理工・木野教授ら「cis-4-ヒドロキシ-L-プロリン合成酵素」を発見

理工学術院・木野邦器教授(先進理工学部応用化学科)と原良太郎次席研究員(理工学研究所)は、アミノ酸誘導体である『cis-4-ヒドロキシ-L-プロリン』の合成に有用な新規酵素を発見し、協和発酵バイオ株式会社と共同研究を行い画期的な新規工業的製法(注1)の確立に貢献しました。

『cis-4-ヒドロキシ-L-プロリン』はアミノ酸の一種であるL-プロリンの4位が水酸化された化合物で、医薬品や香粧品の原料として用途が期待されています。『cis-4-ヒドロキシ-L-プロリン』の立体異性体(注2)であるtrans-4-ヒドロキシ-L-プロリン(注3)は、1997年に協和発酵バイオが発酵法による効率的な製法を確立して以来広く利用されています。一方、『cis-4-ヒドロキシ-L-プロリン』は煩雑な化学合成法でしか製造できず、高価であることから利用が限られていました。本工業的製法により高純度の『cis-4-ヒドロキシ-L-プロリン』を安価に、かつ安定に供給することが可能となります。

早稲田大学は研究者の産学連携を推進し、技術移転を通して社会に貢献し続けていきます。

プレスリリース協和発酵キリン株式会社

注1: プロリンに水酸基を入れる反応は化学合成では非常に困難です。従来、cis-4-ヒドロキシ-L-プロリンを得るには、生物試料からの抽出、あるいは発酵法で製造されたtrans-4-ヒドロキシ-L-プロリンの水酸基を化学合成によって位置を入れ換えるという手法を用いていました。この方法は、反応性の高い官能基を高価な試薬で保護し、水酸基を入れ換えた後に脱保護するというものであり、煩雑で多段階の工程を経るのでコストがかさみ収率ロスもあります。一方、今回確立した新規製法は、安価なL-プロリンに直接水酸基を導入する酵素を用いた1段反応であり、環境負荷が少なく高収率で安価な方法です。

注2: お互いに分子式は同じだが、3次元空間内でどのように移動・回転させても重なり合わせることのできない分子をいいます。注1の図にありますように、trans-4-ヒドロキシ-L-プロリンとcis-4-ヒドロキシ-L-プロリンとでは、水酸基の結合する向きのみが異なっており、立体異性体の関係と言えます。

注3: trans-4-ヒドロキシ-L-プロリンは皮膚のコラーゲン中に見られるアミノ酸で、コラーゲン構造を安定化させることが知られています。コラーゲン合成促進作用や角質層保湿作用があるとの知見もあることから、化粧品や健康食品等に広く用いられています。一方、cis-4-ヒドロキシ-L-プロリンはその立体異性体であり、生体成分ではありませんが構造がよく似ているので未知の薬理効果があるかもしれません。また、医薬品にはプロリン骨格を持つものがいくつかあるので、cis-4-ヒドロキシ-L-プロリンを安価大量供給できる体制を整えることによって、医薬品開発原料としての用途が広がるものと期待されます。

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