顕彰状 桜井正光氏

桜井正光氏は1942年東京都に生まれ、都立墨田川高等学校を経て、早稲田大学第一理工学部工業経営学科に入学し、1966年に卒業した。ただちに株式会社リコーに入社し、原価管理課を皮切りに技術本部や電子技術開発センターなど一貫して技術畑を歩んだ。1984年には、Ricoh UK Products Ltd. 取締役社長として英国に赴任し、コピー機関連の製造工場を立ち上げ、また1993年には、Ricoh Europe B.V. 取締役社長に就任して、オフィス情報機器の製造販売を成功させて、欧州における株式会社リコーの現在の確固たる地位の礎を築いた。約8年にわたる欧州での企業人としての活動は、欧州各国からもその功績を称えられ、2003年には英国から名誉大英勲章第三位(C.B.E)、2006年には仏国からレジオン・ドヌール勲章オフィシエ(4等)が授与されている。

1992年取締役、1994年常務取締役を経て、1996年に代表取締役社長に就任して11年間この職を務め、2007年に代表取締役会長となって現在に至っている。この間、株式会社リコーをコピー機メーカーから総合オフィス機器企業へと躍進させ、また業界に先駆けていち早く取り扱い機器のデジタル化に取り組んで、新たな競争力を得たことから、日本の製造業全体が不況にあえぐ中、代表取締役社長就任時と比較して売上高、従業員数ともに約2倍、純利益を約5倍へと成長させる経営上の功績を挙げている。

また、桜井氏は、企業の社会的責任 (Corporate Social Responsibility) についても、その取り組みの先駆者となり、株式会社リコーは日本企業ではもっとも早く社内にCSR室を設置して、この課題に取り組んだ。特に桜井氏は社内に「環境経営」という概念を確立して、ともすると企業にとって環境保全活動と利潤追求行動とがトレードオフの関係にあると考えられていた経営理論を打ち破り、生産性向上活動をベースとして環境保全を全うしつつ、利潤追求をも可能とする経営技術を打ち立ててこれを実行し成功させた。この結果は業種を問わず、他の企業にとっての模範となっており、桜井氏はこの分野で新たな経営パラダイムを築いたと言っても過言ではない。

こうした桜井氏の経営手腕は一企業の発展のためのみに役立てられるに留まらず、業界内では情報通信ネットワーク産業協会理事、社団法人日本記録メディア工業会理事、社団法人日本電子工業振興会理事、社団法人日本オプトメカトロニクス協会会長なども歴任し、業界の発展にも多大な貢献をした。また経済界全体という面からは社団法人日本経済団体連合会常任理事等を経て、2007年からは社団法人経済同友会代表幹事として、日本全体の企業経営者を束ねて、企業や経営の将来像を提言実行する経済界のトップリーダーとしても活躍している。

一方、桜井氏は技術者という立場から、研究開発の重要性を強く認識し、研究者や技術者の研究環境整備にも長年の尽力をした。社団法人高分子学会評議員、財団法人日本科学技術連盟評議員などを歴任する中、社団法人日本品質管理学会では会長も務め、科学技術の発展に大きな貢献をした。

早稲田大学に対しては、早稲田大学創立125周年記念事業計画諮問委員会委員として、創造的で価値の高い数々の提言をし、これらが記念事業の成功の大きな拠り所となった。また、2010年4月開講の大学院創造理工学研究科経営デザイン専攻の設立にあたっても、桜井氏はそのコンセプトからカリキュラムに至るまで、第一線の経営者の立場から卓抜した助言を与え、その発足の推進役として大きく寄与した。

桜井氏の経営者としての秀でた創造力と実行力、社会貢献への取り組み、そして人材育成への熱意は、早稲田大学建学の理念である「学問の独立」「学問の活用」「模範国民の造就」をまさに体現していると言っても過言ではない。

ここに早稲田大学総長・理事・監事・評議員ならびに全学の教職員は一致して 桜井正光氏に 名誉博士(Doctor of Laws)の学位を贈ることを決議した。

学問の府に栄えあれ! 大学が栄誉を与えんとする者を讃えよ! (Vivat universitas scientiarum! Laudate quem universitas honorabit!)

2010年4月1日

早稲田大学

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