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地域をつなぐ、演劇の可能性

演劇を志す若者が集まるまち・早稲田

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Wed 08 Apr 26

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どらま館Labo『永遠幼稚園』公演レポート

早稲田小劇場どらま館では、早稲田演劇の卒業生や現役生による共同制作プロジェクト「どらま館Labo」を企画しています。2025年度は、早稲田大学と岐阜県美濃加茂市との共催事業として、『永遠幼稚園』のツアー公演を実施しました。

本記事では、2026年3月6日に早稲田キャンパス「GCC Common Room」で行われた公演とアフターイベントを取材。地域にも開かれた同施設を演劇上演の場として活用するのは、本公演が初めての試みです。“文化×地域貢献”により実現した2025年度事業のレポートをお届けします。

学生と卒業生の演劇文化で、地域の活性化を目指す

早大南門通りに立地し、文化の創成や地域活性化への貢献を担う「早稲田小劇場どらま館」では、演劇を起点としたさまざまな活動に取り組んでいます。その一つ、「どらま館Labo」は、世代や団体を越えた広義の“早稲田演劇”のつながりを創出するプロジェクトです。早稲田演劇の卒業生と現役生による共同制作の演劇を行なっています。

また、地域社会への貢献を強化する早稲田大学は、2007年4月に岐阜県美濃加茂市と文化交流協定を締結。以来、現役学生による演劇公演を同市で行うなど、文化交流を継続してきました。

美濃加茂市は、本学の草創期および演劇・舞台芸術の発展に多大な貢献をした、坪内逍遙の出身地でもあります。演劇を通じた交流は、坪内逍遙の精神を受け継ぐものであるとともに、地域での課外活動は学生の成長の場としても機能してきました。

こうした経緯から企画されたのが、2025年度における早稲田大学と美濃加茂市の共催事業です。2025年12月には、俳優・スタッフの計7名、作・演出の山本健介さん(2006年第二文学部卒業)が美濃加茂市に滞在し、現地での作品上演やワークショップを実施。その後2026年3月5日~8日には、早稲田で凱旋公演を行いました。

上演されたのは、山本さんによる新作戯曲『永遠幼稚園』です。山本さんは「The end of company ジエン社」という劇団を主宰し、第60回岸田國士戯曲賞の最終候補にも選出されるなど、劇作家・演出家として活躍しています。『永遠幼稚園』は、幼稚園を起点にさまざまな空間を行き来するダイナミックな物語。戦争やジェンダーもテーマとなる作品づくりに、学生の俳優とともに挑戦しました。

早稲田での公演で劇空間になったのは、早稲田キャンパス27号館の「GCC Common Room」。2025年にオープンした新施設で、「社会との接点」をコンセプトに設計されています。本公演は、同施設で行う“初めての”演劇公演となり、早稲田のまちと一体化したガラス張りの空間を活かし、作品が施設外からも見えるという、ユニークな公演となりました。

GCC Common Room。「GCC(Global Citizenship Center)」は早稲田大学創立150周年記念事業の中核をなす拠点の一つで、世界人類への貢献を目指す。同所を劇場として活用するのは実験的な試みで、俳優たちが施設の外を走り回るなど、斬新な演出も見どころとなった

GCC Common Room。「GCC(Global Citizenship Center)」は早稲田大学創立150周年記念事業の中核をなす拠点の一つで、世界人類への貢献を目指す。同所を劇場として活用するのは実験的な試みで、俳優たちが施設の外を走り回るなど、斬新な演出も見どころとなった

ゲネプロ(本番と同じ条件で舞台上で行う最終リハーサル)の様子

ゲネプロ(本番と同じ条件で舞台上で行う最終リハーサル)の様子

地域の協力で実現した、美濃加茂と早稲田の演劇交流

3月6日に行われた公演では、アフターイベントを実施。来場者に向け、山本さんが美濃加茂市での活動を報告しました。

山本「美濃加茂市では、異なる場所で2回の公演を行いました。1回目は太田小学校の体育館。お客さまは小学4年生だったのですが、上演中に客席から声が出るという、想定外の事態も発生しました。2回目は『みのかも文化の森 緑のホール』です。120席ほどの小ホールで、限られたスペースで走り回るなど、演技方法を試行錯誤しました。規模と特性が全く異なる二つの空間に対し、綿密に準備し、臨機応変に演じた俳優たちの努力は凄まじかったです」

美濃加茂公演を振り返る山本さん

美濃加茂公演を振り返る山本さん

また加茂農林高校にて、加茂農林高校と加茂高校の生徒を対象にした演劇ワークショップを実施。約40人の生徒が車座になり、身体表現を通じて交流する様子が伝えられました。

