顕彰状 野中郁次郎氏

顕彰状

野中郁次郎氏は1935年墨田区に生まれた。東京都立第三商業高等学校を経て、早稲田大学第一政治経済学部に入学し、1958年に卒業した。同年富士電機製造株式会社に入社し、9年間の在職期間において、経営企画、マーケティング、人事管理など幅広い分野の業務に携わった。この業務経験を通じて、当時、最先端の経営理論を米国がリードしていることを痛感し、米国においてこれらを学ぶ必要性を感じて、カリフォルニア大学バークレー校経営大学院(ビジネススクール)に入学した。

同大学で経営学修士(MBA)を得たのちに、1972年同校の経営大学院博士課程を修了してPh.D.を授与された。博士論文は、「組織と市場」をテーマとするもので、当時の最先端理論であるコンティンジェンシー理論の発展を図るものであった。アメリカ留学中、野中氏は経営に関する科学的手法の存在、特に、ノーベル賞受賞者であるカーネギーメロン大学のH.A.Simon教授が主唱する企業組織における人間の意思決定プロセスの理論に大きな学問的刺激を受けた。「マネジメントとはサイエンスである」が当時の研究オリエンテーションであった。帰国後は日本企業と米国企業の実践的な比較研究を通じ、日本企業の経営の理論化でまず業績をあげる。当時の野中氏の提唱した概念で海外でも広く知られているものとして、「ミドル・アップダウン・マネジメント」「スクラム開発」がある。研究オリエンテーションも、「マネジメントとはサイエンスであると同時にアートでもある」というものとなり、Simon教授の情報処理モデルに対して情報創造モデルを対比するようになっていく。そして、この研究オリエンテーションの基に、人間の思いと暗黙知が経営に果たす役割を深く考察して、知識創造理論を提唱するに至った。この理論は1990年の著書「知識創造の経営」として最初にまとまった形で発表され、その後のいくつかの英語および日本語の著書を通じて、世界に広く知られるものとなった。知識創造のプロセスをモデル化した野中氏の「SECIモデル」は、今日のナレッジマネジメント研究の礎を築くものとなった。

野中氏は1977年南山大学教授に就任したのを皮切りに、1979年防衛大学校教授、1982年には一橋大学教授となり、1995年に退官するまでの間に同大学産業経営研究所所長も務めた。その後、北陸先端科学技術大学院大学教授および同知識科学研究科長を経て、2000年一橋大学に大学院国際企業戦略研究科教授として復帰し、2006年には同大学の名誉教授となった。そのほか海外でも、1997年からカリフォルニア大学ゼロックス知識学ファカルティ・フェロー、ならびに2007年からはクレアモント大学大学院ドラッカー・スクール名誉スカラーを、現在に至るまで務めている。

著書、研究論文は多岐に亘り、またその数も膨大なものであるが、特筆すべきは受賞した著書が多数に上ることである。主なものだけでも、「組織と市場:組織の環境適合理論」日経・経済図書文化賞、「日米企業の経営比較」組織学会賞、「知識創造の経営」経営科学文献賞、「The Knowledge – Creating Company」米国出版社協会ビジネス経営書部門ベスト・オブ・ザ・イヤー賞などが挙げられる。

こうした学術研究の成果が認められて、2002年には紫綬褒章を授与されるとともに、米国経営学会からは、この学会で最も権威のあるアカデミー・オブ・マネジメント・フェローグループのメンバーとして、アジアから初めて選出された。また2007年には米国アカデミー・オブ・マネジメント(経営学会)・インターナショナル部門エミネントスカラー賞を受賞し、2008年にはウォールストリートジャーナルから「最も影響力のあるビジネス思索家トップ20」に選出され、さらには2010年瑞宝中綬章を、2012年には米国の学会アカデミー・オブ・インターナショナル・ビジネスのエミネントスカラー賞も受賞している。

このように野中氏は、経営学の分野において日本のみならず、米国を中心に世界中を研究の場として活躍し、国内外を問わず数多の研究者から尊敬の念を集めている。早稲田大学においては特命教授として、氏は類まれなる学識経験と世界中に広がる研究者ネットワークを活かし、本学の発展に大きく寄与している。特にグローバル展開で一層の充実を図りつつある本学ビジネススクールにとっては、無くてはならない唯一無二の研究者である氏に名誉博士の称号を贈呈することは誠に時宜にかなっているというべきである。

ここに早稲田大学総長・理事・監事・評議員ならびに全学の教職員は一致して

野中郁次郎氏に

名誉博士(Doctor of Laws)の学位を贈ることを決議した。

学問の府に栄えあれ! 大学が栄誉を与えんとする者を讃えよ! (Vivat universitas scientiarum! Laudate quem universitas honorabit!)

2013年4月2日

早稲田大学

以上

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