久男)と早稲田大学国際学術院の平山廉(ひらやまれん)教授、および国立科学博物館の對比地孝亘(ついひじたかのぶ)研究主幹の共同研究グループは、同博物館内にある琥珀採掘体験場で発見された恐竜の歯の化石がティラノサウルス類のものであることを突き止め、2019年4月19日、会見発表を早稲田大学(東京都新宿区 総長:田中愛治)にて行いました。

ティラノサウルス類の復元画(©小田 隆、提供:久慈琥珀博物館)

この化石は、2018年6月に同博物館にて採掘体験を行っていた来館者が偶然に発見したもので、本研究グループにて化石の鑑定をすすめていました。

今回の記者会見では2012年3月より岩手県久慈市で本格的に調査を行っている平山教授により詳細が発表されました。また、記者会見には、岩手県の千葉茂樹(ちばしげき)副知事、久慈市の遠藤譲一(えんどうじょうじ)市長、久慈琥珀博物館の新田久男(しんでんひさお)館長、そして発見者の門口裕基(かどぐちゆうき)さんも参加しました。

化石が発見された場所と地層

今回の化石(ティラノサウルス類の歯)が発見された場所は、岩手県久慈市小久慈町にある久慈琥珀博物館から北東約300mに位置する大沢田川支流の河川沿いの久慈琥珀博物館が運営する琥珀採掘体験場です。この周辺に分布する久慈層群玉川層(白亜紀後期・約9千万年前:火山灰に含まれる放射性物質による年代測定)では、2012年3月から平山廉教授によって発掘調査が実施されており、これまでに体長20m級の大型植物食恐竜(竜脚類)やカメ類、ワニ類、サメ類など20種類に及ぶ脊椎動物化石(約1800点)が発見されています。

久慈琥珀博物館の琥珀採掘体験場からは、ほぼ完全なカメ類(絶滅種アドクス)の甲羅(2008年)、小型植物食恐竜(鳥盤類)の腰骨(2008年)、翼竜の翼の一部(中手骨:2010年)が発見されるなど、白亜紀当時(約9千万年前)の陸生脊椎動物の化石が続々と発見されています。重さ約3㎏に達する琥珀が採掘されるなど、久慈琥珀博物館の周辺は、琥珀と恐竜時代の化石が眠る貴重な場所となっており、まさしく「琥珀と恐竜の大地・久慈」と謳われる地域です。

久慈層群玉川層から発見された主な脊椎動物化石

2003年 日本で唯一の琥珀採掘体験場が完成
2003年 ワニの歯化石の発見
2006年 アドクス(絶滅したカメ類)の甲羅化石を記者発表
2009年 琥珀採掘体験採掘場より岩手県内で2例目の恐竜となる
「鳥盤類」の腰骨(坐骨)化石を記者発表
2010年 7月、琥珀採掘体験場より翼竜類の化石を発見
2012年 3月、早稲田大学による発掘調査地より大型植物食恐竜(竜脚類)の歯化石を発見
2015年 3月、調査地より白亜紀後期ではアジア初となる「コリストデラ類」(絶滅した水生爬虫類)を学会で発表、同7月久慈市で記者発表
2016年 3月、調査地より岩手県初の肉食恐竜の歯化石を発見、発表

発見されたティラノサウルス類の歯化石について

発見場所:琥珀採掘体験場(岩手県久慈市小久慈)
発見日時:2018年6月24日
発見者:門口裕基さん
発見された部位:前上顎骨歯(高さ9mm)
地層(地質時代):久慈層群玉川層(約9千万年前:中生代白亜紀後期)

(1) 記述

歯が分厚く、断面がD字型を呈する。歯の切縁(カリナ)に鋸歯(きょし:ノコギリの歯状の細かい凹凸)が見られない。舌側面の中央に隆起(リッジ)が発達する。歯の両端は破損しているが、採集の際に生じたかどうかは不明。

(2) 議論

歯の断面がD字型であること、また舌側面中央部に隆起が見られるという独自の特徴(共有派生形質)から、肉食恐竜(獣脚類)のティラノサウルス類(上科)の前上顎骨歯(上顎前方の歯)であると考えられる。歯の大きさから、この恐竜の全長はおよそ3m前後であったと推定される。

ティラノサウルス類には、白亜紀後期のティラノサウルス科(いわゆるTレックスをふくむ)と、ジュラ紀から白亜紀前期にかけて栄えたプロケラトサウルス科(より原始的で小型のグループ)などが含まれるが、今回の化石の詳細な所属は未定である。歯の切縁に鋸歯がないという特徴は、北米産のモロスなど限られた種類にのみ見られることから、分類に重要であると思われるが、今後の検討課題である。

日本国内では、ティラノサウルス類の化石とされるものがこれまで8点報告されている。このうち前上顎骨歯のように確実な資料は3点が報告されている(福井県、石川県、および兵庫県)。これら3点の前上顎骨歯はいずれも白亜紀前期の化石であった。したがって、久慈市より発見された化石は、国内の白亜紀後期では初の確実なティラノサウルス類であると考えられる。鋸歯の有無などティラノサウルス類の歯にまつわる検討課題を解決するためにも今後の追加資料の発見が期待される。

なお、このような古生物学上の重要な資料の発見が東北地方のさらなる復興につながることを期待するものである。

(3) まとめ

岩手県久慈市の久慈層群玉川層(約9千万年前)から発見された歯の化石は、日本国内の白亜紀後期では初の確実なティラノサウルス類(上科)の前上顎骨歯である。歯の断面がD字型を呈するなどティラノサウルス類に固有の特徴が見られる。歯の切縁に鋸歯がないことから、ティラノサウルス類の中でも詳細が不明の種類であった可能性もあり、今後の検討や追加資料の発見が期待される。

久慈層群玉川層より発見されたティラノサウルス類の歯化石(前上顎骨歯)

研究に関するお問い合わせ
久慈琥珀博物館

岩手県久慈市小久慈町19-156-133
TEL 0194-59-3831
FAX 0194-59-3515
お問い合わせフォーム http://www.kuji.co.jp/inquiry

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