早稲田大学芸術功労者 阿刀田高講演・朗読会 「小説のカレードスコープ――『大きな夢』を聞いて」

「早稲田大学芸術功労者阿刀田高展」が本学で開催されたことを記念し、2012年12月12日、小野記念講堂にて、「阿刀田高講演・朗読会小説のカレードスコープ――『大きな夢』を聞いて」(主催:文化推進部)が開催され、学生からご年配の方まで沢山のお客様が来場されました。

阿刀田慶子氏

阿刀田慶子氏

阿刀田高氏

阿刀田高氏

講演に先立ち、阿刀田氏の夫人で朗読家の阿刀田慶子氏により、阿刀田作品「大きな夢」が朗読されました。慶子氏は、男性、女性、外国人、子供などを多彩に読み分け、朗読でしか得られない独特の臨場感で作品に新たな息吹を吹き込みました。朗読にあまり馴染みのない若い学生達からも、「朗読の素晴らしさに惹き込まれた」という感想が多く寄せられました。

その後、阿刀田高氏が講演。「新しい人が世に出て行くときには、常に今までの人とはちょっと違うものを引っ提げて出て行かなければならない」と、自らが作家になった経緯を振り返り、小説におけるモチーフ(小説を通じて何を訴えたいか)の重要性を強調しました。また、松本清張が人間の生き様や社会の暗部などのモチーフを初めて推理小説に取り入れて、内容に深みを与えたことなどを紹介する一方、「モチーフが立派であっても良い小説になるとは限らない」として、小説を書くことの奥深さを語りました。

さらに志賀直哉の「城の崎にて」や、スタインベックによるチューイングガムが主人公の「M街七番地の事件」などの短編小説を例に、「短編小説は嘘をつき放題で、ばれそうになったときには急に幕を閉じればいい。そういう点では短編は色んなイマジネーションを発揮できるが、長編小説はリアリズムが中心となる。チューイングガムが主人公では、長編は書けない」などと、短編小説と長編小説の違いを説明しました。

最後に阿刀田氏は「自らの信条として大人のエンターテイメントを書きたい」として「大きな夢」のアイディアを披露。「エジプトに行ったときピタゴラスの定理からピラミッドが作られたことを聞き、私達は案外シンプルなものが持っている価値を忘れてしまうのではないか、またシンプルなものから帰納されてくる大きなものを失っているのではないかと考えた。その時、やっぱり日本国憲法だよなあと思った。紙一枚に書ける原理でピラミッドが作れたなら、紙1枚で書ける原理で世界の平和が作れないものだろうか、というモチーフから小説を書いた。井上ひさしさんへのオマージュのような意味も少し心の中にあって、生きていたら喜んでくれた小説だろうと思う。井上さんがよく選考会の後に『やっぱり読んだ後楽しくなる小説がいい』と話されていて、自分も楽しくなる小説が書きたい」と締めくくりました。

質疑応答では、「星新一さんとどのような交流があったのか」「ブラックユーモアを生み出す考え方があるのか」「先生の作品は男女の話がよくあるが、男女関係について鋭い観察眼があるのか」など、学生を中心に活発な質問が寄せられ、阿刀田氏はどの質問にも丁寧に回答しました。ユーモア溢れる明快なお話に、会場からは何度も笑いが起こりました。

文化推進部主催の阿刀田高講演会は、2009年、2011年に続き、今年で3回目となり、毎回好評を博しています。2011年は阿刀田氏が早稲田大学芸術功労者となられたことを記念して開催し、朗読と二本立てとなりました。阿刀田高氏は執筆活動に加え、2000年より短編小説の朗読公演「朗読21の会」を主催され、短編小説の魅力を伝える活動も行っています。

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早稲田大学芸術功労者 阿刀田 高 展

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