憲法 #オピニオン

Waseda Online に掲載された本学教員のオピニオンから、憲法にかかわる諸問題を扱ったものを集めました。

大日本帝国憲法発布満20年記念式で講演する大隈重信(1909年2月)

大日本帝国憲法発布満20年記念式で講演する大隈重信(1909年2月)
大学史資料センター 写真データベース B25-01

2009年3月

稲継裕昭(政治経済学術院教授)「公務員制度改革 ── 官僚叩きに走らず冷静な議論を」

憲法15条が示すように「公務員は国民全体の奉仕者」であり、良質の公務員制度は国民の共有財産である。憲法の趣旨からいうと、公務員制度改革の議論は、国民サービス、住民サービスに資する有能な公務員集団をいかに構築するかと言うことに最大の焦点があてられるべきである。

2010年2月

河野勝(政治経済学術院教授)「政治とカネ、そして民主主義」

民主党小沢一郎幹事長とその周辺をめぐる一連の事件により、政治とカネに関するルール作りの難しさが、改めて浮き彫りになっている。周知のとおり、日本の政治資金規正法は、これまでに幾度となく改正を重ねてきた。改正のたびに、あとからその不備をつく問題が浮上し、さらにまた次の改正をしなければならなくなることが延々と繰り返されてきた、というのが実情である。

2012年10月

間野義之(スポーツ科学学術院教授)「「超民主主義」の象徴としてのオリンピック」

国際オリンピック委員会(IOC)はスイス国内法で認められた民法法人であり、国際連合(UN)や世界貿易機関(WTO)あるいは国際原子力機関(IAEA)などの各国政府が参画する国際機関とは異なる。国際機関の構成員は国家であるが、IOCの構成員は私人であるIOC委員である。私人の集合体であるIOCがオリンピック競技会を主催し、ロンドンオリンピックでの記憶も新しいように、世界中の人々を魅了しているのである。

2013年6月

中島徹(法学学術院教授)「「憲法を国民の手に取り戻す」は本当か ── 人権制限と権力解放の自民改憲案」

私は、昨年の9月からニューヨークに滞在中で、衆議院選挙後の憲法をめぐる日本国内の状況を肌で感じているわけではない。また、憲法改正については是々非々の立場である。しかし、現在とりざたされている96条改正論には多くの疑問を覚える。以下、問題点を指摘しながら考えてみたい。

2013年7月

片木淳(政治経済学術院教授)「「ネット選挙」と選挙運動規制の全面撤廃 ── 初解禁は低調、矛盾も露呈した「べからず集」」

昨日、行われた参議院選挙では、自由民主党が圧勝し、公明党と合わせて過半数を獲得、いわゆる「衆参のねじれ」が解消されることとなった。投票率は、現時点(7月22日午前)の推計で52%前後と、前回(57.92%)から下落し、低水準にとどまった(読売新聞)。

2013年11月

水島朝穂(法学学術院教授)「特定秘密保護法」の問題性 ── 原則と例外の逆転へ」

「開かれた政府」を標榜する民主主義国家においては、情報の公開が原則であって、秘密は例外的にのみ認められる。秘密保護には特別の正当化が必要となる。日本にも、国家公務員法や地方公務員法、自衛隊法、刑事特別法、日米相互防衛援助協定(MDA) に伴う秘密保護法など、秘密保護に関する法的仕組みがすでに存在している。それぞれに問題点を含むが、ここへきて、安倍政権は新たな「特定秘密保護法」を制定しようとしている。これは、日本における、戦後初の包括的な秘密保護法制になるだろう。安倍晋三首相の好む言葉で言えば、戦前のような秘密保護法制を「取り戻す」可能性が高い。なぜ、いま、新たな秘密保護法が必要なのか。この法律の制定を正当化しうる理由(立法事実)は何か。

2014年2月

齋藤純一(政治経済学術院教授)「選挙結果は「民意」の反映か? ──「数」の力から「理由」の力へ」

「民意」とはよく耳にする言葉であるが、その意味は必ずしも一義的ではない。その意味について少し考えてみたい。

2014年4月

守中高明(法学学術院教授)「≪秘密≫の系譜学 ── 来たるべき民主主義へむけて」

現代社会を生きる市民にとって、秘密とはどのような位置を占め、どのような価値を持つ概念なのか。これはいっけん素朴な問い、あるいは自明の答えのある問いと映るかも知れない。しかし今日、秘密ほど多層的な意味を持ち、高い負荷を帯びた概念はない。それがどのように保持され機能しているかによってある社会の成熟度が測られるほど、秘密は重要な概念なのである。だが、それはいったいどのような意味においてか。

