祝辞 仲條 亮子 様
グーグル合同会社 YouTube 日本代表
新入生の皆様、そして、ご家族の皆様、本日はおめでとうございます。
“新たな世界のスタート”となる、この瞬間に同席できることを心から嬉しく思います。
念願の早稲田大学入学に純粋に心踊る方から、多様な選択肢の中から早稲田大学を選び、これから早稲田に入った「その意味」を探り始める皆さんもいらっしゃるかと思います。
いずれにしても、それぞれが、ご本人しか知らない様々な挑戦を乗り越えてここにいます。年初の能登半島地震で被災されながらも、ここにいる方もいらっしゃるかと思います。
そんなみなさん一人一人が挑戦の中、立ち上がって一歩を進んでいらっしゃることを、心から誇らしく思います。
皆さんのこれまでの挑戦と、その上で選択されたこの道が「正しい道」であったと、みなさん自身がこれから証明していくこととなると思います。 早稲田大学が、私に多くのドアを開けるチャンスをくれたように、みなさんが「新たな可能性をつかむための場」が、この早稲田大学にあります。今日は、皆さんの門出に際し、簡単な自己紹介と、2つのメッセージをお伝えしたいと思います。
まずは、私の歩んでいる道を簡単にご紹介いたします。
私は小さい頃から日本と世界の情報やコンテンツを結びつける役割をしたいと思い、これまで放送局、通信社、グーグルという現場を歩んできました。 現在のYouTube の使命は「表現する場所をあらゆる人に提供し、その声を世界中に届けること」。 まさに私が歩みたかった道と幸運にも重なっています。
ここにいらっしゃる皆さんも、YouTubeクリエイターの方々の動画を通じて学んだり、楽しんだりする時間があると思います。 YouTubeという「世界に繋がるステージ」で日々努力をされ活躍されている沢山の素晴らしいクリエイターの方々から、私自身も勇気をもらっています。
また私にとって、YouTubeという現場は、新たなテクノロジーの可能性にも挑戦できる場です。 創造性とテクノロジーが交わる場所だからこそ、例えば昨今話題に上っている生成AIに関して、簡単に人間の創造性に取って代わるものではなく、人間の創造性をサポートするものであるとし、私自身がパッションを持つ「責任あるプラットフォーム作り」にチームとともに取り組むことができます。
いずれにしても、日々学び続けることを求められる現場を歩んできました。 沢山の素晴らしいリーダーやチームから学び、そしてイノベーションのど真ん中にいる私の経験の中から、皆さんにメッセージをお話しします。
なぜ皆さんはこの場にいるのでしょうか。
それは、ここにいる皆さん一人一人がこの世界に貢献するリーダーとなる方々だからです。
沢山の愛情と投資を受けて、ここまで可能性をもって成長された皆さんには、社会に貢献する役割があります。皆さんが作られる未来に向けて、早稲田での学生生活で意識をしながら準備をし始めていただきたい、二つの「力」、可能性を追求する力を持つこと
感謝の気持ちを力にすることについてお伝えしたいと思います。
まずは、1)可能性を追求する力
私は多くのみなさんのように輝かしい学生ではなく、大学や大学院には社会人になってから入り直してきました。 実はこの早稲田大学もそうです。 社会に出た後、私は失敗ばかりで、周囲はみんな優秀にみえました。放送局の報道番組を担当したいと思っていたものの、
担当できなかった理由の一つは、当時、女性はアシスタント的な役割に限定されていたこともあるものの、私の場合、「戦う力を持ち合わせていない」自分に問題があるからではないかと考えました。改めて、自分の再構築をしない限りLeap、飛躍はできないと思ったのです。つまり、学び直すことで、「自信のない」自分を強く、また、いつの間にか癖のついた考え方を整え、自分の可能性を追求しようと思いました。
このプロセスを何度も経ていなければ、その後チャンスの場に立つことはなかったと思います。
今の世界は複雑で、未知の問題や答えのない問題を持ち、変化のスピードは加速してきています。居心地が良いからこのままでいようとか、やりたいことが見つからないから何もしないというのは、自分を劣化させます。
変化の多い世界は、必ずみなさんに沢山のチャンスをもたらしますので、どうぞ学び続け、自分の可能性を信じ、追求し続けてください。
そして、メッセージの2点目、2)感謝を力にすること、です。
ここの場に来るまで、みなさんも、多くの挑戦があったと思います。
私も、まだ道の途中ですが、大きな挫折も失敗もしてきました。前に進めず、辛い時には、家族や仲間が支えてくれました。 そういう時、私の望みは、苦しいときに助けてくれた人たちが、「あの時、信じて応援したことが正解であった」と思ってほしいということです。もう一度可能性を追求し立ち上がり、私が良い仕事をする、つまり、周囲への感謝を力にすることで「感謝を示すこと」と、「自分の成長」につながります。
また、わたしは、「この時代を生きる意味とは何か」と、自分に問うことがあります。
今の世界でも、戦争で家族が亡くなったり、女性が学びや働く機会を絶たれることが起きています。遠い昔のようですが、同じように私の祖父は第二次世界大戦で30歳で亡くなりました。 私の母は、女性が働くのは恥ずかしいと言われた時代で、いくら成績が 良くても働けず、「働きたい」と涙していた姿を今でも思い出します。
時代より早く生まれてしまったり、時代が許さなかったことを、少なくとも今の日本で生きる私たちは形にしていくことができます。
みなさんの人生のミッションは自分だけのものだけではありません。
これからの人生の辛い時には思い出してください。みなさんの後ろには多くの多くの繋げてくれた命と、信じて応援してくれる家族や仲間がいるということを。必ず、背中を押してくれる力を感じることができると思います。
結びとなりますが、本日、ここに集まった2024年度入学のこのチームのみなさんは誰一人として同じ人生を歩んできていないでしょうし、今後も同じ歩みになることはないでしょう。だからこそ、今皆さんの隣りに座っているまだ知らない、これからの仲間と学び合ってください。自分とは違う視点の価値を受け入れる力は、これからのリーダーとしての基礎となります。
本日入学のみなさんには、可能性を追求し、学び続けるリーダーとして前進し、感謝の気持ちを力に、より多様な、よ り良い世界を作って頂きたいと思います。
早稲田という懐の深い、多様性豊かな大学で学び、挑戦をし、この2024年度入学のこのチームがつくっていくであろう「未来」を心から楽しみにしています
ご入学、おめでとうございます。