2016年度 早稲田大学リサーチアワード WASEDA RESEARCH AWARD の受賞者が決定

早稲田大学では、独創的研究の推進と国際的な情報発信力の強化を目的として、2014年に早稲田大学リサーチアワードを設け、大規模な研究を主導的に推進している研究者および国際発信力の高い研究業績をあげている若手研究者を表彰しています。

本アワードには、大型研究プロジェクト推進(Large Research Project)と国際研究発信力(High-Impact Publication)があり、それぞれ正賞(賞状)ならびに副賞(大型研究プロジェクト推進は賞金50万円、国際研究発信力は賞金10万円)が授与されます。

早稲田大学リサーチアワード(大型研究プロジェクト推進)受賞者
WASEDA RESEARCH AWARD(Large Research Project)
(50音順)

2016年度
※前年度実績に基づく

氏名 研究課題名 研究費受入箇所名
大木 義路 電気・計装設備の長期健全性評価技術調査研究 理工学術院総合研究所
大聖 泰弘 燃料改質システムを利用したハイブリッド燃焼による熱効率向上 次世代自動車研究機構
高西 淳夫 極限環境下での高いアクセシビリティを持つ脚型ロボットの開発 理工学術院総合研究所
巽 宏平 自動車向けSiC耐熱モジュール実装技術の研究開発 情報生産システム研究センター
西出 宏之 革新的低コスト太陽電池の研究開発 理工学術院総合研究所
林 泰弘 汎用的な実証基盤体系を利用したシナリオ対応型分散協調EMS実現手法の創出 スマート社会技術融合研究機構

早稲田大学リサーチアワード(国際研究発信力)受賞者
WASEDA RESEARCH AWARD(High-Impact Publication)
(50音順)