2014年6月

長谷部恭男(法学学術院教授)「“国民の生死”をこの政権に委ねるのか? 集団的自衛権―憲法解釈変更の問題点」

日本政府は、憲法9条について、日本を防衛するための必要最小限度の実力の保持とその行使は禁じていないとの立場をとってきました。国連憲章51条の規定する自衛権のうち、自国を防衛するための個別的自衛権は行使できます。他方、自国と密接な関係にある外国が攻撃を受けたとき、それに対処するために実力を行使するという集団的自衛権は、日本を防衛するための必要最小限度の実力の行使とは言えないため、憲法の認めるところではないとされてきました。この概念が、ソ連によるチェコスロヴァキアへの侵攻やアメリカによるベトナムへの攻撃等の際、不当な軍事力の行使を正当化するために使われ、集団的自衛権への懸念を深めてきたことも背景にあります。

2014年8月

西原博史(社会科学総合学術院教授)「解釈になっていない閣議決定は0点答案 ── 集団的自衛権問題と憲法9条のいま」

憲法は「空気のよう」に個人の自由を守っています。私たちが問題提起発言をしても処罰されないのは、日本国憲法が表現の自由を保障しているからです。自分たちの手で憲法を変えてしまえば、国家権力が好き勝手に国民を弾圧できるような世の中だって作れます。表現の自由を保障する条文に、「公益を害するときは別」と書き加えればいいだけです。自民党の2012年憲法改正草案がやっているように。

2014年12月

戸波江二(法学学術院教授)「安倍内閣の衆議院解散決定は、解散権の濫用である」

2014年12月の総選挙は、明確な争点がなく、大多数の国民が関心をもたず、そのため52.67%という戦後最低の投票率で行われ、当初からの予測どおり自民・公明の圧勝に終わった。この結果は、解散の大義のないまま政権のさらなる安定をもくろんで解散・総選挙に打って出た安倍政権のねらい通りのものとなった。しかし、今回の解散・総選挙には、「解散権の濫用」という重大な憲法上の誤りがある。つまり、解散の理由のないまま党利党略によって解散を断行したこと、喫緊の課題である議員定数の是正をしないまま解散したこと、の2点において、憲法上許される解散権の行使の範囲外での解散決定であった。

2015年4月

天児慧(アジア太平洋研究科教授)「戦後70年と日中韓関係 ── 若者そしてアジアへのメッセージ」

今年は「戦後70年」である。私たちはどのように受け止め考えるべきか。それを考えようとすると、その前にある「長い戦争の歴史」に思いが向いてしまう。まずこれに関して、確かに第二次世界大戦の評価をめぐり「侵略戦争」ではなかったという見方が日本にはある。そしてそのような歴史認識に対して、中国、韓国をはじめとするアジア諸国、あるいは欧米諸国から厳しい批判がなされてきた。70年もの歳月を経ながら、この戦争にたいする日本国自身の態度を明確にしてこなかったことは嘆かわしいと言わざるを得ない。戦争の原因論から見れば、欧米のアジア侵略に対する「アジア解放」の戦いだったとの解釈もありうるが、結果論から見れば、日本がアジア諸国の人々や領土を蹂躙し、強制的に自らの勢力圏に置こうとした「侵略戦争」、さらには無謀にも欧米に戦いを挑み敗れた戦争であったのは疑う余地はない。すでに「村山談話」をはじめ、わが国の指導者はこの事実を直視し、真摯に謝罪を行ってきたが、それに反論する声も大きく、日本の誠意が疑われてきた。この点で「戦後70年」の今年は「安倍談話」を通して日本の総意を明確に世界に示し、この問題に決着をつけねばならない。

2015年6月

マニュエル ヤン(社会科学総合学術院助教)「「捕らわれ人には自由を」── 警察暴力、暴動、アメリカ民主主義の黄昏」

今年、三月三日にロサンゼルスから東京へ引っ越してきた。フェイスブックを開けたとき真っ先に目に飛び込んできたのは、「アメリカのホームレスたちの首都」と呼ばれるスキッドロウに住むカメルーン出身のホームレス、チャーリー・ケウンドゥ・ケウナンをロスの警官が射殺した直後の映像であった。

2015年7月

ソジエ・内田恵美(政治経済学術院教授)「首相の言葉はなぜ変わるのか? 佐藤栄作~安倍晋三」

歴代の内閣総理大臣の演説を分析してみると、そこに語られる国家と国民の関係は一様ではない。政治・社会の構造的変化によって、国家指導者が国民に対する姿勢を変えざるをえなかったことが見てとれる。

2015年7月

笹田栄司(政治経済学術院教授)「憲法を護るものは誰か ── 内閣法制局の“黄昏”」

憲法の番人として、まず思い浮かぶのは最高裁だろう。最高裁は最終審として、違憲審査権により立法や行政の権限乱用を是正する。しかし裁判所は基本的に、権利や法的利益の侵害がない訴訟を取り上げることはしない。具体的事件の存在が必要なのである。

*Waseda Online では執筆者の研究に基づく論考・評論等を紹介しています。これらの論考・評論等は、早稲田大学としての見解を表明するものではありません。

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