『並列化コンパイラの父』が高性能低消費電力コンピューティング国際シンポジウムで講演

2018年3月8日、早稲田大学スーパーグローバル創成支援事業ICT・ロボット工学拠点は、アドバンスト・マルチコア・プロセッサ研究所、公益財団法人大川情報通信基金との共催で、International Symposium on Future of High Performance Green Computing 2018を開催しました。グリーン・コンピューティングシステム研究開発センターで行われたこの国際シンポジウムでは、高性能低消費電力(グリーン)コンピューティングに関する議論が行われ、基調講演者として今年度、情報通信分野に大いに貢献した人物に贈られる大川賞を受賞された米・インテル社のフェローであるUniversity of Illinois Urbana-ChampaignのDavid Kuck名誉教授を招聘しました。

University of Illinois Urbana-ChampaignのDavid Kuck名誉教授

Kuck教授は、処理の同時実行により高性能を実現する並列コンピューティングにおける並列ソフトウェア技術、並列アーキテクチャ技術のパイオニア的存在で、世界初のスーパーコンピューターILLIAC IVの開発にも携わっています。『並列化コンパイラの父』とも称されるKuck教授は、IEEE Computer Society Computer Pioneer Awardや近年、情報・通信分野における研究、技術開発及び事業において顕著な社会貢献、またそのさらなる発展と啓蒙に寄与した人物を表彰する大川賞を受賞されました。

講演中Kuck教授は、今後のハイパフォーマンスシステム開発者はプログラムコードとハードウェアの相互作用ついてのより詳細な解析が必要であることを提言し、これらを6つの解決困難だが可能な課題(codex selection, codex quality analysis, workload improvement, policy tools, hardware analysis per codex, そしてcodex design tools)として発表しました。

この分野に関わる研究者にとってKuck教授は影響力を持ち続けており、このシンポジウムの開催者で日本初のIEEE Computer Societyの会長である早稲田大学理工学術院の笠原博徳教授も、「博士課程の学生であったとき、Kuck教授の論文を読み、とても刺激を受けました」とコメントしました。

また、笠原教授は本シンポジウムで高性能マルチコア・コンピューティングの未来について発表しました。マルチコアはコンピューティングシステムの消費電力を抑え、処理能力を向上するとして注目されており、自動運転する車やスマートホーム、IoT、ディープラーニング、癌治療、画像処理、また、自然災害シミュレーションやスクエア・キロメートル・アレイ(SKA)電波望遠鏡といった科学的応用に使うことができます。

発表の中で笠原教授は、「今後、高性能低消費電力コンピューティングを実現するには、ハードウェアとソフトウェアの共創デザイン、特に自動並列化及び低消費電力制御が可能なコンパイラを有するマルチコア・システムが重要」と説明し、「高速メモリアクセスと自動並列ベクトル化が可能なベクトルアクセルレーターを有するOSCARグリーン・コンピューティング・マルチコアの実用化により、短期間で低価開発費でソフトウェアを開発可能な高付加価値システムを構築することができます。将来、非常に重要なテクノロジーとなってくるでしょう」と、語りました。

その後、シンポジウムでは世界の並列プログラミング、HPCの第一人者であるUniversity of Illinois at Urbana-ChampaignのDaivd Padua教授、IEEE Computer Society理事で低消費電力コンピューティングの著名研究者であるWestminster UniversityのVladimir Getov, Cambridge Universityの研究者で次世代大型天体望遠鏡開発SKAプロジェクトのメンバで並列分散ファイルシステムLustreの開発者としても世界的に著名な起業家Peter Braam氏、組込並列コンピューティングの第一人者であるSeoul National UniversityのJae Jin Lee教授による世界最先端の講演とラウンドテーブルを実施しました。

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