サッカー経験者は長く目を向けたユニフォームを好きになる 視線を効果的に誘導する方法に活用

早稲田大学スポーツ科学学術院・内田直教授は、西オンタリオ大学、高知工科大学、静岡大学との共同研究により、好みの対象を選び取る課題(選好判断課題)において、視線の誘導に影響される度合いの個人差を検証し、スポーツ用品を選ぶ課題ではスポーツ経験者で影響が生じることを示しました。実験では2着のサッカーユニフォームを見比べ好きな方を選び取る課題を大学生対象に実施し、サッカー経験者は視線を長く向けさせられたユニフォームを選択しやすいという結果が得られました。この成果は、視線を効果的に誘導する方法開発に向けた一歩と言えます。

本研究成果は日本体育学会の国際誌 International Journal of Sport and Health Science 電子版にて1月20日に先行公開されました。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ijshs/advpub/0/advpub_201528/_article

(1) これまでの研究で分かっていたこと(科学史的・歴史的な背景など)と検証内容

我々はしばしば「好きなものにはつい目が向く」と言います。しかしながら逆に、「目を向けたものを好きになる」こともあると過去の心理学研究は示しています[1]。たとえば、コンピュータディスプレイの左右に代わる代わる表示される顔写真を目で追って見比べる実験を行い、一方を少しだけ長く、たとえば一方を0.9秒他方を0.3秒表示しても、多くの人はこの時間差に気づきません。気づかなくても、我々は長く表示された顔のほうを「好き」と判断しやすいのです。視線の誘導による選好の誘導は、好みに選択肢間で甲乙つけがたいときに特に観察されます[2]。これは、見つめた行為が「好き」と判断する手がかりになっているためと考えられます[3]

[1] Shimojo, S., Simion, C., Shimojo, E. and Sheier, C. (2003). Gaze bias both reflects and influences preference. Nat. Neurosci., 6: 1317—1322.

[2] Armel, K.C., Beaumel, A. & Rangel, A. (2008). Biasing simple choices by manipulating relative visual attention. Judgm. Decis. Mak., 3: 396—403.

[3] Krajbich, I., Armel, K.C., & Rangel, A. (2010). Visual fixations and the computation and comparison of value in simple choice. Nat. Neurosci., 13: 1292—1298.

先行研究により、選択肢が全般的に好ましく感じられる人においては、視線の誘導によって選好を誘導されやすいと仮定できます。たとえば、サッカーが好きな人がサッカーユニフォームを選ぶ場合、どの選択肢も好ましく感じられやすいため、視線の誘導による選好の誘導の効果は上昇するという仮定になります。しかしながら、「サッカーが好き」と言っても、観戦が好きな人、プレーするのが好きな人、と多岐に及んでおり、好きなアクティビティーに関わる用品を選ぶ場合、どのような愛好の仕方が視線の誘導による選好の誘導の効果に影響するかは、検証されてきませんでした。その為、研究チームでは視線の誘導による選好の誘導が生じる個人差を検証しました。

(2) 実験方法

視線誘導効果本研究の実験は二つの部分で構成されています。

一つ目は視線移動の誘導による選好への効果の測定です。各試行ではヨーロッパリーグで使用されているサッカーユニフォーム2着をコンピュータディスプレイの左右に代わる代わる、一方は0.9秒他方は0.3秒、6回表示しました。主条件では参加者は表示の切り替えに合わせて目を動かしながら左右のユニフォームを比較し、各試行の最後にどちらが好きかを回答。統制条件では参加者は目を動かさずに両者を比較し、各試行の最後にどちらが好きかを回答。長く見た方を好きと回答した割合を、主条件と統制条件とで求め差分をとることで、目を動かしたことの効果が算出されます。

二つ目は、質問紙調査です。どのような仕方で対象を愛好すると視線誘導による効果がみられるのかを明らかにするため、観戦への興味、服飾に関する興味、ヨーロッパリーグに関する知識、サッカーチーム所属歴有無等について質問紙調査を実施しました。

(3) 今回の研究で得られた結果及び知見

実験には24人の大学生が参加しました。参加者全体については、視線誘導による選好誘導効果はみられませんでした。

そこで、質問紙調査から得られた観戦への興味・服飾への興味・ヨーロッパリーグの知識の豊富さについて平均値をとり、各項に関しこの平均値を境に参加者を2群に分けました。そして、視線誘導による選好誘導効果を群間で比較しましたが、視線誘導による選好誘導効果は見られませんでした。

IJSHS

a. 実験参加者全体 (24人) では、視線誘導による有意な効果は認められなかった
b. 実験参加者をサッカー経験者 (8人) と未経験者 (16人) にわけて分析すると、サッカー経験者では視線誘導による有意な効果が認められた

最後に、質問紙調査から得られたサッカーチーム所属歴について、所属歴有無で参加者を2群に分けました。すると、経験者のみで視線誘導による選好誘導効果が有意に示されました。すなわち、サッカー経験者に好きなサッカーユニフォームを選んでもらう際、どちらかを長めに見るよう視線を誘導すると、繰り返し長めに見たユニフォームを好きになっていました。本研究は、自分で体を動かして競技した経験が、好みの判断に関わってくる可能性を示唆しました。

(4) 研究の波及効果や社会的影響

この現象がさらに明らかになれば、スポーツ用品などの宣伝映像でどのように商品を見せれば効果的かが示されると考えられます。たとえば、特定のスポーツの経験者にそのスポーツに用いる器具をアピールする際、新商品と旧来の商品とを交互に呈示し、新商品への好感度を上げることが可能になるかもしれません。

(5) 今後の課題

実験から得られた個人差を説明するには、さらに大規模な調査を実施する必要があります。また、本研究ではサッカーユニフォーム選好課題を用いましたが、チーム球技以外のスポーツ(マラソンや駅伝、ボクシングなど)や視聴が可能なスポーツ以外の趣味(囲碁や音楽演奏など)で同様の効果が出るかを検証し、現象のメカニズムに迫る必要があります。本論文に示された実験系は、今後の研究の土台となることが期待されます。

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