雉子橋邸を知っていますか 第1回 大隈邸の変遷

四季折々の彩りで、学生・教職員や校友の憩いの空間となっている早稲田キャンパス・大隈庭園。

大隈庭園

かつてここに創設者・大隈重信の邸宅が存在したことを知らない人はいないでしょう。その様子は、『伯爵大隈家写真帳』の彩色写真などから伺うことができます。

早稲田大学図書館所蔵『伯爵大隈家写真帳』より

ほぼ唯一の遺構は Uni.Shop & Café 125 の前に佇む瀟洒な木造の小屋ですが、大隈邸の門衛所だったと言われています。

23-4号館はかつて、大隈邸の門衛所だった

早稲田大学図書館所蔵『伯爵大隈家写真帳』より

大隈自慢の温室では、さまざまな植物や果物が栽培されていました。メロンや盆栽は有名ですし、また1901年(明治34)の福沢諭吉の葬儀に際しては、一切の供物等を固辞した福沢家が、大隈邸温室で大隈手づから育てた切花だけはうけとった──というエピソードも知られています。

米国前大統領候補ブライアン一行の大隈訪問(大隈邸温室内)、1905年10月18日 大学史資料センター写真データベース所蔵写真B58-05をAIプログラムによって彩色加工したもの

米国前大統領候補ブライアン一行の大隈訪問(大隈邸温室内)、1905年10月18日 大学史資料センター写真データベース所蔵写真B58-05をAIプログラムによって彩色加工したもの

さて、歴史に詳しい方であれば、明治初期の大隈が築地に居を構えていたことをご存知かもしれません。けれども、雉子橋(現在の千代田区)にも大隈邸があったことはあまり知られていません。東京における大隈邸の変遷、そして雉子橋邸時代に起きた一大事件についてご紹介します。

雉子橋邸を知っていますか 第一回 大隈邸の変遷

大隈重信は、東京において五回住所をかえている。1868年(明治元)、大隈は新政府に登用されるが、しばらくは京都、横浜、東京、長崎など東奔西走する日々が続いた。1869年(明治2)2月、旗本・三枝七四郎頼永の次女・綾子と結婚し、同年4月、築地の旗本・戸川安宅の旧邸を政府から拝領して──戸川からすれば新政府に「接収された」のだけれども──東京にはじめて屋敷をかまえた。現在その地には料亭「新喜楽」が所在している。

築地大隈邸は約5,000坪もある広大なもので、多くの食客が常時滞在していた。伊藤博文・井上馨・山県有朋・五代友厚・大江卓・福地源一郎・渋沢栄一・前島密ら、さまざまな意味で明治社会の近代化を指導した人びとが、大隈邸もしくはその近辺に住んで常に議論しあっており、そのことから「築地梁山泊」とよばれた。

前列中央が大隈。ジャパンアーカイブス(https://jaa2100.org/)より

このあたりの事情を、早稲田大学百年史は次のように伝えている

伊藤博文もすぐ隣の小邸宅に住み、井上馨は大隈邸にある小屋を借りていたので、大隈と三人、維新政府の進歩派、急進派として最も親交を結び、書生暮しの気軽な二人は、大隈邸の裏口から入ってきては、台所で勝手な物を作らせて、自由に食っては帰った。そして朝から晩まで、政治改革の議論に、口角泡を飛ばしているので、木戸孝允と大久保利通は、いつもにがい顔をしていた。

この築地から日比谷の梁山泊にかけての出入りの者の名を大隈は少し漏らしている。薩摩出で、幕末に洋行して帰った新知識で、薩閥から弾き出された豪傑、後に鹿鳴館の命名者として有名な中井桜洲がいる。やはり薩摩出で、長崎で船の売買をしていた政商五代才助(友厚)がいる。五代は、天忠組の生き残りで後に大阪控訴院長、男爵となり晩年大和法隆寺に引退した北畠治房を引っ張ってきた。また大阪の富豪土居通夫は浪花芸者を伴い転げ込んで、何ヵ月も滞留していた。その他乱暴書生から、僧侶・神主、姿を乱してゴロ寝をしていて勝手に金を使い、借金までするが一向に払わない。中に渋沢栄一も出入りしているのは、乱暴叢中の礼一点、暴れ者の中のただ一人の君子である。しかしこの紛雑たる空気の中から、明治政府の革新政策の幾つかが生れ、鉄道はその最も著明なるものである。

1871年12月、大隈は屋敷を有楽町に移した。今の日比谷公園付近にあたる。ついで1874年(明治7)8月、神田錦町に移る。そして1876年10月、飯田町1丁目の雉子橋邸に屋敷を移転した。したがって雉子橋邸は、大隈にとって東京における4番目の邸宅ということになる。早稲田の別邸に本邸を移したのは明治17年であった。

文責:大学史資料センター・中嶋久人

雉子橋邸を知っていますか 第2回 権力中枢に近接する場

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