デバイス形態は「着る」から「貼る」へ 筋肉の活動を計測する電子ナノ絆創膏

11月16日、高分子学会広報委員会主催の記者発表会にて、先進理工学研究科の武岡真司教授、藤枝俊宣助教、先進理工学研究科一貫制博士課程3年山岸健人氏らのグループは、Italian Institute of Technology のAlessandra Zucca 研究員、Francesco Greco研究員、Virgilio Mattoli主任研究員らの研究グループと共同で、皮膚に貼り付けて生体電気信号を計測可能な極薄電極(電子ナノ絆創膏)を開発したことを発表しました。本研究内容の詳細は11月26日(木)~27日(金)にタワーホール船堀で行われる第24回ポリマー材料フォーラムにて発表されます。

電気を通すプラスチック(導電性高分子)からなる電子ナノ絆創膏は、厚さ240 ナノメートル(1 ナノメートルは100 万分の1 ミリメートル)と非常に薄く柔らかいため、接着剤を用いずに皮膚に貼ることが可能です。この電子ナノ絆創膏を腕に貼り付ければ、屈伸運動に応じて筋肉の活動電位(表面筋電位)を瞬時に計測できます。電子ナノ絆創膏は、ロールto ロールのような印刷技術によって大量製造も可能1)なため、次世代型ウェアラブルデバイス開発の進展に大きく貢献すると考えられます。

ナノ絆創膏図1

身体に装着することで様々な生体情報(体温、pH、心拍、筋電位など)を計測できるウェアラブルデバイスは、日常生活のみならず医療やスポーツの現場においてもその重要性を増しています。最近では、柔らかい高分子薄膜上に電子回路を形成することで、シールのように皮膚に直接貼り付けられるデバイスも報告されており、デバイス形態は「着る」から「貼る」時代へと進展しつつあります。しかし、皮膚などの柔らかい生体組織にデバイスを違和感なく貼り付けるためには、電子回路を構成する硬い金属部分(例:配線・電極)をプラスチックのように柔らかくする必要があります。また、作製時間やコストを抑えるためには、従来の微細加工技術に頼らない印刷技術を利用した新たな大量製造方法の確立も重要です。

これまで早稲田大学の研究チームでは皮膚や臓器に対して高い密着性と追従性を有する医療用高分子ナノシート(ナノ絆創膏)を開発してきました。今回の研究では、ロボット工学を専門とするItalian Institute of Technology (IIT)と国際共同研究のもと、ナノ絆創膏の素材に電気を通すプラスチックである導電性高分子ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)を利用することで、「電子ナノ絆創膏」を新たに開発しました。電子ナノ絆創膏は、数十~数百ナノメートル(1ナノメートルは100万分の1ミリメートル)という超薄性に由来する高い柔軟性と密着性を示し、皮膚に貼り付ければ電極として生体電気信号(例:表面筋電位)を検出することができました。また、ナノ絆創膏の開発研究で培ったロールtoロール法と呼ばれる連続式印刷技術を応用することで、面積にして従来の平方センチメートルから平方メートルサイズまで大量に製造する方法も新たに確立しました。

電子ナノ絆創膏は糊や粘着性ゲルなどの接着剤を使わずに皮膚にナノレベルで密着・追従するため、スポーツ(例:フットサル)の際に生じる皮膚の伸縮や発汗条件下でも、破れたり剥がれたりすることなく安定して装着可能です。また、電子ナノ絆創膏を電極として利用してヒトの筋肉の活動を計測したところ、医療機関で用いられる金属製電極パッド(粘着ゲル付き電極)とほぼ同等のシグナル-ノイズ比で表面筋電位を検出できることが新たに分かりました。

今回の研究では、表面筋電位の計測を通して電子ナノ絆創膏が生体貼付型電極として利用できることを実証しました。電子ナノ絆創膏は、その超薄性に由来する柔軟性と密着力によって、皮膚表面にやさしくフィットするため、装着時の違和感がほとんどありません。さらに、接着剤を使わないので、はがす際の皮膚へのダメージ(角質の剥がれ等)も最小限に抑えられます。したがって、アスリートの運動計測から幼児、高齢者、障がい者のヘルスケアにいたるまで幅広い応用が見込まれます。さらに、バイオロボティクス分野においては、生体信号を用いる装着型デバイスのデザインを飛躍的に発展させ、将来的には、義足・義手や装着型ロボットへの適用も期待されます。現在では、各種印刷技術と組み合わせることで、より精巧な電子回路を実装した生体計測デバイスの開発も進めています。

今後、ウェアラブルデバイス、フレキシブルエレクトロニクス、ヘルスケアデバイス、バイオセンサー、ヒューマンマシンインターフェース/ブレインマシンインターフェース、義肢、装着型ロボットといった分野への適応が期待されています。

ナノ絆創膏図2

1)参考:Zucca, A.†, Yamagishi, K.†, Fujie, T.*, Takeoka, S., Mattoli, V.*, and Greco, F.* “Roll to Roll Processing of Ultraconformable Conducting Polymer Nanosheets”, J. Mater. Chem. C., 3, 6539-6548 (2015).(*Corresponding authors, †Equal contribution) DOI: 10.1039/C5TC00750J.

 

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