顕彰状 レオ・メラメド氏

レオ・メラメド氏は、1932年ポーランド東部の都市ビャウィストクに生まれた。7歳の時ホロコーストから逃れるため両親とともにリトアニアに移り、当時在リトアニア日本国領事館副領事であった杉原千畝から「命のビザ」を受け取った後、身の危険が迫るなか飢えや寒さなどの苦難を乗り越え、シベリア横断を経てウラジオストク経由で日本の敦賀港に到着した。4か月間の日本滞在の後、1941年米国に渡り、シカゴに移り住む。

1950年イリノイ大学シカゴ校に入学、その後ジョン・マーシャル・ロースクールに進む。アルバイト先であったシカゴマーカンタイル取引所で先物取引と運命的な出会いをする。ロースクール修了後、氏は弁護士を経て、専業の先物トレーダーに転身する。氏は1967年にはシカゴマーカンタイル取引所理事、その2年後には36歳の若さで理事長に就任し、開かれた透明性の高い取引所をめざし組織改革を推し進める。

メラメド氏はその豊かな創造力で、それまで農畜産物の独壇場であった先物市場に通貨先物という革新的な商品を誕生させた。その後も氏は、次々と金融経済において斬新な改革を打ち出し、世界初の金融先物取引所であるIMMの創設、多くの画期的な商品の開発、世界初の電子取引システム「グローベックス」の導入など、その功績は枚挙に暇がない。これらのイノベーションこそ、氏が「金融先物市場の父」と讃えられる由縁である。氏の常に時代の先を見据える力と卓抜したチャレンジ精神、現状に満足せず困難に果敢に立ち向かう気迫、改革を成し遂げるための戦略と粘り強さが、これらの改革を成功に導く原動力となった。氏の長年にわたる功績により、シカゴマーカンタイル取引所は世界最大の先物・オプション取引所に押し上げられ、シカゴは世界に冠たる金融先物市場の中心地へと成長する。氏は35年に亘りシカゴマーカンタイル取引所を率い、現在、同取引所名誉会長および戦略会議運営委員会議長、米国商品先物取引委員会技術顧問等を務める傍ら、中国証券監督管理委員会の国際顧問はじめ各国政府の金融市場に関する特別顧問としても活躍し、金融界の発展への多大な貢献者として、ウィリアム・シャープインデックスアワードなど数々の賞を受賞している。

他方、氏は教育の振興に人一倍の熱意を持ち、つねに教育とりわけ高等教育の重要性を説く。シカゴ大学ベッカー・フリードマン・インスティテュートの監督委員、シカゴを拠点とする教育手法・技術の開発を支援するNPO法人LEAPイノベーション理事など、さまざまな教育・研究推進団体の要職を歴任するなかで、ビジネスリーダー育成に向けての提言を発信し、米国を拠点とする世界最大の国際高等教育推進団体であり、本学も加盟するIIEの研究者救援基金への支援などに尽力している。

また、氏は折に触れ、本学高等師範部に在籍していた杉原千畝の勇気を讃え、人道的行為に敬意を表してきた。2014年には日本のゆかりの地を巡り、6月に本学を来訪して杉原千畝の碑に献花する。学生との懇談の場では「一人の力でも世界を変えることはできる。善のために立ち上がったスギハラを育てたすばらしい大学にいることを幸運に思い、大事な岐路に立った時、正しく自分の判断ができる人になるよう、自分の考えを持ってきちんと歩んでほしい」と熱く語りかけた。世界金融を牽引しつつ、善のために勇気をもって前進し続ける氏の真摯な言葉は学生の胸に深く刻まれたに相違ない。

ホロコーストの惨禍が終結して70周年を迎える本年、勇気をもって信念を貫き人道に生きた杉原と、彼によって助けられグローバル金融界の発展に多大な貢献を続けるメラメド氏の深き縁を思うとき、世界に貢献するグローバルリーダーの育成を目指す本学が、氏をいま名誉博士として迎えることはまことに時宜にかなっているというべきである。

ここに早稲田大学総長、理事、監事、評議員ならびに全学の教職員は一致して

レオ・メラメド氏に

名誉博士(Honorary Doctor of Laws)の学位を贈ることを決議した。

学問の府に栄えあれ!

大学が栄誉を与えんとする者を讃えよ!

Vivat universitas scientiarum! Laudate quem universitas honorabit!

 

2015年4月1日

早稲田大学

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WASEDA University

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