顕彰状 リヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー氏

顕彰状

 ドイツ連邦共和国第6代連邦大統領リヒァルト・フォン・ヴァイツゼッカー氏は、1920年4月15日シュトゥットガルトに生まれた。氏は、ゲッティンゲン大学にて歴史学と法学を学び、司法試験に合格して1953年、同大学から法学博士の学位を取得した。氏は、経済の様々な分野で活躍後、教会と政治の分野で活動を始めた。

1964年から1970年、及び1979年から1981年までドイツプロテスタント教会会議議長を務めた。同教会が編さんした『東欧報告書』は、ドイツ・ポーランド間の緊張緩和に特に貢献した。また1954年以来、ドイツキリスト教民主同盟に所属し、1984年まで党幹部の要職にあった。1969年から1981年までは、連邦議会議員であり、1979年から1981年に副議長を務めた後、1981年に西ベルリン(当時)市長に就任した。当時分断状態にあった同市には、世界に開かれた自由な政策が求められていた。氏は、西ベルリン市長として、初めて当時の東ドイツ・ドイツ民主共和国を訪問した。

1984年、氏は圧倒的多数の支持を得て、ドイツ連邦共和国第6代連邦大統領に選出された。その在職10年間にドイツ統一が実現し、氏自身及びドイツ全体に対する尊敬と信頼が高まった。終戦40年を迎えた1985年5月8日の演説で、氏は次のように述べている。「1945年5月8日は、ドイツ人にとって決して祝う謂れはないが、ナチスドイツの非人道的暴力支配体制からの開放の日であった。真実を直視することが、重要である。意識から遠ざけず、忘れ去ろうしなければ、新たな出発の機会がある。心に刻み、思い起こす限り」。この演説は、歴史を顧みたとき、ドイツとヨーロッパの分断を平和裏に解決する上で画期的なものとして、ドイツ内外で高い評価を受けた。

国家元首の地位を退いた後も、氏は、精力的に社会活動に勤しんでいる。1995年には、当時のガリ国連事務総長の要請を受け、12人委員会の主査として国連改革提案をまとめた。また、ドイツ内外の多数の大学にて、政治、社会、歴史、文化と幅広いテーマに関し、講義や講演を行い、その成果として『4つの時代』(回想録)、『原点三度』そして最近著として『如何なる世界を望むのか』等、数多くの著作を公刊した。

1999年には、EU委員会委員長ローマン・プローディ氏から招聘された「三賢人」の一人として、EU機構改革案構築に尽力した。また翌年まで「連邦国防軍の共同安全保障と将来」委員会委員長を務めた。2002年には、国連の報告書『将来への架け橋-文明相互の対話に向けて』を編さんした。また、2003年から本年まで、国際バルカン委員会委員を務めた。

元連邦首相ヘルムート・シュミットは、その回顧録『同行者』において、ヴァイツゼッカー氏の果たした役割を次のように的確に評している。「氏は、歴史と責任に対する明確な意識を持ち合わせたが故に、連邦大統領としての在職10年間、精神的な灯台となり、道標となった。その人格は、我々ドイツ人にとって重要な最良の美徳と精神的宗教的価値の麗しき共生である」。氏は、常に意思の疎通を図ろうとする考え方のもとに姿勢を堅持し、特に統合後のドイツ国内の発展、対外的な和解、そして世界におけるドイツの役割向上に、大きく貢献した。

特に明治以降、ドイツと日本は、堅く友好的な絆で結ばれ、日本にとって、ドイツは最も尊敬すべき国の一つである。そのドイツは、東西の統ーという偉業の後、ヨーロッパ統合を進展させ、世界平和に大きく貢献している。ドイツがこうした世界貢献を為している理由の一つに、卓抜な見識と誠実な人格の持ち主である氏が連邦大統領に就任されていたことを挙げることができる。

早稲田大学においては、ボン大学、ボン市、ノルトライン、ヴェストファーレン州等ドイツ関係機関の協力のもと、ヨーロッパにおける研究拠点としてヨーロッパセンター(ボン)を1991年に設立した。センターは本学にとって、外国に設置した最初の研究機関である。また、本学はドイツ国内の多くの大学と学術交流協定を締結し、緊密かつ友好な関係が構築されている。

ここに早稲田大学総長・理事・監事・評議員ならびに全学の教職員は一致して
リヒァルト・フォン・ヴァイツゼッカー 閣下に
名誉博士(Doctor of Laws)の学位を贈ることを決議した。

学問の府に栄えあれ!
大学が栄誉を与えんとする者を讃えよ!
(Vivat universitas scientiarum! Laudate quem universitas honorabit!)

 

2005年10月20日
早稲田大学

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WASEDA University

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