2020年度卒業設計
2021年現在、福島第一発電所では増え続ける汚染水への対策として、除染と汚染水のタンクへの保管を行なっているが、最終的な汚染水の処理方法が決まらず、保管用の巨大タンクは無秩序に増え続けている。また、発生する瓦礫の対処のため敷地拡張が行われており、大規模な伐採、造成が行われた。さらに事故当初実施された地表面の汚染防止で地面はコンクリートで覆われ、構内に草木は一本もない。全て覆い隠した現状は、私達の大きな傷跡となり、いつしか私達はこの場所にマイナスのイメージや、触れてはいけないというイメージを持つようになった。今回、揚水発電所を建設することで、マイナスイメージをプラスに転換出来るのではないか。処理方法の決まらない汚染水は本発電所でエネルギーを媒介する物質に変換。汚染水が増加と、エネルギー備蓄が同義となる。また、事故により起こった国内原子力発電所の全台停止も、本発電所がバックアップ電源となり、電力バランスが安定する。いつか、福島第一発電所の問題が解決した後の、自然が復興し、私達の傷跡が薄れつつある時代に、本発電所が、この歴史を記録する装置として、その中に汚染水を内包しつつ静かに機能し続けることを夢見ている。
- [敷地]
- 福島県双葉郡大熊町
- [用途]
- 揚水発電所