スッポンの仲間 世界最古のアドクス(カメ類)の化石と発表

国際学術院平山廉教授らの研究グループにより、世界最古のアドクス(カメ類)の化石が判明しました。以下は平山先生による研究コラムです。


福岡県で見つかったカメの化石が、アドクスという種類の中でも世界最古のものであり、新種として日本古生物学会の英文雑誌に発表された(今年1月)。アドクス・センゴクエンシスという名前が付けられたが、種名は化石産地の地名(千石峡)にちなんだものである。著者は、薗田哲平さん(福井県立恐竜博物館)を筆頭に、私、岡崎美彦さん(北九州市立自然史博物館)、および安藤寿男さん(茨城大学教授)である。この研究は、薗田さんの学位論文(茨城大学)の内容の一部が学会誌に公表されたものである。ちなみに安藤さんが学位審査の主査、私が副査を努めるという経緯があった。

アドクスというカメであるが、恐竜の生きていた中生代白亜紀から新生代古第三紀まで(約1億年前から4千万年前)の長きにわたってアジア(日本、中国、モンゴル、ウズベキスタン、カザフスタン、タジキスタン、およびグルジア)と北米(カナダ、アメリカ、およびメキシコ)の広大な地域にいたことが知られている。見た目は、現在の日本にいる沼ガメ(イシガメやクサガメなど)のようであったが、分類的にはスッポンの仲間に近いという変わったカメである。カメとしては大型の種類が多く、最大で甲羅の長さだけで70センチ、全長は1メートルを超えていた。私が現在発掘調査中の岩手県久慈市の化石産地(約8千6百万年前)でも、アドクスが最も多く見つかる動物となっている。

今回発表になったアドクスの新種であるが、世界最古(約1億1千万年前)の化石であり、この発見によりアドクスの歴史が1千万年ほど古くなったという意義が大きい。つまり日本(当時はアジア大陸と地続き)を含めた東アジアに彼らのオリジンがあったということである。実は、アドクス以外のカメでもスッポンの仲間のカメが、同じように日本や中国などで世界最古の化石が見つかってきている。どうやらアジアは、カメを始めとする様々な動物が生まれて進化し、そこから世界に拡がっていく重要な地域であったらしい。今回のアドクスであるが、後のより進化した種類に比べるとサイズが小さい(甲羅の長さは推定30センチほど)という特徴がある。動物は進化するほど体が大きくなる傾向があるが、カメの仲間も例外ではなかったということである。他にも細かい話になるが、甲羅を覆っていた鱗の一部に他の種類と識別できる特徴が認められた。

図:今回見つかったアドクスの新種(アドクス・センゴクエンシス)の化石。甲羅の一部がまとまって保存されていた。Sonoda et al.による。

図:今回見つかったアドクスの新種(アドクス・センゴクエンシス)の化石。甲羅の一部がまとまって保存されていた。Sonoda et al.による。

なお今回の化石であるが、非常に硬い岩石に含まれていて化石を取り出すのは困難であったが、この大変な作業をされたのが共著者である岡崎美彦氏である。岡崎氏は、京都大学大学院で私の大先輩でもあった。

薗田さんの博物館がある福井県では、テレビで薗田さんの記者会見が放映されるなど大きなニュースになったと伺っている。恐竜以外の化石にもメディアの関心が向けられるようになったという意味でも今回の発見は意義が大きいと言えるのではないかと思う。薗田さんは私の教え子といって過言ではない研究者であるが、これを契機にますます精進していただくことを切に願う次第である。

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