演劇人が語る 早稲田と演劇
まさに今、舞台で活躍する演劇人に、早稲田演劇の魅力や、演劇への思いをお聞きしました。
芸術文化としての演劇が改めて認知される日に期待
長塚圭史
どらま館が復館するという報せを聞いて大変うれしく思います。私は1998年に阿佐ヶ谷スパイダースの公演で1度だけ使用したことがあります。どの劇団もより多くの観客を呼んでメジャーになりたいという欲望のあった時代。どこそこは何人の観客を入れているぞ、というようなことを私自身も随分と意識した時代があります。
昨今は現代演劇の様相も変わりました。それぞれの表現形態に見合う規模で継続して、創作してゆくことこそ幸福とします。またそうした創作に時間と場所を提供し、金銭的負担を軽減させてくれる(多くは公立の)機関も増えました。どらま館もこれまで以上に学生に開かれた劇場になるのでしょう。
私は演劇の興行的な側面と芸術性の融合を願う者でありますが、演劇が改めて芸術文化として認知される日がやがて訪れるであろうことに大いなる期待を抱いています。どらま館が、早稲田演劇の新たな拠点として、良質な作品を多く生み出してくれることを楽しみにしています。
それでもなお、私が学生だった頃のあの熱さは懐かしく、劇場の熱を生んでいたように思うのです。演劇とは商戦ではなく芸術的な創作なのだと言えばそれまでなのですが、若者の憑かれたような熱気と芸術性とが混じり合う、刺激的なシーンが再び立ち上がらないものかと、どらま館に大いに期待しているのです。
Profile
ながつか・けいし
劇作家、演出家、俳優。劇団「阿佐ヶ谷スパイダース」主宰。「葛河思潮社」代表代行。2015年10月1日〜17日に紀伊國屋サザンシアターにて上演される舞台『十一ぴきのネコ』の演出を担当する。