現地での活動では、地域の人々の支援を受けたと山本さんは語ります。

山本「市の職員さんに車での移動をお願いしたり、高校の演劇部の先生に照明を担当していただいたりと、さまざまな方の協力なしには実現しない公演でした。また、地域横断のプロジェクトには、橋渡し役も欠かせません。先人たちの努力の積み重ねで、今回の公演があることも実感しました。文化交流は、単発のお祭りで終わらせず、線として受け継いでいくことが大切です。早稲田を卒業した演劇人もたくさんいるので、今後も地域社会における演劇の意義を深めていってほしいと思います」

太田小学校の体育館での上演

太田小学校の体育館での上演

早稲田公演での懇談会の様子。地域の方々も多く訪れた

早稲田公演での懇談会の様子。地域の方々も多く訪れた

オープンな作品づくりが、演劇文化を発展させる

アフターイベント終了後、本作品の俳優でありオーディションで選抜された、山下萌さん(早稲田大学文学部4年)、貞方未来さん(同文学部1年)、世羅田大次郎さん(東京大学教養学部前期課程2年・早稲田大学演劇研究会所属)の3名と山本さんに、活動について語り合ってもらいました。

貞方「美濃加茂市の滞在中は楽しい思い出ばかりでした。最大のハプニングは、小学校公演の最初のセリフで、子どもが声を出したこと。その後もずっと、演技にリアクションされる状態がつづいたのですが、今思えば小学生の前で公演をするという、一つのドラマを経験できたと感じます」

世羅田「最初は子どもの声が大きく戸惑い、公演が中断される可能性も考えたほどでした(笑)。でも、『不測の事態が起こるのも、演劇の醍醐味』と気持ちを切り替え、ワクワクしながら演じました」

山下「私は本番中、足が震えてしまいました。静寂のシーンが多い作品なので、『見どころが伝わらないかも』『子どもたちは演劇を好きになってくれるのか』と不安でいっぱいになり、終演後には思いが溢れて泣き崩れたほどです」

声優志望の貞方さん(左)と、「早稲田大学演劇研究会」に所属する東京大学の世羅田さん(右)

声優志望の貞方さん(左)と、「早稲田大学演劇研究会」に所属する東京大学の世羅田さん(右)

山本「どらま館Laboの活動の中でも、体育館での公演は異例だったと思います。受け継がれてきたレガシーを途切れさせないためにも、俳優たちと早稲田で作品を作り込み、しっかりと美濃加茂市の皆さまにお見せすることに注力しました」

世羅田「滞在中、稽古場に差し入れをいただくなど、地域の皆さまの温かさも感じました。普段活動しているサークルでの演劇活動は、関係者が顔見知りのような小さなコミュニティですが、今回のどらま館Laboは多くの方々と関わりながら、皆で作品をつくっていく感覚がありました」

貞方「早稲田での公演で、地域の皆さまが訪れていたことも発見でした。声優志望の私は、本格的に早稲田で演劇をするのが初めてだったのですが、さまざまな人と関わる中で、演劇文化が根づいた大学であることを実感しました」

山本「私が在学した20年前の早稲田であれば、『大人の介入は受けない』といった空気が強かったのですが、今の学生演劇は世代や団体の壁を超えて、皆が流動的に活動している。早稲田のまちも演劇を志す若者が集まっていて、互いが刺激し合っています。さまざまな関係者が出入りする場で公演ができたことは、私にとっても貴重な経験でした」

山下「文学部の演劇映像コースに所属する私は、『グローバル化における演劇教育』をテーマに卒業論文を執筆しました。海外の人々とコミュニケーションをとる上で、演劇が教育の手段としても機能すると考えています。一方、日本では、一部のファンしか劇場に足を運ばなかったり、学校の授業で触れられなかったりと、演劇文化には障壁も多い印象です。そうした中、今回地域の皆さんと一緒にお芝居をつくれたことは、多くの学びにつながりました。今後も演劇文化がオープンになることを目指しながら、俳優活動に尽力していきたいです」

どらま館Labでの活動は初となった山本さん(左)と、高校生から芸能活動をしている山下さん(右)

どらま館Labでの活動は初となった山本さん(左)と、高校生から芸能活動をしている山下さん(右)

早稲田から広がる、地域と演劇の新たな可能性

今回の『永遠幼稚園』のツアー公演は、美濃加茂と早稲田という二つの地域を演劇を通じて結びつける貴重な取り組みとなりました。学生・卒業生・地域の人々が協働し、一つの作品をつくり上げる経験は、参加者それぞれの成長につながるだけでなく、今後の文化交流の“線”となる大きな一歩でもあります。
山本さんが語ったように、「演劇を志す若者が集まるまち・早稲田」から、これからも新たな交流と創造が生まれていくことでしょう。

※記事内に登場する在学生の学年は取材時(2025年度)のものです。

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