秋本 崇之 秋本氏は、メカニカルストレスがどのように骨格筋の分化・組織形成、可塑性を調節しているかを解明すべく研究を進めている。同氏は分子細胞生物学をスポーツ科学に応用した先駆者であり、現在は、小分子ノンコーディングRNAであるマイクロRNA(miRNA)の役割に着目した独創性の高い研究に取り組んでいる。従来、分子細胞生物学は基礎医学の範囲だけでしか議論されなかったが、同氏の研究は極めて波及効果が高く、分子細胞生物学の分析手法や知見がスポーツ科学のみならず、高齢者の健康、生活習慣病といった我が国の社会問題へ応用される魁となった。同氏の学術論文は、生理学および生化学のみならず、スポーツ科学・トレーニング科学・分子細胞生物学・医学生物学・加齢科学と幅広い学術分野の国際誌に採択されており、国際的な評価は極めて高い。今後も国際発信力のある質の高い研究業績を積むなど、さらなる活躍が期待される。
秋山 充良 構造安全性評価に関する研究を展開しており、特に地震・津波・環境作用など、マルチハザードを受けるインフラ構造物のライフサイクル信頼性やリスク評価法を開発した点に新規性、独創性が認められる。また国際会議では基調・招待講演を多数行い、Lehigh大学などとの国際共同研究を展開し、海外学術誌に多数の論文を発表している。これら一連の成果に対し、国際学会から表彰を受けている。アメリカ土木学会をはじめ、国際学会において研究委員会委員長や学会運営幹事を務め、その活動を通し、世界各国の研究者とのネットワークを構築している。2014年には、早稲田大学においてライフサイクル工学の国際会議を開催している。更に欧州の道路基準の統一を図る会議にもアジア代表として参加し、我が国の防災技術等の普及に努めている。海外研究者の招聘にも力を注ぎ、海外研究者との連名により多数の成果を残している。一方、研究実践に関して、解析にかかわる緻密な論理構成術は非凡であり、理論的な解析とともに実験を続けており、その研究成果及び国際活動は耐震工学並びに構造信頼性分野に多大な影響を与え、高く評価されている研究者である。
岩瀬 英治 マイクロマシンやMEMS等の小さな機械に関して、有効に働く力や物理現象を積極的に利用する研究を推進し、独創的かつ先進的な研究をおこなっており、今後のエレクトロニクスの機能的基盤技術の方向を示唆するものと高く評価できる。また研究分野における最高・最大の国際会議での数多くの発表活動、またプログラム委員会活動などの国際会議運営に携わるとともに、発表論文が最優秀論文、論文賞最終候補に選出されるなど国際的に非常に高い評価を受けている。さらに日米工学アカデミー共催のシンポジウムにおいて栄誉あるSpeakerに選ばれるなど、国際発信力を有している。一方「自己修復型金属配線の研究」および「マイクロ折り紙の研究」は数学、物理、工学の融合の成果であり、折り曲げや振動が多い場所で使う電子回路など、幅広い用途での応用が期待されるものである。更にHarvard大学、MITの研究者と協働するなど幅広く研究成果を出しており、学術的、社会的波及効果を有した国際的な活躍が期待される研究者である。
上田 晃三 上田氏は、マクロ経済、国際金融論の分野で、デフレーション、中央銀行の政策、インフレ期待、景気循環、バブルなどの問題を、政策の効果を中心に研究し、高いレベルの研究成果を Journal of Economic Dynamics and Control などの主要学術雑誌に継続的に公表してきた。なかでも、世界金融危機の分析を試みた2012年の Journal of International Economics 掲載論文は、金融仲介機関のグローバル化が外部ショックの国際的波及効果を高めることを強調し、世界同時不況の存在を整合的に説明する重要な研究である。論文による研究成果の公表とともに、アメリカ経済学会、全米経済研究所といった報告機会が極めて競争的な国際学会での研究発表や、Bank of France=EHESSフェローとしての研究活動など、特筆すべき研究発信活動を行っている。以上の精力的な活動によって、上田氏は、この世代のマクロ経済学者として、また早稲田大学を代表する若手研究者として、主導的な地位を確立している。
岡島 義 岡島氏は、臨床心理学、精神医学、認知行動療法を専門とし、幅広いアプローチで不眠症を対象に研究を行っている。大規模縦断調査から不眠が抑うつの危険因子であることを明らかにした研究、睡眠薬治療抵抗性のある慢性不眠症に対して認知行動療法の有効性を明らかにした研究、不眠症に対する認知行動療法の効果メカニズムについて検討した研究など、国内外で先進的な研究を進めている点が高く評価できる。研究の学術的な波及効果に関しては、研究の多くが国際学会誌に発表され、国外の研究者との共同研究が複数あることが証明している。また、氏は、研究成果にもとづき不眠症改善のためのガイドブックを著しており、研究の社会的波及効果という点でも評価される。なぜならば、不眠の多くは一般には薬品による症状改善が図られるが、薬品による問題が解決できない不眠には認知行動療法による介入に症状改善効果が見られ、それに対する期待は大きいからである。学術的・社会的両面から、今後の研究の発展が大いに期待される。
下田 啓 歴史研究者である下田氏は、特定の時期を対象とした研究スタイルであるがその時代の枠組みに囚われず、より大きな視野にもとづき19世紀から現代にいたる日本歴史上の諸問題を描いている。2010年、アメリカ歴史研究の代表的ジャーナル The American Historical Review で発表された同氏の論文は、明治期の言語政策、とりわけ明治政府が国家作りと同時に、如何に共通語の創出に努めたかを追跡した力作である。また代表作である Lost and Found Recovering Regional Identity in Imperial Japan (2014) は日本における「中央」と「地方」の関係を会津地方の歴史を通して検討し、19世紀の激動のなかで、自らを見失った会津が、如何に自らのアイデンティティを再発見したかを描き出した。帝国日本の内的側面に注目した本研究は、従来の中央・地方関係史研究に一石を投じたものである。さらに下田氏は、外部研究機関の重要プロジェクトメンバーとしても活躍し、バブル崩壊後の現代日本が抱える諸問題について注目すべき論考を発表し、各界からの注目を集めている。若手の研究者で、19世紀から現代までの日本史上の諸問題を研究領域に設定した研究者は少なく、下田氏の研究者としての視野の広さは高く評価されよう。英文による論文と著作がアメリカの代表的なジャーナルと大学の出版部で出版され、最新の研究成果を広く世界に発信している下田氏は、本アワードに相応しい新鋭の研究者である。
