欧州との連携によるBeyond5G先端技術の研究開発 大容量アプリケーション向け高速無線伝送システムの構築に向けて

発表のポイント

  • 実際のネットワークに接続可能な300GHz帯高速無線伝送システムの構築を目指す
  • 日本側の高速無線信号処理技術・テラヘルツ(THz)帯増幅技術と、欧州側のTHz帯半導体回路技術を融合
  • 送受信器開発と並行して、伝搬モデル構築や標準化にも取り組む

早稲田大学理工学術院の川西哲也(かわにしてつや)教授の研究グループは、千葉工業大学、岐阜大学、日本電気株式会社、高速近接無線技術研究組合とブラウンシュヴァイク工科大学、ドイツテレコム(いずれもドイツ)等の欧州の7研究機関と共同で、「大容量アプリケーション向けテラヘルツエンドトゥーエンド無線システムの開発」を2018年7月1日に開始しました。本国際共同研究は、欧州委員会のHorizon2020および国立研究開発法人情報通信研究機構の委託研究として、2021年6月30日まで実施されます。

スマートフォン等の普及により、すべての利用者が高速かつ大容量のデータをやり取りすることが求められる現在、モバイルアクセスにおける5G/Beyond5Gシステム(※1)の実現に向け研究が進められています。Beyond5G システムでは莫大な数の基地局をネットワークに接続する必要があります。多数の基地局のためのネットワーク(バックホール・フロントホール(※2))は、都市部では伝送能力が高い光ファイバが用いられることが多いですが、途上国などの非都市部では依然として設置の容易性から伝送能力が低い固定無線が多数用いられています。日欧の都市部において莫大な数の基地局をすべてファイバで接続するのは困難であるため、光ファイバ通信に比肩しうる伝送能力と、従来の固定無線システムが持つ設置の容易性を兼ね備えた、無線技術への期待が高まりつつあります。

このことを実現するために本研究グループは、実際のネットワークに接続可能な300GHz帯高速無線伝送システム技術開発に取り組みます。日本側の有する高速無線信号処理技術、テラヘルツ(THz)帯増幅技術と、欧州側の有するTHz帯半導体回路技術を融合し、実際に屋外で使える100Gbps超級のTHzシステムを実現し、Beyond5G向け技術としての実用化を目指します。これまでのTHzシステムはリアルタイム動作や実環境での稼働の例がほとんどありません。実際にTHz帯を通信に使っていくためには、伝搬モデル構築や標準化が、送受信器開発と同等以上に重要となります。THzを送る/受けるに加えて、THzを使える電波にしていくための取り組みを同時並行させるのがこのプロジェクトの大きな特徴です。

本研究グループが取り組む技術課題

1) 屋内・屋外環境における100Gbps以上のフロントホール技術に関する研究

10mから1kmの範囲でのリンク性能に関する研究を行い、オフライン処理を用いて100Gbps以上の伝送速度を達成します。

2) 双方向のテラヘルツエンドトゥーエンド無線システムの開発

V/Eバンド(※3)の送受信モジュールを用いてリンクの距離1kmで伝送速度40Gbps以上のリアルタイム動作可能な300GHz無線システムを開発します。現時点で利用可能なモデムの性能から伝送速度の目標値を40Gbpsとしていますが、研究期間内にさらに高い伝送速度を目指した取り組みも行う予定です。ここで開発する無線装置はIEEE802.15.3d規格(※4)に準拠した315Gbps伝送システムへのスケーラビリティを有します。

3) キーデバイスに関する研究

300GHz高性能増幅器、300GHz帯周波数変換器、300GHz帯低雑音受信器、V/Eバンド信号合成・分配に関する研究開発を行い、上記のテラヘルツエンドトゥーエンド無線システムに用います。

4) 275GHz以上の帯域に関する国際標準化への貢献

WRC-19(※5)の議題1.15(275GHz以上のテラヘルツ帯域の活用に関する議題)に貢献します。300GHz帯の伝搬に関する研究成果などを国際標準化文書へ反映させることを目指します。

 

研究概念図

研究体制

  • 代表研究責任者(プロジェクトリーダー):早稲田大学理工学術院・教授 川西 哲也
  • 共同研究者(サブリーダー):千葉工業大学 枚田 明彦、岐阜大学 久武 信太郎、日本電気株式会社 佐々木 英作、高速近接無線技術研究組合 近藤 啓太郎
  • 欧州側研究機関:ブラウンシュヴァイク工科大学(ドイツ) (Coordinator)、ドイツテレコム(ドイツ)、フラウンホーファー応用固体物理研究所(ドイツ)、Siklu Communications(イスラエル)、リール第一大学/マイクロエレクトロニクス・ナノテクノロジ電子研究所(フランス)、シュツットガルト大学(ドイツ)、VIVID Components(イギリス)

用語解説

  • ※1 5G/Beyond5Gシステム

現在広く使われている携帯電話システムは第4世代(4G)とよばれている。これに対して、次世代システムとして第5世代(5G)の研究開発が進められており、移動中にもスムーズな動画の再生が可能になるなど広い分野での応用が期待されている。さらに、5Gの次としてBeyond5Gシステムの議論も始まっている。

  • ※2 バックホール・フロントホール

携帯電話の基地局間を結ぶネットワーク。バックホールは無線通信で伝送するデジタルデータをやりとりするネットワークをさす。フロントホールは無線機本体とアンテナを分離して狭いビルの屋上など様々なところにアンテナを置くことを可能とするために期待されている技術で、無線機本体で作られた電波の波形をアンテナまで伝える役割を担う。役割としてテレビ本体とアンテナをつなぐケーブルと同じであるが、要求される性能が高いため現在では光ファイバが用いられることが多い。

  • ※3 V/Eバンド

ミリ波帯の周波数帯域を指す。Vハンドは50-75GHz、Eバンドは70-90GHzを指す。大容量通信が可能であるために、最近、この帯域を使った無線システムの技術開発が進んでいる。本研究ではV/Eバンドの信号をもとにテラヘルツ帯の信号を生成する。

  • ※4 IEEE802.15.3d規格

ブルートゥースや無線LANで有名なIEEE802規格の1つで、THz帯を用いたものとして始めて規格化された。

  • ※5 WRC (World Radiocommunication Conference) 世界無線通信会議

各周波数帯の利用方法、衛星軌道の利用方法、無線局の運用に関する各種規程、技術基準等を始めとする国際的な電波秩序を規律する無線通信規則(RR: Radio Regulations)の改正を行うための会議で、各国主管庁及びITUに登録している事業者等の関係団体が出席し、通常3~4年 毎に開催される。(総務省HPより)

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