顧秉林氏は、1945年10月8日、中国黒龍江省ハルビン市に生まれた。1970年に中国清華大学理学部を卒業すると同時に、同大学に助手として採用され、その後、同大学大学院でエンジニアリングフィジックスを専攻し、研鑽を積んだ。また、1979年に、中国で文化大革命後初の政府派遣留学生としてデンマークのオーフス大学に留学し、1982年同大学より理学博士号を授与された。帰国後、1983年から母校清華大学の教壇に立ち、1988 年から教授に嘱任され、1994年から中国清華大学物理学科長、研究生院院長、副校長等を歴任。2003年清華大学校長に就任し、現在に至る。
顧氏は、長期に亘って物理学と材料科学の研究およびハイレベルの人材の育成に従事し、特に凝縮系物理学の分野ですばらしい成果を挙げてきた。主な研究領域はナノ量子構造の電子性質および輸送運動とそのデバイスへの応用、機能材料の組成や構造と機能との関係、機能材料のミクロ設計などである。これらの業績に対し、米国ノートルダム大学や日本の東北大学に客員教授として招聘されるなど、国際的にも高い評価を得ている。また、1999年には異例の若さで中国科学院院士に選出されており、顧氏は中国を代表する世界的にも著名な理論物理学者として広く認知されている。
顧氏はこれまで200を超える数の著書・学術論文を発表しており、その多くが科学引用インデックス論文として登録されている。このような材料物理学分野での数多くの業績に対し、中国における大学自然科学賞一等賞等、多数の賞が贈られている。また、学会活動にも積極的に携わり、中国物理学会副会長、中国ステレオロジー学会会長、アジア・パシフィック物理学会理事を兼任している。さらに、教育分野では中国国務院学位委員会物理学・天文学学科評議委員会の代表責任者、中国教育部物理・天文学教育指導委員会委員長を務めており、中国の物理学教育の発展に多大な貢献をなしている。
このように学者として卓越した業績が評価されている顧氏は、他方、1911年創立の中国を代表する清華大学学長として、同大学の研究・教育面での発展に大きく寄与した。また、顧氏は早稲田大学名誉博士王大中氏の後を継ぎ、清華大学と早稲田大学との学術交流活動に対し、深い関心を有し、これまで主導的な役割を果してきた。現在、「アジア太平洋地域における知の共創」を目指す早稲田大学としては、清華大学との一層の学術・教育交流の強化・拡大が期待されている折から、中国を代表する学者であり、清華大学校長である顧秉林氏に名誉博士号を贈呈することは誠に時宜にかなっているというべきである。
ここに早稲田大学総長・理事・監事・評議員ならびに全学の教職員は一致して
顧秉林氏に
名誉博士(Doctor of Science)の学位を贈ることを決議した。
学問の府に栄えあれ!
大学が栄誉を与えんとする者を讃えよ!
(Vivat universitas scientiarum! Laudate quem universitas honorabit!)
2005年3月25日
早稲田大学