千葉 清史 千葉清史氏はカント哲学を専門とし、長期にわたりドイツにて研究を進め、2012年、その成果を大著 Kants Ontologie der raumzeitlichen Wirklichkeit: Versuch einer anti-realistischen Interpretation der “Kritik der reinen Vernunft” として刊行した。本書は、ボン大学から Kant Preis を授賞されただけではなく、複数の書評対象に選ばれ、優れた研究として高く評価され国際的にもおおいに注目された。その研究は、カントの思想におけるもっとも難しい部分および核となる要素について取り組んだものであり、独自の理解を示した独創性の高い内容は、18世紀から現代に至る哲学研究にさらなる一歩を加え、世界レベルにおける哲学研究の進歩に寄与したと評価できるものである。同時に千葉氏は、優勝な語学力を活用して海外の研究者と積極的に交流しており、その姿勢は、日本の研究状況の国際化に少なからず貢献しており、これについても高く評価できる。研究内容の先進性および国際的発信力ともに、今後さらなる活躍が期待できる研究者である。
シルヴァン  ドゥテ ドゥテ氏は、フランス本国並びにフランス語圏の研究者を中心に行われているフランス語音声コーパスプロジェクト、PFC(Phonologie du francais contemporain:現代フランス語の音韻論)の重要な部門であるPFC-EF(PFC – Enseignement du francais:現代フランス語の音韻論-フランス語教育)、およびIPFC(Interphonologie du francais contemporain:現代フランス語の中間言語音韻論)を推進する中心的な研究者で、氏の多彩な活動は、学術・教育の両面において独創的で示唆に富む。広汎にわたるコーパスデータの実証研究では、コーパス研究の有効性を示し、個々のケースにおいて新たな学術的知見をもたらしており、その丁寧な議論には説得力がある。またフランス語の規範的発音だけでなく社会言語的バリエーションをもコーパスで提供している点の教育的価値は特筆に値する。フランス語学習者がバランスの取れた言語観を養い、自然なフランス語発音を習得する上で、国内外を問わず今後望ましい波及効果が大いに期待できる研究成果だといえよう。
柳谷 隆彦 柳谷氏は、超音波・固体音響学を専門とし、バルクから薄膜に至るまで種々の圧電材料を用いたデバイス開発において顕著な研究業績を挙げてきた。特に、次世代の高周波通信において重要な要素となる周波数フィルタの高機能化に寄与する材料・デバイス作製技術は先端的な研究であり世界的に注目されている。米国大手半導体メーカとの協力関係はその成果と言える。また、高周波素子のみではなくセンサへの応用など、圧電デバイスの可能性を広げる研究も行っている。IEEE Transaction、Applied Physics Letter 誌等、電気分野、物理学分野で国際的に注目される雑誌に多数の論文発表を行い、国際会議の運営にも寄与するなど、独自の研究を広くアピールしている。また、IF (impact factor) の高いScientific report 誌の編集委員を務めるなど国際的に活躍している。圧電膜に関する研究は企業との多数の共同研究に結び付いており、特許出願を含め、研究成果の実用化に関心が高いことを示している。
吉田 敬 吉田敬氏の研究は、代表的著作 Rationality and Cultural Interpretivism: A Critical Assessment of Failed Solutions にみられるように、社会科学における文化解釈主義と実証主義の関係性について、科学哲学・文化人類学・政治哲学など多様な学問分野の視点から批判的な考察を行なうものである。欧米の最前線の議論に参与するその内容は、きわめて高いオリジナリティと先進性に富み、本分野の研究を国際的レベルで一歩前進させるものとなっている。また Social Epistemology 誌に掲載された論文『Re-politicising philosophy of science』は、冷戦期に科学哲学が脱政治化され、科学哲学と社会哲学とが分離し、科学哲学における科学批判機能が失われてしまっている米国を中心とした現状に対し、再び批判的機能を取り戻すべきことを主張したもので、日本から世界にむけての重要な問題提起ともなっており、大変、意義深い。このように、研究の独自性および国際的学術界への影響力において、これまでの業績に加え、今後についてもおおいに期待される研究者である。
寄田 浩平 寄田氏は、これまで国際的巨大プロジェクトである米国フェルミ国立加速器研究所におけるTevatron実験やCERN(欧州原子核研究機構)におけるLHC(大型ハドロン衝突型加速器)による高エネルギー実験に参加し、素粒子物理の有意義な研究成果を上げてきた。特にヒッグス粒子による質量起源機構の本質であるフェルミ粒子との湯川結合の実証を行った研究は、素粒子物理学の標準モデルを強く裏付けるものでありその業績は偉大である。またこの研究は宇宙初期における自発的対称性の破れ、真空の相転移を強く裏付けるものであり、学術的波及効果も極めて大きい。この研究は多数の研究者の国際共同実験の結果であるが、寄田氏は日本グループが参加しているATLAS検出器実験グループの一員として、検出器開発、トリガーシステムの構築、データの物理解析で大きな寄与をしている。また同氏は5年余にわたって米国フェルミ国立加速器研究所、シカゴ大学において研究を推進した実績のもとに、世界の多くの研究者とネットワークを構築し共同研究を多数実施しており、それらの結果が報告された多くの論文は被引用度も高く、研究の国際発信力は極めて大きい。さらに現在同氏は宇宙の謎とされている暗黒物質の解明のための実験研究も並行して進めており、今後の活躍が大いに期待される。

 

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