反政府運動などが相次いでいるアラブ地域について、早稲田大学、東京大学、上智大学、京都大学、東洋文庫の5つの拠点からなる「NIHU イスラーム地域研究拠点」は3月2日、東京大学本郷キャンパスで人間文化研究機構(NIHU)プログラム「イスラーム地域研究公開セミナー」を開きました。早稲田大学からはイスラーム地域研究機構の湯川武教授、鈴木恵美准教授が参加し、最新のアラブ情勢に関する報告などを行いました。
チュニジアに触発されて複数の国々でデモが生じたことは、「中東/アラブの民主化」という地域の問題として捉えられるべき共通性、一般性を示しましたが、一つ一つの国の内情や展開は当然異なり、それは個別に考えられなければなりません。今回のセミナーでは、「中東の民主化」に関わる現状と今後を見ようと、「中東の民主化」に関わる一般性と特殊性などについて活発な議論が展開されました。
東大拠点主催となった「第1部『中東の民主化』を考える公開セミナー」では、鈴木准教授がエジプト政変について、「大衆革命と軍によるクーデターという2つの側面がある」などと報告し、政変のプロセスや背景などを分析。「デモ勢力の政党政治への取り込み」や「今後の軍の関与」などを課題や疑問として挙げ、①ムスリム同胞団(※エジプト最大のイスラム団体)は議会で勢力を拡大、②ある程度、議会政治が機能、③政府は世論に影響される、などの3点を今後の展望として伝えました。国際金融情報センター主任エコノミストの福富満久氏はチュニジア・アルジェリア・リビア情勢、松本弘・大東文化大学准教授はイエメン情勢、吉川卓郎・立命館アジア太平洋大学助教はヨルダン情勢を、それぞれ報告しました。
第2部は早稲田大学拠点主催として、パネルディスカッション「地域の激動と地域研究」を開催。湯川教授司会のもと行われたディスカッションでは、「今回の運動は予測できなかった。大きな政治運動は、それなりの組織が行うといった思い込みがあったのではないか」「なぜムスリム人口は増加し続けているのか。家族観を知ることが大事なのではないか」「アルカイダが関係している要素はほとんどない」「中東の民主主義がうまくいかないことの分析には、日本の民主主義はうまくいっているのかといった日本自身の分析も重要だ」など、様々な意見が交わされました。
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以 上