「研究室を訪ねて」第4回は、政治経済学術院の堀真清教授の研究室を訪問しました。
──大学図書館にかなり寄贈されたあとですが、まだ本が山積みになっていますね。
「片づければよかったのでしょうが、広報課から『そのままで』というメールが来たので(笑)」
──全部目を通されているんですか。
「一応そういうことにして下さい(笑)。本を読むのがとにかく好きな消費者ということです。」
「本を読むということは内容を使うためなのでしょうが、論文を書くにあたって必要な情報が書いていないことを確かめるために読む、ということかもしれません。」
──先生は日本政治史やファシズムの研究をされてきたそうですが、現在の研究に至った背景を教えてください。
「僕が学生のとき、五・一五事件(1932年)の当事者や、二・二六事件(1936年)について論文を書くときにも、関係者のもとに何年も通いつめました。僕を信頼していただけたことで、資料を集めることが出来たのが嬉しくて──というのが研究の発端です。」
「左翼であれ、右翼であれ、真っ直ぐに、ひとつのことに邁進する、そういう人が好きなんです。」
──たくさんの手紙が研究室のドアに貼られていますね。
「これは、自分が書いた本に対して頂いた”お叱り”や“お世辞”を貼る場所なんです(笑)」
「そしてこちらは鹿野[政直]先生、それは丸山[眞男]先生にお会いした時の記録。丸山先生は病床に起き上がって話してくれて、最後に激励していただいてね……。私信なのであまりお見せできませんが、大江[健三郎]先生をはじめ、多くの方からお手紙を頂きました。僕も読んだ本の感想をお手紙にして送りますし、寄贈していただいた本のミスプリントなどもお伝えするようにしています。」
──先生の研究の展望をお聞かせください。
「僕は右翼から左翼、そしてデモクラシーへと研究を進めてきましたが、次は権力の本体について勉強したいと考えています。日本がファシズム国家からどう抜けて、民主化へと進んだのかをアジア諸国へと伝えていきたいと思っています。東アジアの現状と取り組むことも無論です。」
──先生の研究を継ぐ方々はいらっしゃるんですか。
「僕の研究室の学生の中にも何人もいます。他人(ひと)に期待されるということが大事です。どんなに研究をしても一生涯で出来る範囲は限られているんです。お互いに切磋していきたいものです。」