法科大学院を基盤とした法曹養成の新たな試み
早稲田大学大学院法務研究科(法科大学院、研究科長:石田眞法学学術院教授)では、2013年4月より、同研究科出身者が中心となって設立する弁護士事務所「早稲田リーガルコモンズ法律事務所」(共同代表:遠藤賢治弁護士・河﨑健一郎弁護士。以下、コモンズ事務所)と連携して、法曹養成のための新しい教育プログラム『早稲田リーガルコモンズ・プロジェクト』(以下、WLCP)を開始することとなりましたのでお知らせ致します。
WLCPの目的は、同研究科が輩出した人材群が中核となるコモンズ事務所と協働して、明確な問題意識を持つ優秀な人材を、社会の広い分野に輩出する動きを加速することにあり、「実務家が実務家を育てる」というコンセプトのもとで、法科大学院を巣立った人材が法科大学院教育の一翼を担う「第二世代の教育」の実現を目指すものです。
法曹養成教育は、法科大学院のなかだけで完結するものではなく、法科大学院の真価は、輩出した人材群の質に現れ、さらにその人材群が次の世代の法曹を育成するという総合力によって計られます。同研究科では「挑戦する法曹」の育成を掲げ、法律学の知識のみならず、その知識を現実社会へ実践的に展開できる力を養うことを重視し、臨床法学教育(リーガル・クリニック)やエクスターンシップなど、実際に法が適用・運用されている現場に飛び込み、生きた法実務を学ぶ機会を積極的に提供してまいりました。WLCPにおいては、学生たちにさらに、ロースクール教育を熟知知悉した弁護士事務所で、法曹の世界との接点をより多く体験させ具体的な問題に挑戦する機会を与えることで、「骨太の法曹」を育てることが意図されており、法科大学院を基盤とした法曹養成に新たな動きをもたらす試みでもあります。
『早稲田リーガルコモンズ・プロジェクト』の概要
コモンズ事務所を、法務研究科と社会を結ぶプラットフォームと位置づけ、これを足場とした2つのプログラムを運営します。
1.次世代育成プログラム
幅広い分野の社会の先端的な問題をリアルタイムで取り込み、学生が法曹実務の先端的な問題に常に接する状況を作り出します。主なプログラムは以下のとおりです。
①コモンズ・エクスターン・プログラム
従来2週間程度に限定されていたエクスターンシップの枠を超えて、学生が日常的にコモンズ事務所に出向き、弁護士が受任する民事訴訟・刑事訴訟・行政訴訟等の訴訟業務、企業担当者向けセミナーや社会活動など幅広いテーマに参画します。
②ケース・プログラム(具体的事件検討プログラム)
事件ごとに参加学生を募集し、学生は、担当弁護士の法令・判例調査等の下調べなどを担当し、弁護士との議論を通して、関連法令・判例の理解を深めるとともに、実務処理の基礎的な手順などを学修します。
③未修者実務体験プログラム(フォローアップゼミ)
入学後のロースクール生活に悩むことの多い社会人・法学部以外の学部出身者の学修をフォローするゼミを開催するとともに、基礎的な実務体験を行うことで司法試験に挑戦する意欲を高めることを狙います。
2.育成弁護士制度
本学法務研究科の修了生、特に未修者として入学した者は、豊富な職業経験や法学以外の分野で学位を持つ者など、高い意欲と能力を備えた特徴的な人材が数多く含まれるにもかかわらず、年齢などの点からその能力を生かせる就職先を得られない場合があります。こうした有為な人材をコモンズ事務所が「育成弁護士」として毎年5人程度受け入れ、法曹としての実務経験を積ませたうえで、次の活躍の場に送り出します。育成弁護士はコモンズ事務所に2年間勤務し、パートナー弁護士と共に事件を受任し、法曹実務を基礎から学ぶことになります。さらに、次世代育成プログラムも担当することにより、自らが後輩の学修支援も担います。